夢の中で意識が覚醒する。
私の目の前には半裸のリアムとルークが私のベッドの上で跪いて熱っぽい瞳で私を見ていた。
そんなリアムたちを見つめている私自身も半裸で同じく半裸であろう誰かに後ろから抱き締められ、ベッドに座っている。後ろの誰かとはこの状況からしておそらくレオだろう。
大きな窓へ目を向ければ、真っ暗な空に満月が輝いている。
それだけ今が夜だということがわかる。
え、この状況、4人で夜の営みを始めようとしてる?
私は今日、彼らを解放する。
こんなことをしている場合ではない。そう思って声をあげようとした。
「…っ!」
だが、いつもなら感じない燃えるように熱い体の感覚に私は思わず表情を歪め、言葉を詰まらせた。
この熱は何?
「どう?エマ?」
自身の体の異変に訳がわからず混乱しているとリアムが私の唇を指でなぞり、微笑んだ。
「ん…」
ただリアムに触られただけだ。
ただそれだけたのに甘い刺激が私を襲い、思わず艶やかな声を漏らす。
「効いているみたいだね、可愛い」
そんな私の様子を見てルークが嬉しそうに笑った。
ルークの言葉を聞いて嫌な予感が頭をよぎる。
「…ちょっと、これは、いったい」
このおかしな状況を把握する為に、リアムたちに問いかけようとしたが、上手く喋れない。
嫌な予感が確信へと変わり始める。
私はとりあえず何とかこの状況の改善を図る為に私を後ろから抱き締めているレオを振り解こうとした。
「…っ」
だが、それも叶わなかった。
力が入らない。体が燃えるように熱い。
「…この媚薬には俺の魔術の全てを込めた。どんな媚薬よりもよく効くだろう?」
「…は?」
後ろから耳元でレオが言った事実に私は衝撃で固まる。
嘘だ。嘘だと言ってくれ。
私は今レオの全力の魔術が込められた媚薬を飲まされているのか?媚薬だろうとは気づいていたが、まさかレオのものだとは思わなかった。
レオのものならきっと普通のものよりも何倍も効力があるはずだ。
もうこんなことはしない。
早く止めさせないと。
「…れお、げ、どく、して」
「何故?エマが望んだことだろう?」
上手く動かない口でレオに解毒するように何とか伝える。
だがしかし私の耳に届いたのは私の願いを受け入れるものではなく、おかしそうに笑いながら私に問うレオの甘い囁きだった。
そしてレオは私の首筋に唇を落とした。
「…あっ!」
リアムに唇をなぞられた時よりも強い刺激が私を襲い、私は思わず大きな声をあげる。
するとレオは「…気持ちいいだろう?」と小声でまた囁き、私の首筋を今度は舐めた。
吐息さえも今の私には甘い刺激となる。
どんなに我慢しても甘い声が私の唇から漏れ出る。
望んでいないこの状況が怖い。だが体は薬のせいで刺激を求めずにはいられない。
私の心と身体がぐちゃぐちゃになっていく。
その恐怖に気がつけば私は涙を流していた。
「ずるい。レオばかり感じないで?僕も感じて?」
頬を桃色に染めたルークが私に迫る。
「い、いや」
それを何とか私は止めようとしたが思うように体に力が入らない。
抵抗できない私に今度はルークからのキスの雨が降り始めた。
肩、腕、胸元、お腹。ルークの唇が触れる度に私の体は甘い刺激に震え、私から甘い声が漏れ出る。
そしてルークはそんな私を見る度に満足げに笑みを深め、嫌がる素振りを私が見せてもそれを止めようとはしなかった。
「…はぁ、はぁ」
何度も私を襲う甘い刺激に私は疲れ果て肩で息をする。
「…エマ。美しい僕のエマ。今度は僕だよ」
そんな今にも倒れそうな私の姿を見て今度はリアムがうっとりした表情を浮かべ、私に迫ってきた。
「…り、あむ」
リアムなら私が本気でこの状況を嫌がっていることがわかるはずだ。
なので私はもうこんなことは止めるように最後の力を振り絞ってリアムに目で必死に訴える。
「愛しているよ、エマ」
だが私の必死の訴えはリアムには届かず、リアムは私に妖艶に微笑むと私に深いキスを落とした。
ルークとレオならまだわかる。しかしリアムだけはと私は信じていた。リアムは絶対に私が本気で拒んでいることをわかっているはずだ。
望まない快楽が怖い。助けて欲しい。
彼らは私の恋人という名で囚われている者。私には絶対逆らえないはずなのに。
「…め、いれい、よ、やめ、な、さい」
「やめないよ」
リアムとのキスの合間を縫って私は何とか言葉を発した。だが、リアムはにっこりと微笑むとそれをバッサリと切り捨てた。
「今夜は眠らせないから」
リアムが微笑む。
「楽しい夜にしようね、エマ」
ルークが愛らしく笑う。
「絶対に離さない」
レオが甘く囁く。
全員からの熱い視線を感じ、私は身震いした。
私はきっとこの望まない快楽に耐えられない。
これは私の夢だ。
だからどうかお願い。今すぐ私をこの夢から目覚めさせて。