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第43話:お姉ちゃんは誰に似た?

 ・元嫁からの再構築依頼に対する返事→済?

 ・道の駅賃料10倍

 ・裁判所への返事→手紙返送済


 たくさんの問題は紙に箇条書きにすることで管理しやすくなるな。


 元嫁には絶縁とも言うべきなくらいしっかりと連絡してこないよう言った。毎日のようにメッセージは来てるけど、とりあえず無視。


 ブロックしたいけど、そしたら娘達のところに連絡が行くし。現状がベターかな。



 清司の件は裁判所への返事を書いた。後見人が付いたら付いたで挨拶に行くだけだ。判断は裁判所だから今の俺にできることはない。



 そうなると、「道の駅の賃料10倍問題」は本当に頭が痛い。霞取さんの土地だから基本的に霞取さんが料金を決められる。


 道の駅はどんな契約になってるのか……。村長さんに聞きにいくか。


 畑は住居じゃないし、急な値上げはダメみたいな法律はないんじなないかなぁ……。



 あれ以来、村の人達はなんだかよそよそしい。道の駅にもすっかり野菜が入ってこなくなった。


 あるのはコンニャクと村長さんとこからの野菜とうちが作ってる野菜……。うちが作ってるのって基本的にお姉ちゃんが作ってるからなぁ。


 商品がなければお客さんも当然少なくなって来ている。


 良い時期は本当に短かった。1ヶ月もなかったんじゃないだろうか。盛り上がるのも一瞬だったけど、その後の村の人の手のひら返しがすごかった。くるーんって。



 そう言えば、そのお姉ちゃんはどうしてるのか……。俺はうちの畑に行ってみた。


 広い畑は青々と野菜が実っている。そんな中、一人ジャージ姿で畑仕事をしてる子……お姉ちゃんの智子だ。


「お姉ちゃーん!」


 俺は畑に近づいて大きく手を降った。


「あ、お父さーん」


 作業をやめ、額の汗を拭いながら俺の呼びかけに答えてくれた。


 それにしても、お姉ちゃんは電動工具とかも詳しい上に使いこなすし、畑仕事も得意なんだろう?


「どうしたの?」

「あ、いや。ちょっと手が空いたから来てみた」

「そうなんだ」


 当然のように俺も畑に入る。「手伝うよ」なんて言わない。手伝うというよりうちのみんなでやってる畑だ。「手伝う」という発想はない。


 以前も庭で色々作ったなぁ。狭い庭だったけど……。家庭菜園って感じかな。


「早く出荷できる野菜があった方がいいと思って」

「なるほど」


 お姉ちゃんは道の駅に出せる野菜を考えてくれているんだ。心配かけてるなぁ。


「何を植えてるの?」

「はつか大根とか……」


 なるほど。早くできる野菜の代表だ。


「小松菜とか、ほうれん草とか、カブとか、水菜、リーフレタス……」

「多い多い多い!」


 お姉ちゃんは知識の引き出しが多いなぁ。多分、気になったら調べ上げちゃう性格だ。


「先に水分補給しようか。倒れたら本末転倒だ」

「もしかして『倒れる』がかかってる?」

「そんな微妙にかかってないこと言わないから!」


 笑って、麦茶を飲んで小休憩。二人とも何とも言わないのに作業に戻った。


 よく見ると、畑は耕してあり畝が既にできてる。


「お姉ちゃん、一人で頑張りすぎじゃない!? 」

「違うよ。ほら、あれ」


 畑の脇に耕運機が置かれていた。


「村長さんとそのお孫さん三人とで軽トラで運んできてくれて、村長さんが実演とか言って全部耕してくれたの」


 村長さんはやっぱり良い人だなぁ。


「孫三人も種まき手伝ってくれた」


 人気者だな。お姉ちゃん。


「あれ? 村長さんとそのお孫さん達は?」

「ちぃちゃんが、『そう言えば』とか言って、庭のおっきな石を動かしたり、庭の隅に置いてた廃材の処分とかをお願いしてた」


 あー、あれだな。智絵里はお願いだけして動かないパターンだな。あの子はうまく人を使う経営者タイプかもしれないな。


「みんなその後片付けみたいなのに行ったの? お姉ちゃん一人残して」

「あ、一人はあそこに……」


 よく見ると、日向くんだったか。孫三兄弟の真ん中が種植えを手伝ってくれてる。彼にも水分補給しないと!


「日向くーん! ちょい休憩しようーーー!」


 こっちを向いて手を振ってる。あ、こっちに走ってきた。いや、休憩の意味よ……。


「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」


 お姉ちゃんももう一度休憩しないと。


「ごめんごめん、いるって知らなくて。手伝ってくれてありがとうね」

「いえ……」


 日向はいつかよりおとなしめ?


「日向くん……だっけ? ここの土ってどう?」


 お姉ちゃんが休憩がてら話しかけた。


「……こんな田舎の畑だ。土なんて痩せててペっポコだ」


 お姉ちゃんから少し顔を逸らせてつぶやくように言った。どうもお姉ちゃんの顔を真っすぐに見られないらしい。頑張れ青春!


「じゃあ、その土を復活させるためにはどうしたらいい?」

「腐葉土とか牛糞とか鶏糞の堆肥みたいな土壌再生材か、レンゲを植えるか、土壌改良材を撒くか……」


 そこまで聞いて俺とお姉ちゃんは顔を見合わせた。


「「鶏糞あったね!」」


「え、あ、いや……」


 たじろぐ日向くん。俺達は智恵理と村長さんが戻ってきたら村長さんに鶏糞を頼むことにするのだった。まあ、1個分かったことは……お姉ちゃんの工具好きと農作業好きは俺の影響をモロに受けた結果だということ。


 もっと、女の子らしいことをさせてあげられればよかったのに……。俺のバカ。


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