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第3話 そこには猫がいた。

屋上。

真夏だが、風が心地よい。

飛び降り抑止のためか、フェンスが巻かれている。

こっそり持ち込んだサボテンさんと、折り畳み式のパイプ椅子がある以外、打ちっぱなしのコンクリートが丸見えの、殺風景な場所。

だが、自分には、ここがオアシスだった。唯一の避難所。


何もいない、、、。ん?

猫?どうやって入ってきた?

鮮やかな、シルバーホワイトの、毛づやのいい猫が、毛繕いして、待っていた。

近づくと。慣れた猫なのか、逃げない。

そのまま抱き抱え、あやすように遊ぼうと。

すると、威厳ある声が響いてきた。

「おい、、、。」

「えっ?」

「お前、、、。」

「猫がしゃべった?」

「我の名は、ポチと言う。」

「ポチ?あっ、お前が?」

「そうだ、よく来たな」

何がどうなっている?幻覚幻聴妄想の類いか?

ついにお迎えか?ついに終わりか?

猫?は悟ったように告げた。

「ふむ。まあいい。お前のような者を探していた。この世に未練はあるか?」

お互いに値踏みするようなにらみを利かせ。

「そうか。あるんだったな。

やり残したことだらけだもんな。

我と契約書を交わそう。

悪い話ではない」

1枚の紙とペンを差しだし、サインするよう促してきた。

悩む余地などなかった。

うんざりだった。

ペンを走らせた。

「これで契約書は成立した」

そう言って、猫?は勢いで屋上から飛び降りると、跡形もなく消え失せた。

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