おゆきが暗黒魍魎の軍勢を一掃した後、王国は一時的な安堵を取り戻した。しかし、戦いの後の喧騒が収まる暇もなく、暗黒魍魎のボス、酒呑童子の襲来が予告されていた。王国の将軍たちは再び緊急会議を開き、今後の対策を話し合っていた。
「我々の手に負えない相手に対抗するためには、再度おゆき様の力を借りる必要があります」と将軍の一人が言った。
「しかし、彼女の性格を考えると…どうやって動いてもらうかが問題です」と別の将軍が頭を抱える。
王は思案の末、ある提案をした。「彼女には、戦いの報酬として特別な料理とお酒を用意し、魅力的な条件を提示するのが良いでしょう。あの方の好きな食べ物で釣るのが一番効果的です」
こうして王国は、戦いの準備を進めながら、おゆきを呼び寄せる準備を始めた。王の側近が部屋に行き、おゆきを起こす。
「おゆき様、暗黒魍魎のボス・酒呑童子が襲来します。再びお力を貸していただけませんか?」
おゆきはまったく気のない様子で目をこすり、布団から顔を出す。「また戦うの?面倒だなぁ…」
王の側近が必死に提案する。「しかし、もしご協力いただければ、特別な料理とお酒を用意いたします。これまで以上に豪華なおもてなしを約束します!」
その言葉に、おゆきの目がわずかに輝く。「特別な料理とお酒?どんなのがあるの?」
「はい、王国の名物料理を揃え、さらに上質なワインもご用意いたします。もちろん、3食昼寝付きです!」
おゆきはその条件に心を動かされたようで、「ふーん、それならちょっとだけ考えてあげる」と言い、ようやく立ち上がる気配を見せる。
「じゃあ、さっさと終わらせてご飯にしましょうか」と彼女は言い残し、王国の兵士たちと共に戦場へと向かった。
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王国の前線に到着したおゆきは、そこに待機している兵士たちを見渡し、ふと首を傾げた。「みんな、緊張しすぎじゃない?そんなに心配することないでしょ。私がいるんだから」
兵士たちは一斉に彼女の言葉に感謝し、勇気をもらったように頷く。しかし、同時に彼女の怠惰さと無関心さに心の中で不安を抱いていた。
「勇者様、どうか酒呑童子には十分な警戒を…」一人の兵士が言うと、おゆきは面倒くさそうに手を振った。「はいはい、わかったから、もう黙っててよ」
その瞬間、背後から重々しい足音が近づいてくる。おゆきの目が冷たく光り、振り向くと、そこには酒呑童子が現れた。彼は黒い鎧をまとい、周囲を威圧するようなオーラを放っていた。
「お前が噂の勇者か、雪女。面白い戦いになりそうだな」と酒呑童子が挑発する。
おゆきは冷たい視線を向け、「ああ、面倒くさいことはしたくないけど、戦うのは仕方ないみたいね」と無関心に返した。
「何を言っている!我が軍に立ち向かう気か!?」酒呑童子が叫ぶと、その言葉に周囲の兵士たちが緊張し、武器を構える。
おゆきは再び手をかざし、冷気が彼女の周囲を包み込む。そこに漂う氷の香りが、一瞬で周囲の空気を凍りつかせた。兵士たちが驚愕する中、彼女は冷静な声で宣言する。
「さあ、さっさと終わらせちゃいましょう」
瞬時に放たれた絶対零度の冷気は、酒呑童子の軍勢を一瞬で凍りつかせ、周囲は静まり返った。冷たい風が吹き抜け、戦場に立っていた敵は一斉に氷の彫像と化した。
「これで終わり?あっけないわね」と、おゆきは周囲を見渡し、まるで日常の出来事を済ませたかのような冷静さで呟く。
酒呑童子は、凍りついたままの姿で圧倒的な力に唖然とし、言葉を失う。周囲の兵士たちも、その光景に息を呑む。
「もう、こんなに簡単に片付いちゃうなんて…」と呟く兵士もいれば、「さすが、おゆき様!」と感激する者もいた。
おゆきは何事もなかったかのように背を向け、テーブルに戻る。「これで終わったなら、次はご飯の時間ね」
しかし、そんな軽やかな声の裏では、彼女が持つ力の大きさが誰も理解しきれずにいた。おゆきは自らの力がどれほどのものか、そしてそれを使うことで世界をどう変えてしまうのか、全く意識していなかったのだ。