酒呑童子との戦いが終わり、王国は完全な平和を取り戻した。城内にはおゆきの功績を称えるための盛大な祝賀会の準備が進んでおり、兵士や民衆たちは「勇者おゆき様」を一目見ようと集まってきていた。
しかし、肝心のおゆき本人は、王宮の一室でくつろいでいた。彼女はテーブルに並べられた美味しい料理と上質なワインを眺めながら、うっとりとした表情を浮かべている。戦いの報酬として約束された食事とお酒に、彼女は満足げに微笑んでいた。
「うーん、やっぱりご飯とお酒は最高ね」とおゆきは独り言を言いながら、楽しそうにワインを口に含んだ。
王は彼女に礼を述べるために部屋に入り、「おゆき様、本当にありがとうございました。おかげで王国は救われ、暗黒魍魎の脅威も完全に払拭されました。これも全ておゆき様のお力のおかげです」と深々と頭を下げた。
しかし、おゆきは軽く肩をすくめて「ふーん、そうなんだ」と気のない返事をするだけだった。彼女にとっては、戦いも王国の危機もただの面倒事に過ぎなかったのだ。
「それより、次のご飯とお酒はいつ出るの?」と、おゆきは期待を込めて尋ねた。
王は驚きつつも、「もちろん、さらに美味しい料理を用意いたします。ですが…」と、言い淀んだ。
「ですが、何?」おゆきは少し眉をひそめて問いかける。
「実は、王国の人々は皆、おゆき様の勇者としての活躍をもっと知りたいと願っております。戦いだけでなく、王国を見回り、民衆の声に耳を傾けていただければ…」
王の言葉に、おゆきはまたしても不機嫌そうにため息をついた。「えー、それってまた面倒くさいじゃない…私、もう王国救ったし、特にやることないよね?」
王は困惑しながらも続ける。「しかし、皆がおゆき様に感謝しているのです。民衆に勇気を与えるためにも、どうか顔を見せていただけないでしょうか」
おゆきはしぶしぶ考え込んだが、ふと条件を思いついた。「わかったわ。でも、3食昼寝付きの待遇と、いつでも美味しいご飯とお酒が出るなら考えてあげる」
王はその条件に安堵し、すぐに受け入れる。「もちろんです、おゆき様。それだけの報酬を用意いたしますので、どうかご協力を…!」
こうして、おゆきは王国の「見回り」に出ることとなった。王は民衆が集まる広場に彼女を案内し、おゆきの姿が見えるや否や、周囲から感謝の言葉が飛び交った。
「おゆき様、ありがとうございます!」「暗黒魍魎を倒してくれて、本当に感謝しています!」
人々の熱烈な歓迎を受けながらも、おゆきはどこか興味なさげに流し見ているだけだった。そんな中、ふと一人の少年が前に進み出て、大きな声で叫んだ。
「勇者様!おゆき様はどうして強いんですか?僕もいつか、あなたみたいに強くなりたいんです!」
その言葉に、周囲が静まり返り、注目が集まった。おゆきは一瞬だけ少年を見つめたが、すぐに気の抜けた声で答えた。
「強くなりたい?うーん、別に特別なことしてないし、戦いは面倒くさいから…やる必要ないなら、しなくていいんじゃない?」
少年は少し戸惑った表情を見せたが、おゆきの言葉に感動したように頷いた。「僕も、戦わなくていい世界を作るために頑張ります!」
その答えに周囲が笑顔になり、おゆきも小さく肩をすくめた。「まあ、好きにすればいいんじゃない?」
その後も、おゆきは広場をふらりと歩き回り、民衆の声に適当に応えながらも、内心では「ご飯まだかな?」と考えていた。
やがて、見回りが終わると王が再びお礼を述べに来た。「おゆき様、見回りをしていただき本当にありがとうございました。民衆も大変感激しておりました」
おゆきは軽く頭を振り、「別にどうでもいいけどね。じゃあ、次は夕飯の時間でしょ?」と、次の食事にしか興味がない様子で応じた。
その後、王は彼女に最上級の料理を提供し、おゆきは美味しそうに食事を楽しんだ。王国の民衆は彼女の姿に励まされつつも、「やる気がない方がこの国にとっては平和かも」と内心で思いながら、彼女の存在を称え続けた。
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第四章まとめ
酒呑童子との戦いを終えたおゆきが、王国の民衆からの感謝とさらなる期待を受け、彼女の「見回り」が提案される。
おゆきは面倒くさがりながらも、3食昼寝付きの待遇と報酬に釣られて王国を見回り、民衆と交流することを決意。
民衆の感謝の声を受け流しつつ、無関心ながらも彼らを励ますような形となる。
見回りが終わった後、再び美味しい料理に満足し、民衆の前ではなく料理の前で笑顔を見せるおゆき。
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