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第7話 脱走

 その学校は山奥のどこまでも続く山道の先にある小高い丘の上にあった。廃校になった小学校の校舎を改装したものだった。全寮制の学校というよりは合宿所というほうが適切だろう。生徒30人弱と数人の教員が集団で寝起きする。週に一度、カウンセリングが行われ、監視と指導のレベルを判定される。GPSの監視装置を足首につけているので逃げてもすぐ居場所がわかるうえに、見た目におとなしい勝則はすぐに監視対象外の生徒になった。


 入学から一月が経った。夕食後の自由時間に勝則は誰もいなくなった厨房に忍び込み、棚の中からアルミホイルを探し出した。屈んでズボンを裾からまくり上げ、くるぶしの少し上あたりに露出した監視装置の上からアルミホイルを幾重にも巻き付けた。これで発信機の電磁波を遮蔽できる。


 勝則は厨房の奥に進み、壁に埋め込まれたキャビネット型の配電盤の前に立った。ズボンのポケットから、この一か月間に集めたクリップや針金などの様々な金属線の束を取り出した。手のひらの上で何本かの金属線を選び取って鍵穴に挿した。慎重に線を操作するうちに、ほどなく鍵が回った。配電盤の扉を開け、一番上の段にある主電源をすばやく落とした。


 校舎内は真っ暗になった。街灯一つない山奥なので、月明かり以外の光はない。停電で起こった騒ぎの間に、勝則はすばやく施設の裏庭から柵を超えて暗闇に消えた。



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