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8.実家から出てきた呪いの人形。 ~その3~ 呪いの人形の原因と対処。

 私と妻が呪われた人形の話を終えて、実家に戻ると、弟は黙々と片付けを進めていました。


 この件に関して、私や妻、弟も含めて、表向きは驚くほど恐怖心が薄いようで、それが何とも言えぬ奇妙な感じを漂わせています。


 妻は呪いの人形を覗き込むようにして見ていましたが、率直な感想を漏らしました。


「うーん、わたしは、この手のコトはよく分からないけど、ここにいると寒気がするわ。」


 幽霊の類が何も見えない妻が、そんなことを口にするぐらいですから、この人形の霊障が酷いことは、火を見るよりも明らかです。


 私は、引き続き片付けをしながら、『人形が強い瘴気をまとった原因』をひたすら考えることに徹します。


 私は子供の時分から、4年前に亡くなった父や、今は介護施設にいる母、弟と共に実家に住んでいました。


 高校を卒業し、学生になって上京をした際に寮生活をするために、一時期は実家を離れましたが、卒業後は父の仕事を手伝うために、帰郷して再び実家に戻ったのです。


 その後、大好きすぎる妻と結婚するまで実家にいたのですが、それまでは、階段下収納に違和感を感じたことなんて、全くありません。


 階段下収納に40年近く入っていた人形が、数年前まで、嫌な感じがしなかった事を考えると、最初から人形に瘴気が帯びていたとは考えにくいかと思います。


 しかしながら、その具体的な原因とプロセスを問われると、私はよく分かりません。


 母が半年前、敗血症性ショックで倒れるまで、頻繁に実家に出入りをしていましたが、階段下収納に関しては、ノーマークだった事態を考えると、私の見える力なんて、赤子同然でかつ相当に弱いのです。


 以前にも書いた通り、私は『普通の人より見えやすい』だけですから、霊と意図的に会話をしたり、幽霊などを意識して見ることは無理に等しいですし、人形の念を通じて呪われた理由を聞き出すなんて、到底、無理な芸当でして…。


 考えられる原因として、40年近くズッと階段下収納にて放置されている間に、悪霊が人形に入り込んでしまった可能性が濃厚でしょう。


 悪霊が人形に入った状態で、悪霊に餌を与え続けるような出来事が続いた事態が立て続けにありましたから、それが大きな引き金になったかも知れません。


 具体的な例を挙げれば、5年前に父が末期の肺癌になって、2年半の闘病生活の末に亡くなった事が考えられます。


 さらに、ウチの経営している会社に目を向けると、コロナ渦に始まって、自動車メーカの不正問題や、ウクライナ戦争などで電子部品不足に陥って減産が相次いで、私たち町工場は苦境に立たされて、今でも地獄の苦しみを現在進行形で味わい続けていますし…。


 そのような不運が、悪霊の成長を促した可能性があると推測しています。


 そして、もう1つ、人形に憑いた悪霊を増幅させた要因として、次のお話で書こうとしている案件にて複数の大きなパワーストーンが30年近くも放置されたコトも、この霊障を起こす触媒になった可能性がありまして…。


 パワーストーンの放置は、かなり危険な側面がありまして、鉱石コレクターが河原などで綺麗な石を拾った途端に霊障を経験する…、なんて事例もあったりするらしいのです。


 実家にあったパワーストーンは30年も浄化もしてない上に、パワーストーンとしての質が悪い石を放置したので、その手の人から見れば正気の沙汰か?、なんて、言われかねない程度に論外な状態でした。


 悪霊の類が入り込んだ人形が『家や会社に漂っている強烈な負の念』を吸い上げ続けて、とても大きく成長したのでしょう。


 さらに、母が倒れたコトによって、瘴気が余計に増大して加速したのが原因だと予測をしています。


 この人形は40年近くも階段下収納に置きっぱなしですから、部屋に飾られている人形よりもタチが悪くなって、最後は洒落にならない霊障が起きたのでしょう。


 これに関しては、力のある霊能力者にお願いをすれば、具体的な原因が明らかになると思いますが、相当な出費を覚悟した上に、呪われた人形や、その余波を含めてロクに祓われない事態も考慮に入れなければいけません。


 今の家の経済状況としては、会社の経営状態が悪い上に、母が敗血症性ショックで倒れた直後から、病院の入院費や治療費、それに介護などの費用などが家計を圧迫して、こちらも火の車ですから、こういう事にお金を使うのは『平時であっても』避けたい気持ちが大きいでのす。


 さらに、私が胸腺腫で手術をした影響で、その手術や入院費用などの出費がとても痛い状態ですから泣きっ面に蜂状態になっているのが、家計にとって痛すぎまして…。


 要するに、できる限りお金を使わずに、悪いモノを祓える方法を探すのが、家族全員の共通認識だったりします。


 霊媒師に頼んで、この人形の霊障の詳細を分析する余裕なんてありませんし、素人の私たちでは、考えるだけ無駄ですから、早々に人形供養することを決断をしました。


 ただ、この後、色々と波乱があったのは言うまでもありません…。

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