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9.実家から出てきた呪いの人形。 ~その4~ いざ人形供養へ。

 私と弟が階段下収納の片付けを全て終えるまでの間、妻は人形供養をして頂ける寺社をネットで調べていました。


 あの人形の段ボールを弟が持った時に、妻は私の家で洗濯物を干していて、お経が聞こえたことから、お寺を中心にして探しているようです。


 人形供養をお願いする寺社に関しては、距離や時間的な問題もありますから、次善の策として、お寺に限らず神社での人形供養も考慮に入れておく必要もあるので、なかなか難航しているようでして…。


 妻も含めて、とんでもない霊障を実体験したからには『当事者と同じ』ですから、内心の恐怖が相まって、人形供養ができる寺社を必死に調べているのを肌で感じ取れました。


 私と弟は、暫くして階段下収納の片付けを終えると、最後に収納の扉の前に神社のお清めの塩を撒いて掃き清めます。


 階段下収納の片付けを終えた頃、人形供養ができる寺社の候補が幾つか上がりましたが、結果的には比較的に大きなお寺で人形供養をすることに決めました。


 人形供養の費用も含めて、とても良心的なのですが、車で片道1時間30分ぐらいの道のりですし、ウチからだと高速道路も使えずに一般道での道のりしかなく、少しばかり時間が掛かりますが、やむを得ないでしょう。


 片付けをしている間、私や弟は肩が急に痛くなったり頭痛がしたりして、問題の人形の瘴気が相当に強いことが感じられましたから、一刻の猶予もありません。


 まして、翌日まで人形を保管した場合、夜になれば、どんな怪奇現象が起こるか分からないし、ソレを考えると恐ろしすぎて、翌日まで人形を置いておくなんて、到底、無理な相談です。


 そして、弟や妻と詳細な打ち合わせをした結果、私と妻だけで人形供養のお寺へ向かうことにしました。


 私と妻だけで人形供養に向かった1つ目の理由は、ここで子供たちを一緒に連れて行けば、子供に霊障が起きる可能性を懸念したのです。


 このような大きな霊障に出くわした場合、人形に取り憑いている悪霊の大半は、人形供養にて祓われますが、その余波が大きく出るケースが多くありまして…。


 それに、人形の霊障が人形供養によって小さくなったとしても、残った悪霊が私たちに取り憑いたり、実家や私の家に何らかの余波を残す可能性を考慮に入れたのです。


 2つ目の理由として、弟は片付けが終わった後に、納期が迫っている仕事が控えていることから、弟が残りざるを得なかったからでした。


 そして、3つ目の理由として、お寺に向かう道中、不測の事態が起こった場合に、1人で行くのは危険だと判断したからです。


 こういう禍々しい人形を運んでいると、色々と良からぬ事を考えたりして、集中力が切れて交通事故を起こしかねません。


 そういう理由から、私と妻の2人で行く事によって、運転中に注意散漫になった状況を互いにフォローができる態勢を整えました。


 ◇


 私と妻は、段ボールに入った人形を車のトランクに入れて、人形供養を専門にやっているお寺に向かいます。


 人形をトランクに入れる際に、私と弟は、今まで階段下収納に放置したことをお詫びしたことは言うまでもありません。


 しばらくして、人形を積んで車を運転していると、肩が痛くなったり、時には首を締め付けられるような感覚がありました。


 同時に、妻も霊障によって頭痛がしたようで、内心は少し怖がっている様子ですし、私はさらに手術後の傷口が急に痛くなったりして、人形の霊障は容赦がありません。


『これは、人形に入っている悪霊は供養されるのが嫌で、抵抗している感じかな?。お寺で人形を供養しても、後から余波があるのは確実だろう…。』


 そんなことを考えながら、私と妻は、昼ご飯を抜きにして、お寺までの道中を急ぎます。


-その1時間半後-


 お寺の駐車場に着くと、肩の痛みや首の締め付けなどの霊障が、スッと消えていくのを感じました。


 それは妻も同じだったようで、ホッとした表情をしています。


 かなり広い駐車場に不動明王の石像があることから、これぞ、典型的な真言宗のお寺という感じが漂っていました。


 人形供養をする場合の専門の駐車スペースが設けられているし、その端に人形を運ぶための台車まで用意されていますから、このお寺が人形供養に力を入れているのがよく分かります。


 私と妻は、受付所まで、広いお寺の境内を台車を押しながら歩いていると、僧侶とすれ違いました。


 僧侶は私たちの姿を認めた直後、人形が入っている段ボール箱を見つめると、ゆっくりと合掌一礼をしたので、私たち夫婦も合掌一礼をすると、僧侶はお堂へと向かって歩いていきました。


「あのお坊さん、人形が入った箱をジッと見ていたから、何か憑いているのが分かったんじゃないの?」


 妻から、そんな質問をされて、私はどう答えて良いのか迷った挙げ句、無難な返答をすることにしました。


「まぁ、そうかも知れないなぁ。俺たちは呪われた人形が供養されることを願うしかないからさ…。」


 ここで余計なこと言っても、あくまでも推測の範囲を出ませんし、僧侶がその悪霊を感じ取ったとしても、人形に憑いている悪霊を供養するのが仕事ですからね…。


 そんな会話をしながら境内を歩いていると、受付が見えたので、受付の女性に声をかけると、人形供養の申込書を渡されて、私はそれを書いていきます。


 もう少し祈祷料を出せば、供養も念入りにするらしいですが、ここは、経済的な理由もあって、


 受付が終わると、人形供養のお堂にある千手観音に蝋燭と線香を供えて、手を合わせるように受付の人に案内されます。


『このような事案に関して、仏様なら観音様が万能ってことか…。』


 私と妻は、千手観音に人形の供養ができるように手を合わせると、本堂に向かって本尊の不動明王にも手を合わせ参拝を終えて、コンビニでご飯を食べつつ急いで帰ったのでした…。


『あの人形の霊障の余波が大きそうで怖いなぁ』


 私の『嫌な予感』がお約束の如く的中したのは、言うまでもありませんでした…。

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