呪われた人形のお話を読んだ皆様は、ご理解を頂けていると思いますが、念の為に、私の実家の背景を改めて書きますと…。
これを執筆している段階で、4年前まで私の実家は父母と独身の弟が住んでいまして、結婚当初、実家は二世帯住ではなかったので、私は実家の近所に家を構えて妻と2人の子供と一緒に暮らしています。
父は4年前に末期の肺癌で他界し、母は半年前に敗血症性ショックで倒れて、下半身が動かなくなって要介護5ですから、母の余生の大半は介護施設にて暮らすことになるかと思われまして…。
母は、家事全般に関して口うるさい人でして、私の妻はともかく、私や弟が、家事のやり方を少しでも変えたりすると、言葉を少し強めて機嫌を悪くするような人でした。
それに加えて、私とは違って、母や弟は『モノをあまり捨てられない人』なので、実家の片付けに関しては弟に任せられず、私の監視下で弟を指示しながら片付けないと、物が片付かない訳でして…。
それで、母が敗血症性ショックで倒れてしまって、病院や施設にいる以上、滅多に家に帰られない事ができないことから、実家の片付けをすることを弟と決意したわけです。
さて、本題に入りますと…。
母の病状が少し持ち直して、病院から介護施設の入所に向けて動いていた、春先から初夏にかけての事件だと記憶しています。
この時点で、呪いの人形が見つかっていませんし、この時期はリハビリ入院中の母の事で、家族全員が奔走していた時期でした。
亡くなった父から跡を継いだ町工場の経営は、春までは仕事が皆無の状態でしたが、仕事が出てきて忙しくなりかけた頃、妻のマインドが少しだけ崩れ始めます。
病院に行くほどではありませんが、私に苛ついたり、気乗りしなかったりするし、どこか、態度がおかしい感じがします。
『参ったなぁ…。会社も苦しいし、子供の事がある上に、母の件でも追われているから、もう、精神的に限界がきてるのだろう。』
この頃、私の対人運に関して、かなり悪いことが多く続いていて、弟や従業員、お客さんと話をしていても、会話が噛み合わないケースが目立ちました。
私のマインドも当然、落ちている部分がありますから、周りを不安にさせる言葉を発してしまう事もあって、私の対人運の運気がゼロなのは明らかだったのです。
それと、私には、ほんの少しだけ霊感があるのですが、母が倒れる前からズッと、何かに憑かれている気配と感覚が取れずに困っていました。
何か悪いモノに憑かれている時の私の感覚としては、体が急に重くなったり、やる気を失う事があったり、神棚や仏壇にお参りをしていても、集中ができずに、潜在意識的に邪魔が入るような感覚に襲われたり…。
お寺や神社に頻繁に訪れて、時には祈祷をして頂いても、あまり改善したとは言えず、奇妙な違和感が私の身体を包んでいるような気がしていたのです。
この時分では、その原因に呪いの人形も加わるなんて想像していないですし…。
妻が、今まで以上に不機嫌なのも気に掛かりますし、私の中で奇妙な違和感や嫌な予感がズッと頭の中にあったのですが、それに加えて、実家にある1つの部屋が気になっていました。
-それは、実家の応接間です。
この応接間は、創業当時、工場に事務所がなかったので、工場に隣合わせで建っていた実家が会社事務所の役割を果たしていました。
しかし、私が学校を卒業して寮から実家に戻って父の仕事を手伝うようになり。しばらくしてから、工場の敷地に事務所を建てたのです。
実家の応接間は、事務所ができたのと同時に、その役割を終えて、徐々に家の物置となった経緯がありまして…。
敗血症性ショックになった母は、命を取り留めたとは言え、もう歩けないですし、要介護5での在宅介護は困難を極めます。
母が、このままズッと帰ってこられないのは確実ですから、仕事の手が空いた休日に、弟と一緒に、半分、物置となって雑然としている応接間を一気に片付けてしまおうと決意したのでした。
母や弟は基本的に、物が捨てられない性格ですから、応接間には頂いた食器のセットが幾つもあったり、洋服などを含めて、捨てるべき古いものが無造作に置かれています。
中には父が亡くなった際に処分をし忘れた服や下着なども出てくる始末…。
このあたりは自営業の強みがありまして、この手の不要品の処分に関しては、工場で出たゴミを処理をしてくれる業者に頼めば、引き取ってくれるし安心です。
私が不要品や亡くなった父の洋服などを片っ端からゴミ袋に入れていた時に、禍々しいものが目に留まりました。
『この部屋の嫌な感じの原因は、これか…!!。』
ガラステーブルの下の棚に7cm×15cm、厚みが4cm程度の紫水晶(アメジスト)の結晶が集まったクラスターが2つ。
それに、紫水晶の小粒の石が大量にあるし、青い色をした宝石に、水晶のクラスターが雑じっているような原石を磨いたような感じで、直径で15cm厚みが4cm程度あるデュモルチェライト入り水晶の塊が1つ…。
それらを凝視しようとすると、背筋が寒くなるばかりか、何やら白くモヤがかかったように、何らかの『嫌な気配』を感じるのです。
『これは、えらいことになったぞ…』
こんなにゾッとするぐらい怖い『モノ』を見たのは生まれて初めてだし、霊感がゼロに等しい私でも感じたぐらい、禍々しいものでした。
霊感が強い人なら怖くて、その場から逃げたか、すぐに何らかの対処を試みたかも知れません。
私は、そのパワーストーンを見た瞬間に、そばにいた弟と、心配になって様子を見に来た妻に声をかけたのでした…。