30年間も放置したパワーストーンの経緯を説明したところで、本題に戻りましょう。
私がその石を持った瞬間に禍々しさが込み上げてくるのと同時に、自然と手が震えていたので、パワーストーンから放っている瘴気が『とても酷い』としか言いようがありません。
『これは特級呪物だぞ…。』
30年間も放置されて浄化もしなかったのですから、この家や工場の悪い運気を全て吸った挙げ句、とんでもない瘴気を放っているのが容易に想像できるでしょう。
ここにきて、目に見えるような霊障が起きるまでになった原因は明らかです。
末期肺癌になった父の死や、自営の町工場の業績悪化による経営難、それに息子が学校に行けなくなるほどの病気になった上に、最近になって母が倒れて要介護5になって家に帰れない状況になったから、問題のパワーストーンが負の念を吸い続けたからでして…。
そもそも、ウチに勤めていた日系ブラジル人に頂いた時点で、このパワーストーンの素地が良くなかった可能性が高かったことも原因もあります。
人からモノを頂く際に、その人の『念』が頂いたモノに入り込んで籠もる場合があって、このブラジル人が帰国した後に、亡くなった父とブラジル人は仲違いをしました。
ある日、帰国したブラジル人から電話がかかってきて、日本の工具や機器をウチからブラジルに送って欲しいと父にせがみましたが、父はその願いをキッパリと断ったことが主因でして…。
知り合いのツテで聞いた話によると、このブラジル人は帰国後に独立してウチと同じような金属加工の会社を立ち上げますが、経営が上手くいかずに数年後に倒産したとも聞いています。
そういう頂いた人から発せられた負の念が、パワーストーンがバケモノとなる要因になった一因もあるでしょう。
私たちに最初から知識があって、定期的にパワーストーンを浄化していれば、いわゆる『特級呪物化』するなんてコトはあり得なかったと思いますが、30年も放置している状況では、手も足も出ません。
しかし…『ダメ元でやるコトはやってみよう』の精神で、私と妻は、とりあえずセージの煙で炙ってみよう』でした。
妻は、パワーストーンの知識があるお陰で、セージを持っていたので、その煙で水晶の浄化を試みます。
セージの煙を使ってパワーストーンの浄化をしていると、石の禍々しい感じが少しだけ取れた感覚がありました。
そこで、私が石に触れて、目を閉じて意識を集中させながら、石に強い霊障がないかチェックをしましたが、完全にダメでした。
上手く説明ができませんが、セージの煙をパワーストーンにくぐらせても、石の表層だけが浄化されたような感覚です。
私がパワーストーンの中にある念を探ると、全身から身震いがしたと同時に涙が出るほどの恐怖を感じてしまいました。
もう、恐ろしすぎて、石の念をジックリと感じる余裕なんて全くありませんし、私のまぶたには、赤くて、おどろおどろしいものが渦巻いているイメージが浮んでいるのです。
霊感が皆無な妻でさえ『この石があると、周りがドンヨリする』と、言うほどですから、相当に禍々しいのは明らかでして…。
これで、これらの石を処分をする方向性に傾いていますが、適切な処理方法がないかを必死に模索をしていました。
それに、このパワーストーンを捨てるにしても、適切な浄化や供養をしないと、悪い思念が残ったままになる可能性が高そうだから、嫌な予感しかしません。
ネットで色々と調べてみて、パワーストーンに関して、浄化や供養の方法が幾つか出てきました。
1.『土に返す』方法。
どうやら浄化できそうな良い方角を見つけて、自分の土地に穴を掘ってパワーストーンを埋める対処法がありますが、これだけ禍々しいと悪影響のほうが強くて、更なる霊障が出てくる可能性があって実行するのを止めました。
2.『パワーストーンを供養する寺社に持ち込む』
浄化が上手くいけば、そのまま持っておきますが、ダメなら何処かの寺社に持ち込んで、処分するしか手がないと考えました。
ベストなですが、この石が発見された時点で夕刻なので、寺社に持ち込む時間がありません。
3.『塩に埋める』方法。
次善の策として、一晩だけ石を塩に埋めて、悪いモノを浄化することを試してみました。
もしも、悪いモノが出て、なんらかの障害が出ても、被害が最小限度に留まると考えたのです。
繰り返しますが、この石が発見された時点で、夕刻だったので、寺社に持ち込んで供養や祈祷をする時間もありません。
何にしても、塩に埋めておいて、一晩、放置しなければならぬ状況に陥っていたのです…。
結局、結論としては『パワーストーンが供養できる寺社に持ち込むために、一晩、塩に埋めて対処をしましょう』という、無難な路線になりました。
あの禍々しいパワーストーンを、私の家で一晩、放置するために、私と妻はすぐに動きました。
石を単に塩に埋めることはせずに、念には念を入れることにします。
まずは、塩を2kg買ってきて、神棚に供えました。
幸いにも自営で町工場をしているし、特定の宗教を崇めているわけではありませんが、神仏を大切にしていた亡父のお陰で、子供の頃から家に神棚がズッとあるのが幸いしました。
その神棚に蝋燭に火を付けて『今からこのお塩で清めます。お力を下さい』と、神棚の神様にお願いをしてみます。
そこに、全部のパワーストーンが入る大きさの箱を用意して、石が見えなくなるぐらいに塩を敷き詰めました。
そして、念のために、神棚のそばにパワーストーンが入った箱を置いたのですが…。
もしも最悪の事態を招いても、神棚にいらっしゃる神様が何とかしてくれる…と、楽観視をしていたのです。
当然の如く、私のツメが甘かったのは、言うまでもなく…。
◇
…その晩のこと…。
夜明け前に目が覚めると、目前に黒い影が幾つか天井を飛び交っているのが見えました。
これは、何らかの病気ではなく、私の霊感が人よりも少しばかり強いから偶然に見えるものだと、すぐに感じ取れましたし、何やらアッチ系の嫌な予感がしてきたのです。
この飛び交っている黒い影に、私は幾つか思い当たる節があったから余計に嫌な予感を感じ取り、今後、起こり得る状況に関して、色々と心や頭の中で身構えた時でした…。