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第7話 「部長の家に突撃!?←迷惑」

俺たちは、部長を探すため、ついに禁断の手を使った。


「いや普通、顧問の先生に部員の住所聞かんて。個人情報どこいった」


なんて、常識人の俺――翔太はツッコミつつも、結局ノってしまっているあたり、自分でも救いようがないと思ってる。


「やっばーい♡こんなことしてバレたら停学かもよ〜?」


「セキュリティガバガバかよ、この学校……」


「うっさいな〜、小野田先生が『部長のことは頼むぞ』って言ってくれたんだから、もう任務公認ってことでしょ!」


「いや、それどう考えても責任放棄だろ」


とかなんとか言いつつ、俺たちは電車を乗り継ぎ、やってきたのは東京都・目黒区。


街を歩く人々はどこか洗練されていて、コンビニの前に止めてあるチャリですら高級感がある。コンビニのパンがオシャレ。ロー◯ンのくせにバゲット売ってた。バゲット。


「ここが部長の家……ってか、マンションじゃん。めっちゃ高級そうだにゃ……!」


猫山が目を輝かせて見上げるのは、モダンなデザイナーズマンション。白と黒の直線的な外観、エントランスの自動ドア、そして……。


「ちょ、見てあれ。オートロックのくせに“故障中”って張り紙してある」


「セキュリティガバガバかよ、このマンション……」


「やば〜、部長ってこんなとこ住んでるの?マジで何者? 令嬢? 吸血鬼の末裔? 実は王族?」


それはそれで興奮するけども、目的は忘れてない。


部長――本名不明、年齢不詳、言動は常に謎。

謎が謎を呼ぶ存在、だが部のカリスマ。俺たちの活動は、いつもこの人の鶴の一声から始まる。


それでいて、連絡は一切つかない。LINEのIDすらわからない。


「部長、今日も来てないのかー」

「いないなー」

「幽霊かよ」


そんな状況が続いたため、俺たちはついに動いた。部長、確保作戦。


「さぁさぁ〜! 作戦開始だよー! 目指せインターホン♡」


「「「目指せインターホン!!!」」」


うわ、ノリノリだなみんな。声デカいし、近所迷惑もいいとこだぞ。

あと、こんなところで伏線回収するな。


「……というわけで、作戦開始!」


「作戦って、インターホン押すだけじゃん」


「いやいや、大事なのは誰が押すかでしょ!」


まぴが言うと、全員の視線がゴンザレスに集まる。


「ピンポンは……ゴンザレス、君に決めた!」


「ゴンッゴンゴンゴンッ!ゴンゴンッゴンゴンッ!!(おお、ポ◯モン風だね! 拙者、ピンポン任務、全力で遂行いたす!!)」


「だからノるなっつってんだよ……」


しかしもう止まらない。

ゴンザレスは真っ直ぐにインターホンへ向かい、まるで戦国時代の忍者のように正座した。


「ゴンッゴンゴンッ!!!(ごめんくださーいでござる!!!)」


ぴんぽーん。


……少しの沈黙。


「はーい」


女性の声が、インターホンから返ってきた。


柔らかく、それでいてどこか“仕組まれた感”のある声音。


「なにごと?」


思わず俺は声を漏らした。


その瞬間、ドアが開いた。重厚な音と共に、現れたのは――


「こんにちは~。彰人あきとと、どんなご用?」


黒髪のロングストレート。紺色のワンピース。瞳は琥珀色。


年齢不詳。中学生にも、大学生にも見えるが、絶対にただ者ではない雰囲気。


「え、ええと……部長のクラスメイトの、翔太と申します……あの、こちらにいらっしゃるかと……」


「……あらあら、彰人。ふふ、来客だって。珍しいわね」


「え? え、どこ?」


返事がない。


いや、明らかにこっち向いて言ったよね? 誰に? どこに?


まぴが小声で言った。


「……ねえ、今の声、誰に話してた?」


「わからん。でも……空間に誰かいるみたいだった」


まぴも真顔になる。俺もなんとなく感じる。誰かに見られてるような、ヒリヒリとした空気。


「ごめんなさいね。彰人、今日はお休み中なの。よかったら……お茶、でも飲んでいく?」


「……いえ、そ、それはまた改めて……!」


黒川がやたら早口で断った。冷静ぶってたやつが一番ビビってるじゃねーか。


「そう、残念ね。あ、でもこれ、彰人から。何かあったら渡してって」


彼女はそっと、俺の手に何かを押し付けてきた。


小さな……紅い封筒?


それは、まるで俺たちが来るのを予感していたかのように渡された。


宛名も、差出人も、何も書かれていない。


でも、たしかにそこには“部長”の気配がした。


「え、なにこれ、手紙?」


「さあ。中を開けてみて?」


俺たちが戸惑う中、彼女は微笑んだ。


「ふふ、びっくりすると思うわ」


カツン、とヒールの音を響かせて、彼女はドアを閉めた。


沈黙。


「……こっっわ……なに今の」


「おばけ……?」


「まさか……部長って、本当に“この世の者”じゃないのでは……」


それぞれが妙なことを呟き始める。


そして俺は、まだ封筒を開けられずにいた。



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