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第17話

「陸依霜…お前が死んでいようと、生きていようと、構わん…ただ朕の元へ戻ってきてくれ…何でも望みを叶えてやる…そう約束する…頼む…」

「自由が欲しいなら…何度でも宮の外に連れ出してやる。地位が欲しいなら…戻ってきさえすれば、お前は万民の上に立つ皇后だ。俺に優しくしてほしいなら…どんなことでもお前を第一に考える。もしかつての俺の仕打ちを恨んでいるなら…好きなように仕返ししても構わない…」

「本当に…間違っていたと悟った…お前を苦しめた陸青儀は…千倍の報いを受けた…だからお願いだ…戻ってきてくれ…」


彼は氷の棺の冷たさを額に感じながら、かすれた、詰まった声で訴えた。

常に高みに立つ帝王が、初めて誇り高き頭を垂れた。

しかし、陸依霜はそれを知る由もなかった。


どれほどの時間が過ぎただろうか、軒轅翊はようやく完全に冷静さを取り戻した。

まるで生気を失った亡者のように歩を進め、せわしなく行き交う人たちを見つめても、ただ深い孤独感に包まれるばかりだった。


心の中は空っぽで、鈍く疼いている。

彼は唇を動かし、渇いた声を絞り出しながら命じた。


「陸依霜が火に飛び込む前に何があったのか…改めて徹底的に調べ直せ。どんな些細なことも見逃すな。一つ残らず報告しろ。」

「明日、もう一度魂を呼び戻す儀式を行え。一度で駄目なら二度、三度…何度でも繰り返せ。陸依霜が戻るまでだ!」


周囲の者たちも、ここ数日間の彼の狂気じみた様子を目の当たりにしてきたため、諫めることが無意味だと悟っていた。

すぐに再調査が始まり、宮中は瞬く間に緊迫した空気に包まれた。

何かを知る者は皆、口を割らされるのを恐れて必死だった。


軒轅翊は上奏文に目を通しながら、苛立ちを募らせていった。

胸の傷口は癒えることなく、裂けては爛れ、もはや肉の塊と化していた。

だが彼は痛みを感じていないかのように、一瞬たりとも眉をひそめることはなかった。


わずか半月が過ぎただけで、彼の体は一目で分かるほど痩せ細っていた。

心臓から血を取られる毎日の苦痛は、常人には到底耐えられるものではない。

いかに滋養のある食事を与えられても、心の底に溜まった感情は病となりつつあった。


上奏文への返答を書き終えると、彼は丹念に陸依霜の過去五年間の記録を洗い直した。

幾日にもわたって夜を徹し、ようやく些末な記述の中に、微かな手がかりを見出した。


一年前、陸依霜は軽い怪我をしただけなのに、三日間で大量の傷薬を使い切っていた。

侍女たちの記憶によれば、ある深夜、彼女は起き出して庭先で掃除をしたり、何かを埋めたりしていたという。


その日を境に、庭の花々は驚くほどよく育ち、異様なほど妖艶に咲き誇った。


そして大火が起こる半月前…陸依霜は宝石や装飾品を売り払い、その金を康海に贈っていた。


もし本当に死ぬつもりだったのなら、なぜその日まで待ったのか?

逃げる機会は何度もあった。あの日が特別な日だったとは思えない。


あらかじめ金品を用意していながら、その全てを康海には渡していない。

死ぬ覚悟の者が、あれほど多くの金を何に使うというのか?

答えは一つ…逃亡のためだ。


「必ず誰かが手を貸している。しかも、相当な武芸の使い手だ。でなければ、これほどの宮中の警備をくぐり抜けられるはずがない!」

「これができる者は限られている。もし彼女が完全に姿を消すつもりだったのなら、都にはもういないはずだ。彼女を連れ、数々の関所の監視をかいくぐるのは並大抵のことではない。おそらく…見事な変装術で姿を隠しているのだろう」


「すぐに探せ! 変装に秀で、武芸にも優れた者は必ず何かしらの痕跡を残す。名を轟かせた者を、一人残らず洗い出せ!」


軒轅翊は部屋の隅に潜む隠密を睨みつけ、冷静に命じた。


紆余曲折を経て、ようやく彼は陸依霜を連れ去った可能性が最も高い人物に辿り着いた。

最有力の容疑者は、殺し屋の頂点に立つとされる「夜隠ヤイン」という男だった。


彼は武芸に卓越し、潜伏と隠密行動の達人であり、変装の腕も一流。

その正体を知る者は、江湖の中にも一人として存在しない。


彼を探すことは、大海に針を落として探すようなもの。

捜査は振り出しに戻ったかのような絶望感に包まれた。


だが、少なくとも陸依霜は生きている。それだけが希望の光だった。

軒轅翊は、決して諦めようとはしなかった。



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