三日後、私のもとに一つの守り刀鞘が届いた。
それは、かつて橘彰忠に与えたものだった。彼は、もはやどうすればよいのか分からなかったのだろう。
何の要求も書かれていなかった。
私は勝手に平安京へ戻るわけにもいかず、まずは藤原家へ文を送り、父母に橘彰忠のことを頼むことにした。といっても、大げさなことは望まない。
せめて、空腹も寒さも感じぬよう、屋根のある場所で過ごせるだけでいい。
それ以上のことは、私が京に戻ってからでなければどうにもできない。
そして十月、私は一人の女児を産んだ。
名を
長光が生まれてまもなく、彼女もまた内親王に封じられた。
大宮御所は長光のことをとても気にかけておられ、たびたび文を寄越しては、景久に私たちを平安京へ連れ戻すよう促された。
けれども、長光はまだ乳児で、長旅に耐えられる年ではなかった。結局、彼女が一歳の誕生日を迎えるまで、帰る話は先延ばしとなった。
平安京に戻った後、私はまず長光を連れて大宮御所に挨拶に参じ、その後、橘彰忠を訪ねた。
彼は私塾に入れられていた。
才は抜群ながら、父親である澄信の件が影響し、周囲からは距離を置かれ、友と呼べる存在もなかった。
頬の幼さは消え、体つきも細くなり、どこか気力のない様子だった。
私の姿を見ると、彼はかすかに笑みを浮かべて、深々と頭を下げた。
「……王妃様に、拝謁いたします。」
私は静かに告げた。
「あなたのために、一人の先生をお招きしたわ。これからはその方に学ぶといい。ここに留まる必要はない。また、あなたが元服を迎えるまで、困らぬようにと十分な金も用意してある。けれど、その金はすべて先生の管理下に置いてあるから、勝手に手を付けることはできないわよ。」
彼の目がぱっと輝いたが、すぐに伏し目がちに、口を開いた。
「……王妃様。当時のお言葉の条件とは、何でございましたか?」
本来は、ただ彼に橘家を離れさせ、家系図からも名を消すこと、それだけでよかった。
けれど今となっては、それすらも意味を失っていた。
私はしばらく考えた末に、こう答えた。
「澄信を、安易に許してはいけない。」
彼はお前の父でありながら、私が不在の間、育ての責を放棄した。彰忠がこうなったのは、すべて彼の罪だ。
彰忠は深く頭を下げた。
「……はい。」
彼は終始、目を合わせなかった。その胸の内が読めず、私には彼が本当に約束を守るかどうか、分からなかった。
それでも、もう構わなかった。
文を読む者は孝を重んじる。
実母に背を向けた彼は、すでに親不孝者とささやかれており、加えて澄信の罪まで背負う身。
この先、どれほど学を積もうとも、前途は険しい。
おそらく……私たちが再び会うことはないだろう。