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第23話 追憶のように繰り返していくが生存

「……痛っ……」


気絶していた。視界がだんだん戻ってくる。

ガルシドュースはゆっくりと体を起こした。まだ視界がぼんやりとしていて、頭の芯が重い。


(熱い)


 少しずつだが裁断榴の砲撃を思い出す。

この匂いたちもそうだろう。

体の内側から伝わる痺れるような暑さも、これもきっと神経を燃やしたからだ。


「立てるか?」


不意に、背後から声がかかった。懐かしさすら感じる、その響きに反射的に振り返る。


 視界の端で、誰しもが小さく痙攣していたり、死体のように動かないのが見えていた。どうやれこれじゃまだ目を覚ませそうにもない。アスフィンゼも、リドゥも、セオリクも同様。ここに立ち上がっているのは、今のところ自分一人だった。


正面にいる青年に視線を当てて見つめる


「……お前は……?」


「俺か? “ラドリカ”。忘れたのか? 南下ルートの第五分隊にいた」


「それより、状況だ。」


 「...状況?」

(戦闘のやつか...)


「地面が脈打っている。裂け目から、粘土質な何かが漏れ出ている。」


ガルシドゥースは腰の杭打ち装置を抜き、一本を射出した。


 (かすりもしない)


ラドリカが言う。


「名を与えろ。“これは道だ”“これは壁だ”“これは杭だ”ってな。そう思い込ませる。そうすりゃ、打てる」

「は?」


「名前をつけろ。“これは杭だ”“ここは杭が刺さる場所だ”って。そう思って打て」


「そしたら打てる。確実に」


「……は?」


「意味を与えるんだ。お前の意志で、ここが“そういう場所だ”って決める。

この場所じゃ、お前がどう思うかが先に来るんだ」


(そうか、確かにあの中では幻覚が現実になる。石碑の中では。)

しかしそれは視覚への影響であって、こちらが決めても物理的には変わらないはずだ


言っていることの意味はよく分からなかった。

だが、地面のうねりはもうすぐ足元まで迫ってきている。


(やるしかない。)


ガルシドゥースは杭を構え、投げ飛ばした。相手の術があるかどうかもわからない時に大威力で撃つにはまずいと。


「これは杭だ。ここは杭が刺さる場所だ!」と宣言して投げつけた。


ズドンッ。


杭が突き刺さった。

地面が「納得した」ように、そこだけ安定した。足がちゃんと乗る。滑らない。


しばらくして耳を澄ますと、確かに地面から脈を打つ音がする。本当にある泥の地みたく。先ほどない音までしてきた。

ぶつぶつと水を吸った粘土のような音が、足元から伝わってくる。


「やっぱおかしーじゃねぇか!」


「助かったな」

「お前のおかげだ」

「さすが、ガルシドゥース」


見たこともないやつらが馴れ馴れしく話しかけてくる。

「なっ、なんなんだぁ!?」

(こんなにも人はいなかった!)

 セオリクも起きた、こう言う

「貴公らのおかげだ。これで悪しき」


「おい!どういうことだ。こんなやつ!誰だ、こいつら!」


「こいつらを信じるな!」ラドリカが叫んだ。「やつらは人間のふりをしているだけだ!」


 (くそッどうすれば..)


ガルシドゥースは杭を構える。全身に汗が噴き出す。

「何言ってんだお前!」


「……ガルシドゥース、何を……」


「なっ、なんなんだ……? こんなに人はいなかった……」

(明らかに人数が違う!?)

そう思いながらもガルシドュースは何かしないといけないと思った。そして今に1番出来そうなことを考える。


 それは話すことだ。


「さっきのアドバイス、ありがとうな。“名を与えろ”ってやつ。確かに効いた」


「ああ。あれがないと、お前も今頃あいつらと同じだったさ」


「……ところで聞くけど、お前、俺と前に何を話したっけ?」


「は?」


「第五分隊で、南下ルートのときの話だ。――具体的に何をした?」


「セオリク、アスフィンゼ、リドゥ、お前らは何か知っているか。」


「いや、そもそも森から出て子供らのために魔女を討伐するとかのはずでしたが。」


「我、誇り高き聖なる遠征に出陣なんぞ」


「お前だ、話せ、ラドリカ。それとも仲間のふりしているのか。」


 ラドリカは一瞬、無言になった。


(……来るぞ)


「えっと……あれだ、あの時は……補給が足りなくて……いや違ったか?」


(引き出しが浅い。記憶を“装っている”だけのやつだ)


 次の瞬間。杭を地面に刺す。


「これは“応答を測る杭”だ。偽物の反応を検出する杭だ!」



「お前が本物のでも、そうでないにしても、こいつでわかる。」


「ッ!」


「その反応おかしいんじゃないか?」


 「なんでお前、俺が怪しいと思った時点で動揺する、そういうやつにはみえない。」


「答えは」


「答えは一つ。」

「答えは一つ。」


「お前も俺の想像からできたやつだ、ガルシドュース、いや偽物。」


 裁断榴が後頭部に当たる、冷たい感触だ。

「お前の冒険もここまでだ。」


「...」

「そもそもだ、おかしいとは思わなかったのか、いろいろ都合が良すぎると、お前は」

「そういう脅しはいい、俺の認識を変えるつもりだろうが、杭でわかる。」


「は?俺の顔を見てみろ、お前狂ってるのかって顔してるぜ。」 ガルシドュースによく似ている顔で、確かに嘲るようにしていた。


「そんな杭なんてそもそも」


「爆発だ、お前が吹っ飛ぶことに予想が付く、こいつは測定装置の前に武器だぞ。」


「なっ!」


 ドーン


(仕留めた。だが階段たちの手触りはする。謎は解けていない。

だが指を捧げよ、これは一体なんだ

とかなんとなくだが。何かを捧げない限りここからは出られない

老衰と忘却、人の言葉を嘘にするこの二つ...答えは一つだけだ!)


そうか……この空間では、“見破ろうとした”時点で、世界が敵になる。


 ガルシドュースの思うことが現実になるのは違わなかった。



……一つに指を捧げるってのは、“誰も指さないこと”だ。



老衰に対抗するには、指を刺すことが有効ってリドゥの話にあった。まさかこんな雑学が役に立つ日が来るとは。


そして鳩、それは象徴を持つ、平和ということだ。


「敵を探さず、味方を疑わず、ただ...

 つまり、全員を信じろってことだ。ここではそれしか通じない。」


「謎があるのにそれを探ってはいけない、これが相対する矛盾か」



だが龍はどういうことだ...龍の灰でもやす。

(燃やすのか..?いや燃えると、灯台!光りだ、燃えることに光。真実を照らすには灯火!)


蜃気楼、それはすなわち光の屈折。

夜でも起こりうるそれは昼に温められたことによって起こりうる。


 つまり白日にある太陽との光とは違う。


だから灯台はいる、夜の灯台でさらに姿を変える。


つまり、ガルシドュースがこの状況を切り抜くには、実在する怪物たちを見破ることもせずに、自身の意思を抑えながらにして、怪物を倒しては、夜の光を再現しないといけない。


 (どうすればいいんだ、いや待て...月だ、太陽の光だ、あの男...なんだったか名は忘れたが、月の光を使っていた。)


 ガルシドュースは感覚を思い出す。

(あれは太陽の光に近いものを感じた、灰の地を出て初めて感じた。)


そう、太陽でなくとも、太陽になれる。


ならば


「俺が太陽になればいい。」

迷う必要はなかった、太陽で気圧が変化して景色も変わる。


熱が、視界を変えた。

大気がうねり、風が震える。地平が波打ち、陰が焼ける。


体軀るから噴き上がる火、その焔。彼の動きや鼓動に合わせて明滅する光に変わる。

制御のために常に息を整える。呼吸と同調しながら、ゆっくりと、その身に宿る“火”を調整する。


今度こそは焦がすのではない。

照らすのだ。


「...そうだ、警戒もしていないから変わらない。そうだ。」


 次の瞬間、視界が変わった。


 景色が歪み、色が反転し、世界そのものが焼き直されたかのよう。

 光が溢れる。ただ明るいだけじゃない。赤、金、青、紫――燃え盛る炎のように形を変えながら、爆発的に弾ける光の尾を引く。


大きく光源として成り立つために光の角度の調整もいらない。探る必要すらもない。


 そして


「ッらああああッ!!」


 地面が爆ぜた。怪物が突進してきた結果だった。あれの、その勢いのまま、怪物の顔面に拳を叩き込む。

 怪物の血飛沫が雨のように降り注ぎ、怪物の頭部は空へで飛び散った。


 次に背後から突っ込んでくる多く怪物にも、振り返りざまの回し蹴り。

 足の動きで光が広がり、光輪のような軌跡ができる。残忍ながら見た目の主体であったために、蹴り技と変化はない。

けど、次の瞬間には円盤のように怪物の胴体は断ち切られていた。


ガルシドュースは戦いの中で自身の神術で肉体を強化、操作することがうまくできるようになってきた。


吹き飛び、焼かれ、暴かれ、砕け散る異形たち。

 自らが“太陽”と化したその男の前に、闇は存在を保てなかった。


「おいさっきからうるさいぞ、お前。」

ガルシドュースはイラついていた。再び魔女の...影?の姿を見た、そして彼のいうように戦闘している。

だがそれよりも、あいつは平然として俺のやっていることを見て、言葉にしている。


 (集中できねぇ!)


 一瞬、イラつく。


 しかし、次の瞬間に気づいた。


いや、待て


(さっきから、そもそもあの時からこいつは導いている...魔女が敵だが、味方でないこともない。魔女の味方のようなものこいつに求めることがある。)


 「俺に求めているのか!」


この地に敵の味方の区別もしてはいけない、それは謎の答えかもしれない、そして同時に謎を隠すためでもある。

 その考えが答えとして出た。


鉄の蹄に秘められた。一つの意味。


 踏みつけるものでもない。ほかにある蹄で何かを取るものではない。それだけではないんだ。

蹄は手と違い2つの別れた形をしてる。

その形の通りに鉄の蹄とは、

二分化しては、そういうものであったはずだ。

(だから気づいてはいけない、はっきりと善悪を。混沌としていないとだめなんだ。)


 蹄は踏み潰すとか、そう言うでかい敵の象徴じゃない。

 あれは、「分けるための形」だったのだ。


 右か左か。

 敵か味方か。

 正しいか、間違っているか。

 そのどれかを決めさせ、残った方だけを信じさせる。


 だから、“混沌”が見えなくなる。


 本当は、どちらでもないものが、そこにあった。

 敵でも、味方でもなかった。

 答えでも、罠でもなかった。


 それを“見ようとした”とき、すでに形を変えて現れる。


これがやっとわかった。

“この地に敵の味方の区別もしてはいけない、それは謎の答えかもしれない、そして同時に謎を隠すためでもある。”


 意識させてしまってはこいつの言葉が耳に入らない。最初から味方と思ってしまって敵と認識できなかった。


問題は....人は生きれば疑う、変わる。


人は生きるとき、疑いを重ねる。

正しさも、誓いも、どれも続かない。

かつて信じた誰かの言葉を、今日の自分が切り捨てる。


それが人間だ。

それが、生きるということだ。

常に変化するのが人間だ。良くもも悪くも。

善悪を持つ生物。


変わらないのは龍だ。

きっとそうか、やつは龍と俺を呼んだ意味。

それはただ、灰が降る。それだけだ。

変わらないそれは。


そして

この場所が名をつけると何かが変わる。

それは...

あの地で龍から名を受けることに似ている。



「...まるで何かの導きのようだ、感じるよ...光が出てきたことによって頭の中が思い出す感覚を。」


 それはかつてある存在が鼠に光を当てたことで、その鼠がすくんだことだ。光で怯えないはずのそれは、光で嫌な記憶を思い出したからだ。


「いやに、いやに、嫌な感覚をするが...」


 嫌な内容が頭に充満するが、目の前の嫌なそれらは消える、消えつつあった。


もう確認できないからだ、頭の中でいっぱいになってしまっている。


 普通の人間ならば無理だろうが、思い出す時に何か大きな音でもすればはっとして何も思えなくなる。

しかし神術で誘き出せた俺の記憶はあまりにも膨大すぎて処理も追いつかなく、現実が一切処理できない。


 「これでいい。」 影の音がする、認識も処理もできない。

 「これでいいんだ。」俺は思う、きっと影もそう思っているのだろう。


 この地の謎を解くために必要なのは謎を解かないということであった。 

しかし謎があることを認識する必要がある。

謎を認識しないといけなかった。

理由は一つ、死者と生者の均衡が崩れたこの地で、生者が唯一できる違うことは思い出すことだ。


あの青白い死者というべきか、そのものたちは全て記憶からできるからだ。

 しかし認識しても謎解きということが頭の中にあってもいけない。少しでもだ。

謎を解こうとすれば正解へと進んでしまう、正しいということを決めては均衡が崩れる。


ガルシドュースでないとこのことは同時にはできない。

「ガルシドュースと呼ばれしものよ、お前は立派にできている。これで混沌の一つは初めて解ける。認識してしまった我らには不可能であったことだ。誇って良い...」


 少しだけ音が聞こえた。


「...おい、混沌ってなんだ。」

久しぶりの感覚で少しだけ声を出すのに苦労した。


「それはお前で探すんだ。」そう影はいう

 影は徐々に消えながらも答えてくれた。



「残り二つの場所でだ」


 (リドゥと似たこと話してるし、勝った気分はないし。なんだよ...)



だが消えた周りの階段が俺に勝利の現実を伝えてくる。

触れてみても、いろいろしてみても消えてはいる。

ズサ ズサ

 「お、起きたのか...てことは。」


裁断榴を撃ってきたやつらに近づく、今のうちに、弱っているうちにやつらのことを縛って、後で質問をするために俺は動いている。


(服装はベックオに似ている...関係はあるのか?)


ゾッ

 「貴様ら!起きろ!」

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