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第32話 雨が滴る室内の空

 死体の部屋だった。


 いくつ、いや、いくつかすらも曖昧なほど、重なり合い、砕けちり、バラバラに床を覆い尽くしていた。

見るにそこは倒れ伏したまま朽ちた騎士か、装束は全身の鎧、燃え尽きた故、材質はあまりわからない。

ほかに、焼け焦げたような衣を纏った人が影、

見たことないからよくわからない。

(リドゥならわかるだろうか..あるいはセオリク...いや、安静に寝かせておこう。)



さらに見渡していくと、そこ。

 肉の形すら成していない、液状の塊となった何か。骨さえ見えぬ、ただの皮のようなもの。

中に何か詰まったようなそれは、水筒のような感じになっていた。持ち上げてみると臭い。

肉のようなものが入っていた。

何かが、ぐつぐつに溶かしたか。

あるいは吸い尽くしたか。

または両者か。


 (嫌な予感だ...ずっとしているか無意味かもしれないが。)

「……セオリク、まだ動けるか?」


 ガルシドュースは、倒れていたセオリクの隣で静かに声をかける。

応答は遅れた。だが、かすかに、かすかに頷く音が返ってきた。


しばし遅れてセオリクが返事をする。


「生きて……が、骨の何本か、今仕方は文句を言いたそうな痛み……」


「悪い、ほんとうに大丈夫?」


 「いいことよ、私は騎士、我が名は....んんンッ!」

「やはり痛い?」

「...嘘はつかん...痛い。」

そう言い彼は微笑んでみようとして、いるか、顔がきぎこちない。

うまく口元が動かないようだ、無理もない相当に傷がした。

ガルシドュースはその姿を見て、必死に手を探した。簡単に神術を使えない、そんな今。打つ手などある....

あった。


(どうして忘れていたんだ、魔法のことを。)


思うにガルシドュースは、おそらくは魔法について、いや自分の中でたくさんある記憶について、まだ他人のことと、そう扱いしているか。


はたまた単に多すぎて混乱したか、ガルシドュース。


どちらにせよ、行動に移す。

ガルシドュースはセオリクを背負うようにするか、しゃがみ込んでいく。

 「……無理をするな。俺が運ぶ。いい案がある。」

「かたじけない...」


「それに、直してやる.........そう、あ、まぁ..魔法で、向こうへ行けばいい。」

(..どうして話してしまったんだろう、嫌がるだろうし、隠しておけばうまくいけたはずだ。)


「魔法使いは信じないが、ガルシドュースよ、貴殿は我が友。信じようぞ、嗚呼、信じようとも。」


 「...ありがとう。」

ガルシドュースはなんとなく、自分の気持ちがわかってきた。


そう言って、重くなったセオリクの体を背負いなおす。

(力が抜けた人間の体ってなんだか重くなったみたいだな。)

おぶるのはもう慣れた動作だ。

何度でもやった。最近からだが。

セオリクにも当然うまくやれる。


少し歩いて場所に着く。

遺体だ。

(これで儀式をやれば...魔法が...)

死体を漁るという行為に、彼は一瞬だけ迷いを覚えた。

だがもう迷っている時間はなかった。

一刻も早くこの塔を突破しないとならない。


 「……すまん、誰か知らないが、ごめん……」


 そう呟きながら、最も新しそうなのを探す。まだ形の残っているものに手を伸ばす。


 奇妙だったのは、それはあまりにも整いすぎていることだった。


 (……これじゃ、ついさっきまで……)


 指先が胸元に触れた、そのときだった。


 バッ!


 目が、開いた。


 目が見開かれた瞬間、動いた。


 その者の全身が、バキバキと折れ曲がりながら動き出す。

斬ッ!


 腕がセオリクの心臓を貫く。

どうしてだ。なんでセオリクが。

相手は悪運で転ばないんだ。


どうやってもはや腐ってるようなその腕が、セオリクを貫いている。

見た目から信じがたい力。


 ドシュッ!!!

打ッ!

セオリクの胸を貫いた、腕、いや爪が引き抜かれる。

打ち出されたガルシドュースの拳も外れる。


 「なっ……!」


 貫いた爪が抜かれたセオリクの体が、ガルシドュースの背中で崩れる。


 「セオリク!!」

急いで彼に方に向かう。

 返事は、ない。


 目はまだ開いている。だが焦点が合っていない。


スタとそいつは、立ち上がった。


「ッ!」

 見れば、腕が腐っている。骨が露出し、皮膚は剥がれ、目玉は片方潰れていた。

生きていると言い難い見た目。

だが、動いている。


 「…………だれ……だ?」

話してきた。

かすかに声が漏れた。乾いた喉をこするような、頼りげなさそうに話す。


 「ここは……どこ……だ……?」


記憶を失っているのか。

「オラ!」

自分の死を理解していないのか。

(殺してやる!)


その存在は、おそらくガルシドュースの気配に反応し、助けを求めようとした。

だが、その助けは、既に腐敗した筋肉が、異質なこの地と同化された肉体に制御できるものではなかった。


「グワァあー」

吹っ飛ぶ。


 「おい……おい……」


腐った存在を殴り飛ばしすぐに、ガルシドュースは膝をついた。

目に映る痛々しい傷。

セオリクの名を呼ぶ前に、まずこの事実を理解しなければならなかった。


 セオリクの胸には、深く裂けた爪痕が刻まれている。


 血はほとんど出ていない。


 傷が深すぎて、心臓が潰れたように見える。


 「……セオリク……」


 セオリクは微かに唇を震わせた。


 「……なん……」


 言葉は、途切れた。


 視線が、ゆっくりと閉じていく。


 「嘘だろ……おい……おい……!」


 だが、呼んでも返ってこない。

セオリクを抱えた手が、震える。彼の肩が、背が、崩れる。

まるで心が崩れていくように、力が抜けていく。


「..あ、あ」

 しかし、目の前の“それ”は、まだ立っていた。


 朦朧とした目で、ガルシドュースを見ている。


 「……きみ、あたたかい……?」


 「暖かいだ!?」


 ガルシドュースの方から、姿が消える。

残るのは音。




 「ォ゛ア゛ッ!!」


 轟音と共に、空気が押し潰されるような音が鳴り響く。

 “それ”は、声を上げる間もなく壁に叩きつけられた。

 衝撃で肉が千切れ、骨が砕け、背面から血と黒い液体が爆ぜる。


 だがまだ、立とうとした。


 「……ぅ……う……」


 それは悲鳴でもうめき声でもない。

 “誰かの名前”を呼ぼうとする声だったのかもしれない。


 だが、ガルシドュースはもう聞いていなかった。


 姿を消す。


 音が響く。


 拳が振り抜かれるたびに肉が爆ぜ、骨が砕け、ぼろぼろな顔の皮がさらに剥がれていく。。


腐った“それ”を、吹き飛ばした。


 腕が捻れ、首が曲がり、背骨ごと壁にめり込む。


 「くだばりやがれッー!」


隙も与えずに突進する。


「グギャアアッ!」


 壊れたはずのやつが、蠢く。


 ガルシドュースの眼前に、口を広げて突っ込んできた。

避けるほど大きく開かれたそれを止めるべくガルシドュースは動く。


 「くっ……!」


 咄嗟に防御に回る。手を顎に当てて交差して顎を引きちぎる。

 重い。信じられないほどの圧をかけたから、それも位置が少しずれる

 追い討ちに何発か殴り返すと、浮かぶほどの勢い。しばらくしてようやく崩れ落ちた。


起き上がるのを待たずにガルシドュースは踏み込む。


力を溜めた拳がそれの頭蓋を砕いた。脳漿と共に目玉が潰れる。


 その時だった。


 ズブリ


音がした。柔らかな肉を貫く音、同時に生々しい感触をガルシドュースは胸に感じる。


「!?」


 見ると、もう死んだはずの“それ”の胸から――新たな腕が、突き出していた。


 違う。違う、これは中に何かほかの生き物がいる!


 その腕は、ガルシドュースの胸に当たりながら、さらに貫こうとしているのか、思い切りと突き出される。


 「チッ……!」


 咄嗟に回避する。だが掠った。左肩を抉られる。


 同時に、“それ”の胸部が裂けるように開いた。


 皮が裏返り、肋骨の間からぬらりとした新たな身体が這い出してくる。


 中から出てきたのは、裸の青年だった。


血も、泥も、何も纏っていない。


 確かにあるのは、ほとんど傷のない人間の姿だった。


 肌は白く、目は濁っておらず、まるで今までの腐敗とは別のもの。

 裸のようでいて、よく見ると何かの薄い膜がその体を覆っている。


 「…………寒い。まだ、寒いんだ」


 声が、震えている。


 「だから、お前の中に入れて。そうすれば……暖かいんだろ?」


 ガルシドュースは理解した。


 「こいつ……人の中に入ってたのか……!」


 さっきまでの“それ”は、ただの器だった。

 今、目の前にいるのが本体。あるいは、“それの一部”かもしれない。


 「次は、お前の番だ。お前を殺して、財宝はこの俺のものだ。」


 声と共に、跳びかかってきた。


 「速ッ!」



 ガルシドュースは荒く呼吸しながら、迎え撃つ



 「次は、お前に潜り込んでやるぞぉー!」


  その声と同時に、異形の青年が跳びかかってきた。


 膜や否、それは水。

身体を覆うそれは、液体ででき、粘るように伸び、空気に触れても揺るがぬように形状を保っていた。

いや、よく見ると揺れている、というより飛び散っている。

 ガルシドュースが拳を叩き込む。

 手応えは、ない。


 ぬるりと、吸い込まれた。


 「な……ッ!?」


 衝撃が遅れてくる。

まるで水の中のようだ。

 拳を伝って、何かが入り込んできていた。


 「……お前の水分、もらったよ」


 その声と共に、皮膚が、張る。


拳を引こうとするが動きが鈍い、腕だけが水の中あるみたいだ。

 皮下で水分が引かれていく感触がする。

見るうちに一気に表皮が乾き、干からびていく時の、日焼けして乾燥した皮ような痛みがする。


 「ぐ……がッ!!」


 筋肉が攣る。関節が引きつり、皮膚がバリバリと音を立て始める。


 (やばい……これは……内部から乾いている!?)


 ふと、そこを見れば、皮膚から滲み出た汗が、膜に吸い込まれていくのが見えた。


 敵はただ力任せに襲ってきたのではない。


(この感覚、神術!)


 「ここまま干からびて死んじまえ……ウォー……」

(まずい!神術が使えない今、その残り火の滓で神術は防げない!)

 ガルシドュースは動かない左腕を右腕で引きちぎり、距離を取る。

 だが膜の一部が、まだ切断面で糸のように伸びている。


体を引いた勢いのままに粘液の糸も空中で弧を描くと、彼の顔にピシャリと当たる。

瞬間、視界が歪む。


 「っ……!!?」

周りが溶け出す。

見ているものが溶けていく。

いや、目の表面の水分が、奪われ始めているんだ!


 「人間は水...水からできてるんだよ!」


 膜が、周囲の空気中の湿気さえ吸収し始める。

 空気が、急速に乾いていく。


 (こいつ……あらゆる水を……!)




 膜の中へ、拳がどんどんと吸い込まれていく。


 その瞬間、血が逆流するように動き、血管を外に出す。なんとガルシドュース自身の血管が彼の腕へ巻きついた。


 「もらう……血液の暖かさを!」


血が骨が、骨髄が。


 血管内の水分が急激に失われ、血が泥のように濃くなる。心臓が跳ね、ギュンとする。

ガルシドュースの意識が霞んでくる。


 (……まて、まだ、だ……)


 腕がもう、上がらない。



 脚も動かない。


 「こっちの水、熱い..うゅ、のが……欲しいんだろ……!」


 口を開けて、舌の筋肉を強化する。

強化に伴う血流の集中による、体温の急上昇。熱い唾を舌で押し出す。いや撃ち出すと言うべきの威力。

蛇が毒液を吐くように打ち出された唾。

 熱や水分を全て奪われる前に決める。


 「うぇッ!!」

唾を弾き飛ばす!

膜の糸を伝って膜まで飛ぶ!

 舌からから蒸気が弾け飛びほどの熱量と強さ。

口内が焼けるように引き裂かれる!

当然相手の水の膜にも...

(吸い込まれた。)


「バカが....効くはああああああああ!」

 敵が悲鳴を上げる。


 膜が皮膚を焼き、皮焼け爛れる。


 「……あつい……熱いのは……いやだ……!」


ガルシドュースが本命は温められた水温のためだった。


薄い膜は攻撃を受け流すが、膜自体は体に貼り付くようになっているから、当然温度が上がれば痛む。




 膜が溶けた。敵の方からから、水が飛び散り、霧のように散っていく。

しかし液状だった。


すぐのもガルシドュースに降りかかる。


その時、水はなぜか落ちた。

いや方向がズレたというべきか。


「...ガルシ...」

「セオリク!」



 ガルシドュースの足元には、ただ水たまりが残されていた。




 ……息が上がる。

 喉が渇く。身体がひどく乾いていた。


 (……セオリク)


 振り向く。

セオリクがこちらに手をかざしていた。


死にかけにも関わらずに。


(いいいいや、まだしんみりする時間じゃない!セオリクは必ず生きる!。今はあいつ、あれを、あれを殺さないと!)


しかしなぜ今に効いたんだ。


セオリクのあの転ばせる力は、いや、そうか、効いてないわけじゃない。


水の膜には効いていたんだ。

飛び散り飛散する水の膜、そしてあの糸、全ては悪運が味方していた。


 (やつは神術で出来た膜で身を隠したから、やつ自体には効かない。だが、身につけた膜には効いていたッ!そう見た!)


「ああああ」

ただ悲痛な声が、水の膜をつけていたやつの声が、ただひたすらに轟く。


誰も次の手を打たない、うてないからだ。


セオリクは全力をすでに出している。


そして水の神術持ちは痛みに打ち震えている。

ガルシドュースはというと、彼は自身の再生を待っていた。


 (……回復が……まだ間に合わない)


 ガルシドュースは拳を握ろうとしたが、指先が動かない。水分が抜けきった身体では、もう滑らかに動かず、まるで古びた縄を引き絞るような音すら感じられる、そんな感覚だったほどに。


 「うぁ……あ……ああアアアアアアア……」

溺れたかのような喉から出るような声。


やつは体中、目に、口に、鼻にとあらゆる場からブクブクと泡立ち、まるで沸騰でもしたかのようになっては、水の中で再構成されていく。

正確的には水で体を覆う...

(何!?水に覆うわれた場所が治り始めている!?)


 「人は水から生まれしもの、水は万物が源にして不老が霊薬...」


「顕現しろ!我が力!」

「ビル・ヒラゴ・アッガ=マウグ!」


「痛ッ...何を...なぜ...」

(痛い、頭痛だ、記憶だ。)

ジュグ=ガへべスが言う言葉の意味、それは。

海星と海老でぶっ潰せ、父よ!


「これは..」

(これは、この痛み...まただ...俺はなぜか知っている

「なっ!」


バーン


外からの痛さだ。

だがそれよりも内側が痛む。頭の奥が痛い。

記憶が目覚めるたびの痛みだった。

(知っている!この言葉を。いや俺じゃない。俺の記憶たちだ。エアルダ語だ! まずい。!)


 白い世界の光景が視野を塞いだ。


違うこれは、水だ、大粒の水滴たちだ。


塔の中の空気が急速に湿っていた、もはや湿りすぎて、雨が降っているようだ。


天井しかのこの空間に、雨雲が湧いている。

 そしてそこから、しとしとと絶え間なく落ちてくる大粒の雨


 「ああああああ目がぁ!」


視界が歪む。水で光が乱れる。目が、チカチカと刺されたように痛む。


全身が、虹色に反射を放つ水の膜に包まれていた。

まるで水母のように発光し、輪郭が揺らめくそれは、見る者全ての目を混乱させてくる。


「あっつ。」

左に下がるガルシドュース


「さっむ。」

それだけじゃない、熱い。

しかも見渡すとチカチカする、光に慣れつつあるも、まだチカチカする。

どうやら目がやられただけじゃない、そんなことに気がつくと。

そうか、光が、反射した光が当たる場所を変えて、いる。場所によって寒い、熱い。(これは一体...なんで神術で..ここまで遠い距離なら、いくら神術を使えない今でも、抵抗できないはずは...)

気がつく。やつは光で気圧を変えていた。

水気そのものを変化させたわけではない。

しかし。

「痛い!ああああ!」

ガルシドュースは猛烈な痛みに打ち震える。


 「……ああ、思い出してきた。俺は、ジュグ=ガへべス。」


「目がぁ!目がぁ!」

(痛い痛い、神術の残り滓はもうほとんどない、この神術で作られた雨にあたれば当たるほど削られるぅぅぅう!)

正確には、この雨は神術そのもの産物ではない。

しかし神術に関係してできたため、その力を少しだけでも秘めていれば、超常かつ脅威的だ。脅迫的にある。

擬似的な神術と呼ぶべきだろうか。


「うあああ」ザザザザ

「うるさい。」

ガルシドュースの声が大粒の雨の中に響く。ジュグ=ガへべスをなぜかイラつかせる。


元々うるさいこの場をさらにうるさくしたからか。

しかし仕方のないことではあった。

神術がないものにとって、たとえほんのちょっぴりの神術でも、触れるのは死ぬことを確実に意味する。


「ちくしょーし、しし、しんじゅ、つはつかわんぞ!」


「ああ、うるさいその声もすぐに、すぐに、この暴風雨の中で揉み消してくれる。」

土砂降りの雨が塔の内をぼろぼろに切り崩していく。

神術の力を持たない存在が神術にあたれば、死ぬ、滅ぶ。

そんな事実を体現したような光景。


ズルズルズル……バキィ!


ガルシドュースの背筋が浮き出る。血管が盛り上がる。

急激に体液が作られる。

しかし汗が一滴も出ない。ただ血液が逆流し、皮膚の裏に熱が溜まりだして、真紅に変わる皮膚。


ぶちっ、ぶちぶち……ッ!


そこからさらに音がたち、皮膚が内側から押し返されるように張りつめた筋肉に押されて、皮膚が細かく裂け、表面が盛り上がり始めた。

同時に再生も高速で行われる。

 それはまるで、鳥の足の皮や蜥蜴などの皮膚のような、ざらついた表皮。

均一ではない。ところどころ破れ、瘡蓋だらけの皮膚が下から噴き出してくるようだ。

元々赤い皮膚と合わせるとまるで鱗に覆うわれたような、龍の皮膚に見えてくる。


全身の皮膚が激しく隆起し、粒状の荒れた皮が肩、腕、背中、顔にまで拡がる。


「もうきかん!」


ガルシドュースの言葉を聞いてジュグ=ガへべスは思う。

(こいつ、再生で無理矢理にも受けるつもりか。)


グロハー! ザン・タロ・グラル!


よほー! 雨よ、天から降り注げ!



(またか、技名も言わずに...何がくる!?それでどこに祈っているんだ。)


瞬間、空気が縒れた。

 空中にぽつり、ぽつりと浮かぶ水滴が現れる。


したからガルシドュースの方に向かってくる。

神術で出来たそれは雨と似ていたとしても雨ではない。故に低い、こんな低い空中でもできる。

そして、高い位置にいて、熱くなっているガルシドュースの気圧は周りと微かに違っていた。

それだけで充分であった。

あとはジュグ=ガへべスの神術次第。

冷たい雨を吹かせれば、気流が生じて、雨が空に降り注がれる。


狙うは一点、もっとも高く、もっとも血流が流れる臓器があるガルシドュースの上半身。特に脳へと。

故に水滴は、呼吸をする口や鼻へと向かう、高速に向かう。


 「はやッ!」

ここで、ガルシドュースの身体能力向上が裏目にでていた。

シューん 空を引き裂く音がただの水、それも水滴ほどの大きさのものから出る。それの速度はとにかく速い!

速すぎる。

なぜなら彼、ガルシドュースは大きく息をして、周りの湿った空気を吸い寄せるようになる上に、上がった体温が気圧を変えて、さらに体内でも空気が温められると言う最悪な連携。

結果繰り出されるは荒まじい気圧の差で、水滴を急速にする!


「うぉおお内臓を破裂して溺れじねぇ!」


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