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第38話 回廊

 ガルシドュースが義手を軽く振って火花を散らし、低い声で尋ねる。剣身に絡まる肉がうねる感触に馴染みすら感じた。


 セオリクは兜を軽く叩き、壁に指をつけている。そこでは刻まれたかすかな紋様のようなものがあり、セオリクはそれを指でなぞりながらに答える。


「うむ。我も考えたが、確たる答えはない。だが、思いがこの世で一番早くある。そう聞いたことがある。」


 「と言うと。」


「あれは叔父上が言っていた、思いは時すらも超えていき、やがて他者に。」


 「いた頭の中に雷があって、それで最速のはずだが...いやなんでもない。」

(また変な知識が...)


「それで、私は思ったんだ、時を超えるもの、それは…時間と空間を操れないといけない。偽物の我らが現れるのも、この場所が過去や未来を歪めている証拠かもしれん。」


「歪めてる、ねえ…。思いと関係あった?

まあいい。じゃあ、どっかでその歪みを直す鍵か何かがあるだろ?そろそろ無限に湧いてくるあれども解決したい。」


そう言ってガルシドュースもセオリクを真似たか、義手で壁を叩く。

タッタッと反響が返ってくるから、長い道が続きていることがわかる。

きっと通路の奥に何か未知のものが待っているんだ。

「ならば、手がかりを探すしかあるまい。壁や床の紋様…何か見落としているものがあるはずだ。記憶を溜め込む水晶玉すらもありえるかもしれん。」


 セオリクとガルシドュース床に散らばる瓦礫を軽く蹴って調べる。そこには、血や肉の残骸に混じって、かすかに光る破片が転がっていた。

「おい、セオリク! これ、なんだ?」

ガルシドュースがしゃがみ込み、義手でその破片を拾い上げる。掌サイズの金属片で、表面には波のような紋様が刻まれている。触れると、義手の血管が微かに反応し、熱を帯びた。


 「水を使ってたあれ...なんだっけ。」


「かの英雄ガへベスが最後に首を引き裂き、取り出した石に近しくあるではないか。」


「血肉の中...全員これが体に入ってるのか?」


セオリクも破片をに顔を近づいては、兜の隙間からじっと観察する。


「よし、義手に入れて見る。」

ガルシドュースは破片を義手の中ににしまい、義手を握り直し、燃やす。


燃えてから時間を費やして得られるのは...



 「何もなかったね...」



気まずそうな顔をして二人は再び進む。

「もうここに一生暮らすことになるんじゃないか。」

なんて愚痴りながらも。注意深く、壁や床のあらゆるところ、目を張って模様やら何やらの異常を観察しながら歩みを進めていた。


静かな通路だ。


 「....静かだな。」

静かさを紛らわすようにガルシドュースが義手を拳にして、自身の掌に叩きつけて、火花が散る。


 セオリクもその音が兜まで響いたか、兜を外して壁に手を乗せていく。そこで体の重心を寄せては少し休んだ。


 「大丈夫か。」


ガルシドュースは心配そうにセオリクを見


「ああ...」


「長いなこの塔、この階。」

なんて愚痴りながらも。注意深く、周囲に目を張っていく。



静かな通路だ。


 (おかしい!見覚えがあるぞ!どこだ!?まさかずっと同じ場所を繰り返して歩いているのか!?)


「セオリク!」


 話を聞いてと言わんばかりにセオリクの名を叫ぶ。

セオリクは考え込んでいるようで顎を撫で回していた。兜越しだが。

「確かに、ではガルシドュースよ、貴公の腕力を持って、より見える印をつけてくれないか。」


 そう言って二人は歩き出す。


静かな通路だ。


 「印がない!けど見ろ!あの壁の紋様!見覚えあるぞ!」


「この回廊...なんたることに。」

 「やっぱりセオリクも気づいていたか。回廊で回り続けていることに。」


 セオリクが頷き、ふむと言う。

ガルシドュースは追うように話す

「以前にもこんなことはあった。光の時だ。感覚があって、どうしても違う場所に行ってしまうことに。」


(だが俺たちはそうなっているのかまた)


「これは危ういかもしれぬ。」


「いや、機会だ、俺たちすらも繰り返しをされるって言うことは逆に敵共のあれに近づいたんだ。」


 ガルシドュースは笑った。

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