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第43話 騎士物語・壹 舞踊会

岩肌の荒野を抜けると、空は急激に暗転した。

 薄明の揺らぎは消え失せ、頭上に広がるのは渦を巻く漆黒の雲。

 そこから垂れ落ちる光の筋は稲妻にも似ていたが、どれも色は赤黒く、触れた大地を腐食させていた。


 「……ついに来たかって感じで〜さぁあれさ、ドルザ語にしては珍しいよね、組み合わせじゃなくて変化するって、ガルバゴウグ。元からあるバディリダとかいう貝殻にゴウグ合わせたやつじゃなくてさ。」



 「うん、間違いない。おかしいぞ。しかしここが魔女の座す場所だ。醜くあるそれは、きっと手下も奇々怪怪にしている。」


呑気な話題ではあったが、この二人。

とてつもない殺意と戦慄をもたらしてくる感覚があった。

きっと決意ができている者たちであろう。


 前方に、塔がそびえていた。

「え?塔の中に塔?この広すぎだろ。」

ただし、三日前ほどに外で見たこの塔とは異質のものだ。

 ねじれ、反転し、上下左右の区別もなく、まるで夢がそのまま物質化したかのような巨塔。

「浮遊しているぞ!」

 漆黒の表面には眼球のような模様が無数に浮かび、どれもこちらを見ていた。

(あ、ここは同じなんだな、大体。生物とか目玉とか...気持ち悪い。)

ガルシドュースは塔の不気味な様相に不快感を示すのであった。


 「視線を逸らすなよ、セオリク、注意するんだぞセオリク。」

 「わかっている。だが、これは――」

 「そう、いわば最後の砦だ。塔の構造や大きさからすると、天を貫くほど伸びているように見えるこれ一体だけで十分だ。そうだろう、これ以上入らないはずだし。見れば見るほど、心を食われる気味悪さでどうせ魔女の巣窟にして防壁だ!チクショ!行くぞ!」




 二人が歩踏み出すと、いく先々にどんどんと大地が軋み、空気が震えたことが顕になる。

 塔の根元から影がにじみ出し、獣とも人ともつかぬ黒きシルエットが、次々と形を得て襲いかかってくる。


 「来るぞッ!」

 ガルシドュースが両腕を広げ、炎脈を奔らせる。

 だが今回はただ焼き払うのではない。

 炎は壁となり、弧を描いてセオリクを包み込むように護った。もはや火を吹くだけのガルシドュースではない。火を操るというべきか。その力はいよいよ超常の領域に到達し始める。


 「セオリク、お前は先に行け!」

 「馬鹿を言うな! 一人でなど――」

 「違う。これはお前でなければ辿り着けない。お前が、魔女を、こんば場所を断つ唯一の楔なんだ!そもそもこの方向って魔女の向こう側だから逃げろってわけないだろ。」

(断つと言ってもあと一つあるはずだが...いやだなぁ...)



 叫びと同時に、魔女の居場所と勝手に目の前の塔をそう決めた。この場所、魔女がいる。

そんな場所のである正面にいるガルシドュースは、群がるように襲いかかる塔の攻撃を自らに引き寄せ、灼炎を放った。

(外と同じだ、つまらない、しかしよく効く。何層にもなっている食い物がうまいように、何度でも効いてくる。)


 敵の群れが咆哮を上げて溶け崩れる。

 だが数は尽きぬ。

数は強い。

今までの戦闘でガルシドュースは分かっていた。

何度も出会したからだ。定番と化したんじゃないのかというほどに。

しかし定番を超えられるようなものはなかなかといない。


 セオリクは隙を見計らって出るが、一瞬だけ彼を振り返り――短剣を握る手に力を込めた。

出るべき時の確認に、これは。

 「……必ず戻る。魔女を断ち、お前と共に!」

覚悟はすでに決まっていた。

剣先に銀糸を迸らせ、ねじれた塔の結界へと突き進む。


 塔の表面に触れた瞬間、空間が裂け、光と闇の狭間に吸い込まれていく。

(何度も眩しい...これは...)

 視界は乱れ、耳には声とも悲鳴ともつかぬ囁きが押し寄せた。


 ようやく来たのね。

 勇気ある子よ。

 けれど、おまえの力では足りない。

足らない、満ちない。


「──セクリオ。また一人、それを連れてきたのね?」


 幾千もの声が絡まり、セオリクの心を抉る。

 しかし彼は叫んだ。


 「足りぬならば……繋げるがいい! 私には!俺には仲間がいる!ガルシドュースが――!」


「セクリオ、あなた、まだ信じているのね。」


 剣が強く震え、銀の糸が闇を切り裂く。

「私、私は!私は...わたしは....我は強い!強き騎士この人ぞ!」

 その言葉が先に現れたのは、玉座、か。


 そして、そこに座す一人の影。


 女。

 長い黒髪が空間と同化したほどに見える。あたりが暗くあるか?彼女が暗くいるのか?わからない。眼は深紅に輝いていた。

 纏う衣は裂け、無数の図形がある、陣か?紋章か?何かが彼女の辺りで浮遊している。

浮かぶのは一つだけではない。

 口元にも浮かぶが、愉悦の笑み。


 「ようこそ、我が客人。

  ───私は《──》。

   さあ、汝の勇を見せてみよ。」


よく見るとまるで虚空の頂に立っていた。

騎士セオリクの力がもたらす銀の糸すらも薄く見えて、輝きを失っているように。

 彼女が夜そのものを従え、深紅の双眸は燃ゆる星をも沈黙させている。

「ぐっ..!」

大きくある風圧。

暴風のような勢いを伴うその中心に女が一人。

 裂けた衣の隙間からは白瓷がごとき肌を覗かせ、そこには脈打つ文様があり、読めなくあるが、見るもの全てに太古の気配を感じさせる。


全てが彼女を護るかのように巡り、同時に世界を縛るかのように回転していた。

 姿を見る者はきっとみんな、息を呑んで、そして思うだろう。

 ――この貌を、誰もが讃え、羨望するだろう。

こんな薄汚れて歪んだ姿に至っても。なんて高貴なる人と。

そして誰が裏切ったのだ、と。

こんなぼろぼろにされたなんて。


 敵対したとしても彼女を可哀想に思えるだろう。


女は微笑んだ。

 その笑みは優雅で、残酷で、哀しみに濡れていた。

 そして静かに声を放つ。


「望んだのだろう。

 時を越えるようにしたというのに、眠りを破り、この地に立たせたのは──他でもない、おまえたちだ」


  音が甘く、まるで乾燥し切った熱い日差しの下で、清涼な水を飲んだ時の音のように聞こえる。

例えとしてはわかりにくいかもしれないが、とにかく心地よい感じはする。まさに甘露だ。

しかし長く聞けばそれは凍てついた刃のように冷たく耳を刺す。

 慈愛を感じて、祝福を与えるような、この存在、正体も不明な誰かの声を、今や破滅の調べとして聴くようであった。


「見よ、わたしはまだ笑える。

 たとえ城が灰となり、名も歌も風に散ろうとも……この笑みだけは消えぬ」


しかしセオリクにとってはどうでも良かった。

魔女は魔女だ

可哀想などとは思うまい。

「汝等!ぎょとっしては恐ろしい大きな目玉をしている!やはりそれだ!」

彼はガルシドュースと異なる形の狂人であった。

自分が信じたものこそ真実と必ず思う人であった。

「おもしろい子ね。」

 愉悦の笑みが、その口元に宿る。

 それは嘲りか、惜別か。

 誰にも判じ得ぬ。ただ威圧だけが、空を裂き、大地を沈黙させた。

男、セオリク、聞いて憤義に満ちる。

(なんて魔女だ。魔女の笑いは人々の耳を腐らせる!やはり、万死に相当しようぞ。)


しかし曲がりなりにもそれは嘘とは言えない。

 女は、夜の奥から招かれた災厄であった。

危険である。同時に人を誘うか、誘うかのように危険で甘く存在する。

 けれども、その足取りの端々に、誰もが気づく。

 かつてこの世界は、彼女に冠を戴かせ、宝石を飾り、未来を託したことを。

 そうして未来を、踏みにじったのは他ならぬ人間であったことを。


彼女は再び声を落とした。


「だから――終わりとなろう。

 約束を裏切ったすべてに。

 愛を忘れたすべてに。

私に。」


 女の言葉と共に、セオリクが放つ小さな光は砕け、闇は歓喜のように蠢いたか、あたりを虚空に包んでいく。

 女の存在そのものが、終末が鐘の音の始まりであった。


 異界の空間が鳴動し、最終決戦の舞台が開かれた。


またいきなりの攻撃が来たで回避をするも、地面に無様に転んでしまったセオリクを見て、誰がこれを決戦とするのだろうか。

「よくやったセオリク!」

そうガルシドュースであれば言ってくれるだろう。

しかし、ガルシドュースはただ彼が中に入れたことを嬉しく思うだけで、今では外にいる。

セオリクにはなんの助言も届かなく、ただ彼らが包囲されている。そんな事実がある。もはや何度目だろうか。


 しかしセオリクにとってはなんの関係もなく。

「我!いざ参らんと!」

幻想はいつもに増してもはや狂走になっている。そう思えてしまう。


セオリクは立ち上がる。

 回避で膝の鎧にぶつかって膝に走るのは痛み、痛みはあるが、痛みを押し殺しながら、彼の瞳はただ一点、あの「魔女」に注がれていた。

 愚直な剣では届かぬ。力では決して抗えぬ。だが、捻じ曲がっている剣ならば。どうだ。

「急ぐときこそ、周りをよく見て目的地を探すべし。おい慌てるな...っ走るな!落ちるぞ!?アングダ・ザガイス!おい!!!」

叔父の言葉が突如彼の心に浮かぶ。

幼いことに、言葉を無視して転んでしまった。


 彼は剣を低く構え、唇に笑みを浮かべる。

 「我は知っているぞ。お前の力が巨大ならば、わざわざ言葉など要らぬはずだ。人の耳に届く声を放つのは、弱点の表れだ!」


 女の深紅の眼が僅かに細められる。

 それは怒りか、興味か。だが確かに、反応はあった。


「いくら闇を用いても我が目が持つ輝きは曇ることもない!」

「変ね、おまえ、嫌いじゃない。」


 セオリクは畳み掛ける。

 「この場の幻影、塔のねじれ、目玉の紋様……すべては見る者の心に依存している。ならば我が正直さであればこそ、! 誰も理解せぬ幻想風情で人の心を凌駕しては、我こそ先と、虚言を撃ち...」

突如と頭が痛く、首を下に向けてある、なぜか戻そうとして手でさせるも、力なくがくりとへたれていく...倒れ込んでは起き上がれない。


 彼がわざと足をもつれさせ、転んだ力でこれをして、地に掌をついたのか?

 体表で光がかすかに乱れる。




 愚直に見えた彼が、実は狙いすました撹乱であったか?またはこんな時にふと考えて反撃か?

「ふふふ、フフ。」

 女は愉悦の笑みを深める。顔に現れるだけでなく、声も出ている。

 「なるほど……おまえはただの人ではないではない、神が武器にした戦士、というわけね。」

 甘く、同時に冷ややかな声。

「うっとしい。神器も操れる人が子、おまえごときに何ができる!」


返事はない。

 セオリクから血が滲んでいる。



 地に崩れ落ちたセオリクの耳に、もはや魔女の声は届かない。

 代わりに、土を打つ雨の音が甦る。

(私は...この懐かしい感覚は...)

私は幼かった。

幼く、無謀で、恐れ知らずだった。

意識が闇に呑まれかける経験だってしたことはある。

 鼻先に伝わってくるのは血の匂いでもない気がした、転んで大怪我したが、血が出ているのにどれぐらいの傷すらも知らないし、覚えがはっきりしているのは匂いだけだった。

あれは。

 ――草の匂いだ。


 まだ小さかったころ。

 屋敷から離れた丘で、木の枝を剣に見立てて振り回していた。叔父上に連れてってもらえたことが何よりも嬉しいかった。


「我こそは勇者セオリク! 巨竜を斬り伏せる者なり!」


 そなん調子叫んで、ただ遊んでいただけだった。

 横で羊飼いの子らが笑い転げ、誰かは石を怪物に見立てて倒れてみせた。

悪い子達ではなかったな。

たしか、使用人の子供たちだったな。

執事の子も最初は強がっていたんだ。


 最後には。


 ただの遊びを楽しんでいた。血も涙もない。


 (でも、きっと僕こそ、英雄になるんだ。)

 自分は、きっと、いつか必ず本当の英雄になる。

 剣を振るう者として、人々を救う。


 子どもの真似事だった。

誰も真面目に見てくれない。いくら彼と仲よくてもだ。

なんで、いい生活をしているのに旅に出るんだ、おかしいし。

「むぅ...大人になればわかるはずだ。」

 だがそれが、彼の根幹となった。


 やがてもう少し大きくなると、騎士小説を読み耽った。

 英雄たちが悪を討ち、民を守る物語。

 セオリクはすぐに語り口まで真似するようになった。

長い名前まで作った。

「英雄の名を受け継がん!我が父祖の名もこの限り!行くぞ!我、ガレヌ・フォデ・グリオス・セクリオ・ド・ラングシェ。」

 「我は」「汝」「しかして」……そんな言葉を覚え、口に出すたびに、自分が物語の騎士に近づいたような気がした。


 本当は、仲間と話す時はもっと普通だった。

 冗談を言って、笑って、からかわれて。

 だが剣を持ち、物語を語る時だけは自分を騎士として演じた。

 演じているうちに、それは次第に本物になっていった。

趣味が趣味が高じてというべきだろうか、馬に乗っては鎧すらも身につけて、なぁなぁではあるが、ほかの貴族がお嬢様にも、彼は騎士の称号を与えられた。

子爵の側室で、兄弟でも一番したな彼にちょうどういい身分ではあったのか、父親からも何も言われなかった。

地位とかはもらえないが、父はセオリクには優しかった。

 舞踊会だってよく連れてもらえたし、可愛がりもしてくれた。

そう、舞踊会だ。



 煌めく燭台が百も二百も並び、香料と楽の調べが大広間を満たしていた。

 あの夜、セオリクはまだ十三にも満たぬ年だった。

平民と違って貴族が子に取れば、十八までは甘えて当然の歳だった。

 子爵家の末子であり、側室の子に過ぎぬ彼であれば、良き存在になる圧力もなく、毎日楽しく過ごしていた。


 羊の群れに紛れても怒られはしないし、舞踊会でも礼儀を格別に求められるわけでもない。


結果。


「うううう、これ...やだぁ...」


 豪奢な衣に袖を通されても、動きはぎこちない。

 他の令息たちのように舞を覚えているわけでもない。

 ひとり、広間の隅に立ち尽くすしかなかった。


 そのとき。

 人の輪が割れて、ひとりの少女が現れた。


 ━━━父と同じ子爵たる、バデル・ガオウス公の娘。

(...完全に名前忘れていたぁ...名乗り上げで子爵と言っても意味なかったな。)


 地に這う姿と対照的に、セオリクの頭の中は実に愉快な思い出に溢れていた。


美しい少女だ、彼女は困ったセオリクに話かけてくれた。

「ご機嫌よ。」

 薔薇を散らしたような赤い衣を纏い、年若いながらも堂々とした佇まい。

 目が合った瞬間、セオリクは息を呑んだ。


 「あなた、踊らないの?」

(ずいぶんと距離感が近い子ではあったな..)

 「お、踊れるものか!我は…….まだ子供だし、こんな……」

 「ふふ。じゃあ、私の踊りを見てくれないかしら?

 「...おお、しかし我は踊れないぞ...」


「勇者の真似は得意なのに?」


 からかうように笑うを伴う声なのに、セオリク悪い気はしない。

しかし恥ずかしさでやはり顔を赤くした。

 そんなセオリクに彼女は、真剣な瞳で続けた。


 「でもね、私、あなたみたいに堂々と遊べる人を見たことがないの。……ここにいるみんな、きっと誰かの目ばかり気にしているわ。」


 その一言が、幼い彼の胸を熱くした。

 舞も礼儀も学んでいない。━━騎士小説を真似して走り回る自分を、笑わずに見てくれる人がいる。


 彼女は軽く腰を折り、手を差し出した。

 「ほら、勇者さま。舞は剣よりも軽いものよ。ひとつ、試してみて?」


 人々の視線が集まるなか、セオリクは震える手でその手を取った。

 よろめき、転びそうになり、広間に微かな失笑がこぼれる。

ほかの貴族の幼子だ、子供ゆえにさすがにこれには耐えられなかったか。

(くっ何が貴族だ...こんなことも耐えられないの。笑われ...)

 だが少女は笑みを崩さず、囁いた。


 「大丈夫。英雄の物語は、いつだって最初は不格好なものだから、ね。」


 その言葉を、セオリクは今でも覚えている。

 彼が後に剣を取る決意を固めたとき、その夜の光景は必ず脳裏に蘇るのだった。


(だから君に、頼んだのだろうか、ビオレイラ...)


 日がたち、また久々にビオレイラに会えた。

彼女の父である、バデル・ガオウス殿が異端どもの話で来てくれたからだ。



 可憐な姿で素晴らしい振る舞いに、美麗なる衣を纏い、大勢の従者に護られて、彼女はセオリクがよく遊ぶ、庭先や牧場の方に抜け出していた。

 使用人たちや執事の子らと混じって遊ぶセオリクを見て、最初は笑っていただけだった。

久々の再会なのに。

「おーいビオレイラじゃないか、おーーーい。」

やがてセオリクも気がつく。

そうして、見ていただけの彼女ビオレイラは近づいてくる。彼女はみていた。

彼が「我こそは英雄セオリクその人ぞ!」と叫び、転んで膝を擦りむきながらも何度も立ち上がるのを見てた。

彼女が、声を返した。

「ご機嫌よ。ふふふ、相変わらずね。セオリク。」

 会話は弾む


 「……あなた、ほんとうに勇者になれると信じているのね」

 「無論だ!我は剣をもって魔を断つ者ぞ!」

 「ふふ、あなた、変な子ね。でも……嫌いじゃない。」


 その日から、彼女は時折セオリクの騎士遊戯に付き合うようになった。

 ときにお姫様役、ときに賢者役。

 セオリクが高らかに名乗りを上げると、彼女は真面目な顔をして拍手を送った。

騎士物語だって聞かされた。


 ――だが、彼女は本気で信じていたわけではない。

セオリクは全て実話と思っているが、ビオレイラはただ物語として楽しんでいた。

 ただ、セオリクの真剣さが愛おしく、また幼いながらに羨ましく感じたのだ。彼の持つ自由さか、放浪さか、そんなものが羨ましく思える。


 後日、彼女が父、バデル・ガオウス殿の城砦へと戻るとき、別れ際にこう囁いた。

 「セオリク、あなたが本当に騎士になるのなら……その時は、私にまた名乗ってちょうだい。」


 名乗り、名乗り、名乗りか。

(嗚呼、騎士は負けない。)

 「八も正道が三の祈誓に誓い」


 「我、ガレヌ・フォデ・グリオス・セクリオ・ド・ラングシェ!巨悪を討ち滅ぼさんとする!」

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