目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第9話 小さな家

 裁定の結果、グロリハレル伯爵家には多額の罰金と爵位の返上が言い渡された。


 父は何度も、「これは誤解だ」「娘が勝手に」と弁明を試みたが、いずれも記録と誓約書により退けられた。

 伯爵邸と領地は差し押さえとなり、父とレナは、王都郊外の小さな家に移り住むこととなる。


 塀に囲まれたその家はカリヨンが購入した。

 生活に最低限困らぬよう、最低限の支援と使用人を手配してあった。

 父はそこで、かつての「栄光」を独り言で話すだけの日々を送る。聞く者はいない。だが彼自身は満ち足りているようだった。


 レナがどうなったかは、ここでは詳しく語らない。

 禁忌成分をたっぷり含んだ美顔剤を自ら試したレナ……。

 小さな家には、ひとつも鏡がなかった。


 ***


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?