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第258話 大鷲小隊

「ルフレイさん、お久しぶりです! ルフレイさんも招集されたのですか?」


「あぁ。カードの左縁が光ったからなにかと思ったら『招集された』って言われてね。出撃前にはこっちに寄ってくれとのことだったから来たんだけどあっていたかな?」


「えぇ、合っていますよ。ここでは複数のパーティーもしくは単独の冒険者を集めて50人ぐらいのチームを編成してもらいます。相手は強力かつ圧倒的多数ですので、こちらも多数で助け合わねばというわけです。ルフレイさんとイレーナさんは共に特S級ですので好きな人を指名できますが、何かありますか?」


「50人ぐらい、じゃあちょうど付いてきている近衛兵たちと合同でチーム編成していいかな?」


 俺は後ろで待機している近衛兵たちの方を見て言う。

エミリーも人数がいれば問題ないというので、俺とイズン、そして近衛隊でひとチームを組んだ。

他の冒険者たちが自分たちもという目で見てきたが、今回は遠慮させてもらう。


「ではチームの生存確認と、戦果確認の意味も込めてチームに名前をつけていただけますか? 特に指定はございませんので好きに決めてください」


「チーム名……イレーナと2人だったら『エプリコット』だが今回は人数が多いし……そうだ、『大鷲小隊』はどうだろうか?」


「大鷲小隊、なかなかいい名前じゃないか……でしょうか?」


「ロバート、別に無理して敬語にする必要はないよ。でも気に入ってくれたなら『大鷲小隊』でいこう」


「分かりました、『大鷲小隊』ですね。ではこちらのカードを持っていてください」


 俺はチーム名が記されたカードをエミリーから受け取る。

裏を見ると、どの魔物をどれだけ倒したかを記録するための欄があった。

これで戦果を記録して確認するんだな。


「そうだ。他国の元首たちは俺と同じく出撃しているのかい?」


「えぇとですね……ヴェルデンブラント王オスカー様、ルクスタント女王代理のカール様、イーデ獣王国国王のアウグルトス様、ミトフェーラ王ベアトリーチェ様は皆冒険者と軍を従えて出撃される予定です。ゼーブリック王オラニア様は高齢のため出陣はされず、またフリーデン連立王朝の動向は不明です」


「おぉ、意外と全員出てきているのか。じゃあ俺も頑張らないとな」


「絶対に死なないでくださいね。時には逃げることも大事ですよ」


「分かっているさ。では行ってくる」


 俺はギルドを出ようとするが、近衛兵たちが出撃前に準備を整えたいと言ってきた。

そのためギルドの一室を借り受け、彼らの装備一式を取り出すことにした。

彼らは俺と同じプロイセン流の軍服に着替えることを望み、また同じくピッケルハウベを被った。


「ふふ、これでお揃いだな司令」


「あぁ。だがロバート、アメリカ兵の君がドイツ軍の軍服を着るのは変な感じがするなぁ」


「まぁいいじゃないか。迷彩服より派手でいかにも『近衛隊』って感じだろう?」


「まぁそうだがな。さぁ、イズンを待たせていることだしさっさと行こうか」


 俺たちは部屋を出てイズンと合流し、ギルドの外に出る。

すると空に大きな音を響かせながら、第一〇〇七航空隊所属のC-5C2機が王都郊外の飛行場へと降りていった。

先行して移動していた俺たちに武器を提供しに来たのだ。


 俺たちは飛行場の方へと移動していくと、既に必要な武器は荷下ろしされていた。

用意されたのはM2ブラッドレー5両並びにストライカーMGS3両、ストライカーMC4両だ。

それぞれオリーブドラフに再塗装されており、車体横には白で『UN』と書かれている。


「司令、言われていたものは全て調達してきました」


「ありがとうベルント。そう言えば軍隊は結局動員するのかい? しないのかい?」


「先ほど急遽開かれた国連総会において、軍隊の派遣が了承されました。ただ他国は先の戦争の影響とギルド連合軍への徴収の関係で兵が集められず、軍の派遣は行わないとのことです。ただミトフェーラに関しては現地の『フロリアン・ガイエル』『ヴィーキング』共に動き始めたとのことです」


 武装SSは……ロンメル大将の指揮下か。

じゃあミトフェーラ方面の敵魔物の侵攻は食い止められるだろう。

軍が派遣できるのであれば他の方面も抑えられるかな。


「にしても最初から軍の派遣を要請すればいいのに、なぜギルド側はそうしなかったんでしょうね?」


「まぁ魔物討伐を国家の軍隊が行ってしまったらギルドとしてメンツが立たないのだろう。それに今回が初めての発動である以上上手くいかないところもあるんだろうな」


「そういうものですかねぇ。そう言えば、このスタンピードの発生地点あたりの写真があるのですが……」


 ベルントはそう言って1枚の写真を取り出して俺に見せる。

その写真の中央には何やら真っ黒な霧が存在し、それから逃げるように周りを魔物の群れが駆け回っているようだ。

魔物が本来は出てこないはずの高ランクのものであるなど不可思議な事が起こっているが、その答えはこの霧の中にあるのかもしれない。


「あと、グデーリアン上級大将から伝言です。『黒い霧は徐々に拡大しており、内部に得体のしれない魔物が潜んでいると考えられます。気をつけてください。私も派遣準備が整い次第、戦車部隊を率いてそちらに向かいます』とのことです」


「心配性だなぁ。でも戦車隊が来ればもはや怖いものはなしだな」


「その時には私もドイツ重戦車師団を率いてかけつけますよ。それとこちらは工廠のトマス中佐からの贈り物です」


「なんだこれは……あぁ、国旗と軍旗か! しかも軍旗が双頭の鷲とは、この小隊にぴったりだな。トマスにありがとうと伝えておいておくれ」


 その後俺たちは、イレーネ島へと帰るC-5Cを見送った。

見送りが終わった後俺たちはそれぞれの車両へと乗り移った。

俺とイズンの登場するM2ブラッドレーには、トマスから送られた国旗と軍旗が掲げられた。


「では行こうか。前線へと」


 車列を組んだ後、大鷲小隊は敵魔物の撃滅に向けて動き始める。


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