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第231話 敵砲台の航空偵察を敢行せよ!

『イカロス』砲台を破壊することが最優先であると考えたグデーリアン上級大将らは、早速作戦立案に取り掛かった。

だがその上で最大の障害となるのが、王都周辺に張り巡らされたジェリコの壁であった。

以前MOPで多少の破壊には成功しているが、まだ殆どの部分が無傷のまま健在であった。


「ジェリコの壁の破壊にあたってはこの前と同じく地中貫通爆弾を使用することが好ましいと思われるが……だがあのMOPですらあれだけの破壊に留まっているのだ。一体全て破壊し切るまでにどれだけの時間がかかることやら」


「真面目に破壊しようとなるとそうなるな。だがたとえ崩れることのない『ジェリコの壁』であろうと、それを制御するための装置がどこかにはあるはずだ。そこをピンポイントで叩けば……」


「壁は崩れる……か」


「その通り。決して崩れぬ壁などあるはずがないからな」


 そうして壁の制御部位を破壊することには決定したものの、肝心の制御装置がどこにあるのかは不明であった。

そこで彼らは早速自由ミトフェーラにいるベアトリーチェのもとに連絡を取って制御装置の在処を聞いてみることにした。

ただベアトリーチェと直接対話する手段を持っていないので、彼らはまずそちらに駐在しているロンメル大将に無線を送った。


『こちらロンメル。何か用で?』


「あぁ。悪いんだがベアトリーチェ陛下からあの『ジェリコの壁』の制御装置の位置を探り出してほしいんだ」


『ジェリコの壁の制御装置の位置だな? 分かった。聞いてみることにしよう』


「悪い。頼んだぞ」


 ロンメル大将は無線を切り、ベアトリーチェのもとへと出かける支度を整えた。

その後無事面会することができたロンメル大将は、ベアトリーチェから制御装置の位置を聞き出すことに成功した。

それとともにグデーリアン上級大将から送られてきていた『イカロス』砲台についてもそれとなく質問してみたが、知らないという解答が返ってきて砲台に関する情報を得ることはできなかった。





「……さて、これが制御装置の位置情報か」


 ロンメル大将からの情報をもとに制御装置の位置情報を書き記した地図をグデーリアン上級大将らは眺める。

それによると制御装置は山の中や洞窟など巧妙な位置に隠されており、終末誘導無しでの破壊は困難であると判断された。

だがジェリコの壁が立ちふさがっているせいで、制御装置への接近は不可能であった。


「終末誘導にはレーザー目標指示装置による誘導が最適だろう。だが壁の中に入ることができない以上どうやってレーザーを照射すればいいんだ?」


「そういえばこの前MOPが開けた穴があっただろう? あそこからなら小さな機体であれば壁の内部に侵入することができるはずだ」


「だが針の穴を通すようなレベルの操縦が必要になるのでは?」


「それは問題ないだろう。信濃、ミッドウェイ搭載の航空隊であれば上手くやってくれるはずだ。それに壁内に侵入出るのであれば同時に砲本体の攻撃も可能だな……いや、通常の航空爆弾では破壊は難しいか」


 兎にも角にも攻撃に出る以外には何もできないので、早速針の穴を通すような侵入での制御装置、イカロス砲台の同時攻撃計画の立案が開始された。

それと同時に、ミッドウェイの工兵部隊は緊急で天山へのレーダー目標指示装置の搭載を開始した。

巨砲破壊に向けた準備は着々と進む。





 同時刻、工廠で最終艤装中であったXDWP-02リリスの増加試作機のXDWP-02イヴが、イカロス砲台破壊に向けて急遽ロールアウトした。

リリスで見つかった『恋愛感情』をノックアウトされており、代わりに『忠誠心』へと変更されている。

機体制御に感情をいれると人間のような判断が可能になるが、一方で自我を持ってしまうため扱いには慎重にならねばいけない。


 機体はアダムとリリスが漆黒で塗装されていたのに対し、イヴはダークグレーに塗装されていた。

これはイレーネ島に駐留している航空機に対して行われている標準的塗装であり、『ファントムグレー』と工廠が呼んでいる色合いになっている。

確かに異世界から来た軍隊なので『幻影』も頷けるが……


 またXDWP-02シリーズはこのイヴで生産が打ち切られ、それ以降に製造が行われていたものに関しては計画凍結、製造中の機体は保管庫にてモスボール状態で保存されることになる。

これにはトマスが、リリスが命令を無視してノルン島へと飛行していってしまったことに一種の恐怖を覚えたことが関係していた。


 リリス自体には反抗する意思はないため現状問題はないと判断されているが、今後勝手に動くAIがでてきても困るため、計画凍結へと至った。

イヴに関しても人格を撤廃しての運用試験が行われたが、戦術AI『ヴァイスハイト』が正常に動作しなかったため仕方がなく『忠誠心』がインストールされた。


『管制塔、離陸許可を求めます』


「こちら管制塔、離陸を許可する。司令によろしく」


『了解。イヴ、離陸いたします』


 イヴも工廠部の手に負えなくなっては困るため、リリスのようにノルン島へと送られることになった。

機体下部にはリリスと同じ用に改造型X-36が3機搭載され、リリスと同様の戦闘能力を有している。

これによりノルン島飛行隊は2機のXDWP-02によって盤石の防空体制がしかれている。


 また同時に、ルーデル大将の乗り込んだアダムもイヴが無事にノルン島へと到着できるように、またイヴがなにか変な行動を起こさないか監視するためにイヴに続いて離陸した。

だがその心配は杞憂に終わり、大した問題もないままノルン島へと到着した。


「司令、なんだか大変なことになってきましたね」


「全くだ。まさかこんなタイミングでそんな物が出てくるとはね」


「トマスも言っていましたが、やはり古代文明の遺物なのでしょうか?」


「それはなんとも言えないな。ただミトフェーラ魔王国にそんな物が作れるとは思えないし、その線が高いだろうな」


 その後ノルン島を飛び立ったルーデル大将とアダムはジェリコの壁越しにイカロス砲台を偵察、まだ砲台が稼働していないことを再確認した。

それに加えて砲台を中心として円周上に見慣れない構造物が生えてきており、見た目から砲台へのエネルギー供給用の発電施設ではないかと推測された。

そのため新たに発電施設も破壊目標になり、それを踏まえたうえでの作戦立案がグデーリアン上級大将らによってなされることとなる。


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