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第218話 味方を捜索せよ!

「なに、B-29が撃墜されただって!?」


「はい、敵の新兵器によって1機が撃墜されたとのことです」


「他の機は無事なのか?」


「えぇ。それ以外の機は全て脱出に成功したようです」


 ノルン島、アスリート飛行場に信じがたい報告が飛び込んできた。

それは爆撃任務にあたっていたB-29が撃墜されたという報告であった。

これが初めてのイレーネ島帝国軍の損害であった。


「爆撃機隊、帰還します!」


 滑走路脇では、作業員が帰って来るB-29を迎え入れる準備をしていた。

俺も帰って来るB-29を出迎えるために滑走路へと出る。

帰ってきたB-29はその巨体を揺らしながら、ゆっくりと順番に着陸した。


「司令、ただいま帰還しました」


「よく帰還した……で、撃墜された機はどうなっているか分かるか?」


「はい。まず撃墜されたのは第一陣として最左翼を飛んでいた機体で、左翼に敵のロケット弾らしきものが命中、姿勢を崩して墜落しました。墜落していく機からは3つのパラシュートが開くのが見えましたがそれ以外は……」


「報告ありがとう。少しゆっくり休んでいてくれ」


 報告を終えた搭乗員は、それぞれ自分の宿舎へと帰っていく。

他のものからの報告によると、投下した爆弾は見事飛行場に命中、敵の飛行場に壊滅的なダメージを与えたとのことだ。

だが新兵器が出てきたというのが新たな懸念点として浮かび上がってきた。


 実際に破壊に向かったP-38のパイロットによると、それはロケット弾の発射筒を束ねたものに見えたとのことだ。

実際にB-29を撃破したのもそのロケット弾であるとのことだし、解釈はあっている。

滑走路の上に5台配置され、それぞれは28発のロケット弾の発射筒を搭載しているように見えたとのことだ。


「地対空ロケット弾……これまた厄介な代物が出てきたな。しかもB-29を一撃で撃墜できるだけの威力

のある兵器だし……」


 どこからロケット推進の技術を得たのかは知らないが、開発に成功していることは明らかだ。

今は対空用に使用していたものの、対地用に転用されるといくらの現代歩兵でも厳しいところがあるだろう。

しっかりとした対策を考えねば。


 それも問題だが、今の一番の問題は脱出に成功した乗組員たちの安否だ。

報告によると3つパラシュートが開いたとのことなので、最大で3人が生き残っていることになる。

生き残っているのであればすぐにでも迎えに出向かなければならないな。


 もしも捕まれば拷問されてありったけの情報を吐かそうとされることは明らかだろう。

そうなる前に迅速に、そして安全に生存者を収容しなければならない。

また、墜落した機体を敵側が調査できないように破壊も行わないといけないな。


「通信員、通信員はいるか?」


「はい司令。どのような御用でしょうか」


「もしも無線機も人も生きているのであれば無線で会話ができるはずだ。試してみてくれ」


「分かりました。すぐに試します」


 通信員はそう言って管制塔の中へと入っていった。

十数分後、彼は残念そうな顔で首を横に振りながらこちらへとやってくる。

パラシュートで全員が生き延びていたとすると、やはり無線機が故障しているのか……


「仕方がない。捜索も大事だがその前に墜落したB-29の破壊からだ。どこかに手頃な機体は……」


 もしも敵の対空ロケット弾が大量に配備されているのであれば、低高度で確実に破壊しようとするレシプロ機であれば撃ち落としてくるであろう。

そうなるとジェット機の投入が望ましいが……残念ながら機動部隊は今イーデ獣王国付近の海域に展開していて間に合わない。

とするとこの任務に最も適した機体は――


「XDWP-02しかないか……」


 俺はXDWP-02が駐機されている駐機スペースへと足を運ぶ。

XDWP-02のAIは今はスリープモードなので勝手に動いたりすることはない。

俺が機体に近づいていることを知った整備員が、ラッタルを持ってきてキャノピーの縁にかけてくれた。


 それを使ってキャノピーに上った俺は、システムの作動ボタンを押す。

ボタンを押したと同時に機械の駆動音が響き、ディスプレイが点灯した。

俺は座席に座り、AIに話しかける。


「おはようXDWP-02、良いお目覚めかい?」


『司令に起こしてもらいましたので。あと私はヴァイスハイトとお呼びください』


「そうだったなヴァイスハイト。寝起き早々で悪いんだが仕事を頼みたい」


『司令の頼みでしたら何でもお任せください』


 ディスプレイの映像が変化し、地図とキーボード、それにチャット欄が現れる。

音声入力も可能だが、より確実に情報をインプットするためには手打ちが良い。

俺はキーボードを打ちながら音声入力でもこれまでの経緯を説明する。


「――というわけで魔王国の土地に味方が残されているというのが現状だ」


『なるほど。で、私は何をするべきでしょうか?』


「ヴァイスハイト、君にしてもらいたいのはまずは墜落したB-29の破壊、そして次はB-29の墜落地点の付近の偵察だ。墜落現場付近に生存者が逃げ込めるような村があるかどうか、複数あるのであれば最もどこいそうかを確認してきてくれ」


『了解しました。……作戦の立案終了、ミッションアップデート。これよりXDWP-02離陸準備を開始します。司令は危ないですので地上で見送ってください』


 俺はヴァイスハイトに言われたとおりに機内から脱出し、地上に降り立つ。

レドームを少し撫でたあと、俺はラッタルを外した。

XDWP-02は自らキャノピーを閉め、滑走路に向かってタキシングを開始する。


『システムオールクリア。XDWP-02、テイクオフ』


 XDWP-02はアフターバーナーを全開にして飛行場を飛び立つ。

飛び立ったあと機体は無事にB-29の墜落地点に到着、搭載されているLSDEWを用いてB-29の残骸を徹底的に破壊した。

その後は子機の3機の無人機を射出、4機がかりで捜索を行った後無事に帰投した。


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