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第214話 AIの恋愛感情?

「何だ何だ、一体どんなデカブツが降りてきたんだ」


 XDWP-02たちが着陸した時俺は隣のゾルン島にいたのだが、突如空に響いた轟音に驚いて外に出た。

すると見たことがない機体がノルン島に降りてきているのを見て、俺は驚愕した。

敵の突入か、とも思ったがどうやらそうではないようだ。


「司令、ルーデル大将が到着されたそうです」


「ルーデル大将が? そういえばトマスの実験に付き合っているとか云々カンヌンって言っていたな。あれがその実験機なのか」


「せっかくですし見に行ってみましょう」


 俺は内火艇に乗ってノルン島へと赴いた。

島に上陸した俺は、飛行場に停まってにいるデカくて黒い機体を目にする。

この飛行場はB-29の運用を前提に再整備が行われたのだが、そのB-29の駐機場所になんとか収まるサイズの機体サイズであることにも驚く。


 着陸したXDWP-01のキャノピーが開き、中からルーデル大将が降りてきた。

彼は俺の存在に気がつくと、にこやかに笑いながらこちらへとやってくる。

彼と握手を交わした後、俺は彼に聞いた。


「なんだか楽しそうだけど、この機体はそもそも何なんだ?」


「この機体はXDWP-01、愛称ではアダムと呼ばれています。工廠のトマスが開発した新型戦闘機ですよ」


「新型戦闘機であることは分かるのだが、具体的にどこがすごいんだ?」


「それを聞いてしまいますか。この機の凄さはですね――」


 ルーデル大将が話し始めて30分、彼の語りは一向に終わる兆候が見えなかった。

どうやら彼は機動性やら加速性能、高高度性能、全てに満足しているようだ。

そして搭載されている新兵装があればもっとソ連戦車を破壊できたと残念がっている。


「それでですね――」


「ちょ、ちょっとストップ。この機体の凄さはもう十分わかったよ」


「そうですか。司令にもこの機の素晴らしさが分かってもらえてよかったです。今後はスツーカを降りてこっちを愛機にしますよ」


「それはトマスに許可を取れば構わないと思うが……そういえばあっちの機体からはなんで誰も降りてこないんだ?」


 XDWP-01の駐機スペースの隣に駐機しているXDWP-02。

そこのキャノピーが開くことも誰かがいる気配もないことを俺は不思議に思った。

だがそんな俺にルーデル大将は笑っていった。


「それは司令、あの機が無人機だからですよ。無人機に人は乗っていません」


「ではあのキャノピーはフェイク?」


「いえ、人が乗り込んで操縦することも可能ですよ? ただ今は無人運用しているというだけです」


 無人機、無人機ねぇ。

なんだか無人機がいると戦争が人間のコントロールを外れてしまう気がするのだが……

そうならないようにコントロールしないとな。


「ルーデル大将は今から帰るのか?」


「えぇ。この島に着陸したのも別に燃料が足りなかったからとかじゃなくて、ただXDWP-02がこちらに向かったので仕方なくなんですよ」


「無人機が自分で判断してこっちに来たと?」


「えぇ。なんでなのかはよくわからないんですがね」


 不思議なこともあるのだなぁと思いつつ、俺はXDWP-02の機体表面を撫でた。

すると突然XDWP-02の尾翼及び主翼ラダーがバタバタと動いた。

俺は突然の出来事に驚いて機体から手を離す。


「……喜んでる?」


「そうかも知れませんね。このAIを作ったのはトマスですし、何らかの司令大好きプログラムがインストールされててもおかしくありません」


「えぇ……」


 こいつは犬か何かか、と思いながら俺はXDWP-02の機首レドームの下を擦る。

XDWP-02の尾翼が何だか嬉しそうに上を向いた。

そのまましばらく撫でた後、そろそろルーデル大将が島を去る時間がやってきた。


「では私は先にイレーネ島に帰っておきます」


「そうか。帰り道には気を付けて」


「ええ。司令もくれぐれも死なないように、気をつけてくださいね」


 そう言うとルーデル大将はヘルメットを被り、キャノピーを閉める。

彼はキャノピー内から手を降った後、キャノピーにスモークをかけながら滑走路へとタキシングする。

その後ろに追従してXDWP-02も滑走路へと向かった。


 滑走路に到着したXDWP-01は両エンジンを点火、アフターバーナーを全開にして飛び上がった。

その後にXDWP-02もアフターバーナーを全開にして離陸していく。

飛び上がった両機は上空を旋回、飛行場の上でチェレンコフ1にエンジンを切り替えて飛び去った。





 ルーデル大将の飛来から約1週間ほど後。

急ピッチで再建が行われていた滑走路及びその周辺施設が完全に完成した。

完成した飛行場はアスリート飛行場と名付けられ、ミトフェーラ本土空襲の足がかりの基地となる。


 既に滑走路横の駐機スペースには60機のB-29がいつでも出撃できる体制を整えていた。

だが護衛用の戦闘機としてゼーブリックの基地から転々とノルン島まで飛んできているP-38を待っているため、少し出撃はお預けだ。

P-51などを召喚して護衛につけるという案もあったが、後方で指をくわえて待っているしかない彼らから「前線で戦わせてくれ」という要望があったので彼らを護衛に転用することにしたのだ。


「司令、もうすぐでP-38隊が到着しますよ」


「もうそんな時間か。迎えに出よう」


 俺はアスリート飛行場の管制塔から外に出て、着陸してくるP-38隊を迎え入れようとする。

だが何だかでかい機影が2つほど見える気がするんだが……

片方はC-130? もう一方はXDWP-02か……?


「なぁ……何だか違う機体が見える気がするんだが?」


「さぁ? 気のせいではないですか?」


 そんな事を言っていると、まずは1機目のP-38が着陸した。

メザシメザシとよんでいた日本の陸戦隊も彼らの到着を祝福した。

次々と着陸するP-38が駐機スペースに入っていく中、問題の機体が降りてきた。


「C-130ハーキュリーズ……何をしに来たんだ」


 アスリート飛行場に着陸したC-130は、駐機スペースに移動する。

駐機スペースに移動したC-130からは、ミラとオリビア、ベアトリーチェ、そしてイズンが降りてきた。

ミラに至っては、機を降りた瞬間俺の方に走り出してくる。


「どうした、こんなところにまで来て。戦場だから危ないぞ?」


 俺は胸に飛び込んできたミラの頭を撫でながら言う。

ミラは嬉しそうに喉を鳴らしながら顔を擦り付けてくる。

それを微笑ましそうに眺めながら他の面々はこちらに歩いてくる。


「構わない。御主人様に会いたくなったから。皆そうでしょう?」


「そうですね。私もしばらく一緒に寝てもらえていませんし」


「まぁ妾は……愛する祖国と戦争をしているという複雑な感情がのう……」


「私はただ元気しているかなーって」


 彼女たちは口々にそう言いながら俺の周りを囲む。

久しぶりに彼女たちに会うと、何だか戦争をしていることを忘れてしまいそうだ。

そんな俺たちの前にXDWP-02が着陸してくる。


「凄い音……こんな物が飛ぶなんてね」


「ん? なんかこっちにやってきておるな」


 XDWP-02は着陸した後、自力でこちらまでやってきた。

「戦闘機にそんな事できる?」と思いながら俺はXDWP-02に近づいた。

俺が近づくとXDWP-02のキャノピーがパカッと開く。


「誰か乗っているのか? たしかルーデル大将が有人でもいけるって言っていたし」


 そう思った俺はキャノピーを覗こうと頑張った。

だが機体が高すぎてどう頑張っても中を見ることはできなかった。

それを見ていた飛行場の作業員がはしごを持ってきてくれた。


「どうぞ、これを使ってください」


「ありがとう。助かるよ」


 俺はキャノピー部分にはしごを掛け、キャノピーまで上った。

だが誰かいるのかと思っていたキャノピーの中には誰もいなかった。

その代わり、1枚の封筒が入っていた。


「手紙? トマスからか……」


 危ないので一旦地上に降りた後、俺は印籠を剥がして中の手紙を取り出す。

そして書かれている内容をじっくりと読んだ。

書かれていた内容はこうであった。


『イレーネ島に帰還後、どうやらLILITHの様子がおかしかったので搭載されているAIになにか問題があるのかと聞くと、『司令に会いたい』と言ってきました。できないとは言ったものの聞かないので、仕方がなく司令のもとに送ることにしました。私が遊び半分でこのAIに司令大好きモードをプログラミングしたのが間違いでした。じゃじゃ馬ですがどうぞよろしくお願いします トマスより』


「……なんじゃこりゃ、まるで押しかけ女房じゃないか!!」


 俺の叫び声は空に響き渡るのであった。





 一方、ブンカーから無理やり出撃したミトフェーラの艦隊は、機関が整備されていなかったため満足に航海を行うことができないことを悟り、仕方がなく母港に帰投した。

特に旗艦に搭載された新型の機関は信頼性が最悪で、出港するなり煙突から黒煙をもうもうと吐いていた。


 最初は帰ってきたことにユグナーは激怒していたが、機関が動かないと言われ続けた結果、無断帰還を不問とするということで折れた。

旗艦は小規模なメンテナンスのためにドックに入り、残った艦は再びブンカーへと戻された。


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