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第213話 XDWPー02 ”LILITH”

 ゾルン島の守備隊の防衛のために飛来した2機の航空機。

一見すると両者XDWP-01 "ADAM"のようであるが、よく見ると1機はXDWP-01であるが、もう1機は少し違う。

この機体はXDWP-02 "LILITH"、DWP計画に基づいて製造された2機目の機体であった。


 XDWP-02 ”LILITH”、この機体のADAMとは異なる最も大きな点の1つは、搭載されている武装だ。

それは中央部に位置するチェレンコフ1に装着されたLDEWの射撃装置の仕組みで、ADAMに搭載されている物とは少し異なる。

具体的には魔石に無数の絶縁体を交互に取り付け、それぞれを回転させることによってLDEWをバルカン砲のように連続発射できるようになっていた。


 他の特徴としては、操縦が完全に自動化されているということがある。

もちろん人が乗り込んで操縦することも可能であるが、モードを自動操縦に変更すると今のようにAIによって完全自動で飛行させることも可能である。

それにはこの機体の翼の下、及び胴体下部に取り付けられたある兵装重要な役割を担っている。


 その兵装とは、ずばりX-36を改造した小型のUAVである。

これらの機にも本体であるLILITHと同程度のAIが組み込まれており、それぞれが自立して思考することが可能であった。

母機からは常に膨大な情報が子機に転送され、演算を4機がかりで行うことで複雑な計算にかかる時間の短縮に成功している。


 またこれらの子機には20mm機関砲が備えられており、母機のガンポッドとしても、またそれぞれが自立しての戦闘も可能であった。

子機には母機との結合中に母機から燃料の供給を受けるため、少々の戦闘では航続距離不足にはならない。

よって演算能力は落ちるものの1機で4機分の活躍もできるのだ。


 またこれらの子機は自動で母機まで帰還、再結合が可能であった。

これはアメリカが昔に実験をしていたトム・トム計画などの寄生戦闘機計画の資料を大いに参考にした。

だがこれによりXDWP-02の機体サイズはXDWP-01より1回りも2周りも肥大化してしまった。


 それでもXDWP-02の機動性は抜群であった。

特に3機のX-36が結合時にはスラスターとして働くので、機動性の向上に寄与している。

ちなみにこの3機にはそれぞれ右翼から”SENOY”,"SANSENOY","SEMANGEROF"の名前が与えられていた。


 ちなみにこれらDWP計画の実験機にはすべて創世記に基づく名前がつけられているが、これらはすべてトマスの趣味である。

知っての通りアダムは最初の人間であり、リリスは最初の女である。

また子機の3機は逃げ出したリリスを探すために神から遣わされた3体の天使の名だ。


『FROM LILITH,WHETHER TO SEPARATE OR NOT』


『SENOY,CONCUR』


『SANSENOY,CONCUR』


『SEMANGEROF,CONCUR』


 子機全機より賛成が示されたので、LILITHは3機のX-36を射出する。

射出されたX-36は、射出時に背面向きで射出されるため、すぐさま上下向きを変えて飛び出した。

母機を置いてX-36先に降下、敵の編隊へと迫りゆく。


 子機が下へと突入していくのをしばらく待っていたXDWP-02はタイミングを見計らって降下を始めた。

その機動は人間では絶対に不可能なような超機動であった。

そんなXDWP-02に続いてXDWP-01に乗ったルーデル大将も降下していく。


『あんな化け物のような機動……私もやってみたいな。耐Gスーツがあればできるのか?』


 そんな事を言いながらも降下していくが、彼が戦闘空域に降り立つ前にまずは先行したX-36が迫りくる敵編隊へと太陽の方向から突入した。

急襲を受けた彼らはなんとか回避軌道を取るが、先程の降下で機関砲弾があたったり、横の避けてきた機にぶつかったりして数機が撃破された。


 それに続いて今度はXDWP-02がLSDEWを展開、射撃準備に入った。

全自動で照準を合わせられてしまった敵は、放たれる青白い光線によって次々と撃破されていく。

破壊されたIS-1Aの残骸はそのまま海へと落ちていく。


 急降下を終えると同時にX-36は姿勢を回復、再度攻撃の体制に入った。

太陽から降りてきたかと思えば、次は海面から這い上がってくるX-36に残ったIS-1Aのパイロットは驚愕する。

彼らも必死の応戦を見せるが、XDWP-01とXDWP-02の2機はそもそも速度差がありすぎて射撃が困難で、もっとも遅いX-36は無人機かつ機体が小さいので命中しにくい。


 そんな状況でも彼らは必死に機銃弾を放った。

そのうちのX-36に向けてはなったものが流れてそのままXDWP-02の主翼外板に命中した。

だがそれがチタンと炭素繊維で作られた翼にダメージを与えることはなく、むしろ弾き返された。


 そんな状況下でも果敢にIS-1Aのパイロットは勝負を挑むが、その時XDWP-02の機体表面が青く輝く。

機体が光り輝いたと同時に、XDWP-02の周囲に球状の防御魔法が展開された。

ちょうど近くを飛んでいたIS-1Aは防御魔法の起動に巻き込まれて機体が大破、墜落した。


『ヴァイスハイト、少しやりすぎではないか?』


『エルケーニヒ、叩くなら徹底的に、です』


『それはそうだが……』


 そんな会話をしている間にも敵は次々と墜落していく。

機銃弾を打ち切ったX-36はXDWP-02のもとに帰還、再び背面飛行に切り替えて連結された。

残された敵はLSDEWによってすべて片付けられた。


『ミッションコンプリート、帰投します』


『ヴァイスハイト、そっちはイレーネ島ではないぞ』


『分かっています』


 XDWP-02はルーデル大将の静止を振り切り、ノルン島の方へと飛行する。

XDWP-02を単機で飛行させるわけにもいかないので、彼は渋々それについていった。

まだ作業中の滑走路へとXDWP-02が突然着陸したので、島の中は大騒ぎとなった。



―――おまけ―――


『XDWPー01 ADAM』 性能諸元


・全長   25.25m

・全幅   20.08m(前進、後退翼時同値)

・全高   5.27m

・重量   34520kg(全備重量)

・エンジン P&W F119 2基

      ILEーX0「チェレンコフ1」1基

・最高速度 マッハ1.8+(チェレンコフ1非使用時)

      マッハ2.4+(チェレンコフ1使用時)

・武装   遠距離指向性エネルギー兵器『LDEW』1基

      マウザーBK27mm機関砲 2門

・航続距離 3500km(チェレンコフ1非使用時)

      12000km(チェレンコフ1仕様、LDEW非使用時)

・上昇限度 23000m

・その他  レーダー、警報装置、チャフ、フレア等々



『XDWPー02 LILITH』 性能諸元


・全長   30.62m

・全幅   22.37m(前進、後退翼時同値)

・全高   6.32m

・重量   52500kg(全備重量)

・エンジン P&W F135 2基

      ILEーX0α「チェレンコフ1改」1基

・最高速度 マッハ0.7+(チェレンコフ1改非使用時)

      マッハ1・8+(チェレンコフ1改使用時)

・武装   遠距離指向性短波エネルギー兵器『LSDEW』1基

      Xー36改造型自立無人機3機

      マウザーBK27mm機関砲 2門

      自動防御システム『ADS』

・航続距離 4200km(チェレンコフ1改非使用時)

      16000km(チェレンコフ1使用時、LSDEW非使用時)

・上昇限度 23000m

・その他  レーダー、警報装置、チャフ、フレア、戦闘AI『ヴァイスハイト』等々



『Xー36改造型自立無人機 ”SENOY”,”SANSENOY”,"SEMANGEROF"』 性能諸元

・全長   5.55m

・全幅   3.15m

・全高   0.94m

・重量   1360kg(全備重量)

・エンジン ILEーF110(ターボファン) 1基

・最高速度 724km/h

・武装   エリコンFF20mm機関砲 2門

・航続距離 200km

・上昇限度 17000m

・その他  レーダー、警報装置、チャフ、フレア、戦闘AI『ヴァイスハイト』等々


因みにB-29は

・全長   30.18m

・全幅   43.04m

・全高   8.47m

・重量   63503kg(全備重量)     です


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