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第183話 帝国大学

 イレーネ島の中心部から少し離れた山間の場所。

ここには帝国に国民を本格的に迎え入れるための準備として大学が計画、建設された。

国民の受け入れを前にこの大学を俺は視察することにした。


 大学へは島の中心部から直通の電車が出ており、交通の便も良い。

また寮も付属しており、帝国に引っ越してこずとも留学ができるようになっていた。

俺も電車に乗り、実際に大学に向かってみている。


 この大学には全部でつの学部が設立されることのなった。

その学部は主に『軍事科』と『民間科』に分かれている。

軍事科には『陸軍科』『海軍科』『空軍科』『参謀科』が、民間科には『実用工学科』『政治科』『宗教科』『魔法科』が存在している。


 それぞれの学部には事前に召喚しておいた、もしくは秘密裏にスカウトしてきた先生たちが配属されていた。

軍事科では実践的な訓練を行うため、敷地内に演習場や飛行場、その他の施設が整備されていた。

イレーネ湾の反対側、島の東側に当たる湾には海軍科専用の港が設けられている。


「司令、つきましたよ。ここが最寄り駅です」


 電車が停車し、ロバートは俺を呼ぶ。

ついつい外の景色を眺めていたので到着したことに俺は気づいていなかった。

ロバートに言われたことで俺は初めて到着したことに気が付き、そのまま電車を降りた。


 駅のホームを抜けるとすぐに大学の校門が目に入ってくる。

それは鉄製で両開きの立派な校門であった。

石の門柱には『第一帝国大学』と刻まれている。


 そしてその先にはバンとそびえ立つ校舎が目に入る。

ゴシック様式のまるで宮殿のような校舎は、大学としての威厳を示しているかのようであった。

まぁどうやって短時間でこれほど細かい装飾の建設を建設できるのかは不明でしかないが……


「おや、教員陣が揃っているようですよ」


 ロバートが校門の先を見て言う。

そこには確かに話し合っている男女の姿があった。

向こうもこちらに気が付き、こちらに向き直る。


「いらっしゃいませ司令、いや校長。遠かったでしょう」


 我が国の海軍大臣のウィリアム大将改めハルゼー海軍大臣が俺の方を向いて言う。

彼以外にもエルヴィン陸軍大臣改めロンメル陸軍大臣、ハンス空軍大臣改めルーデル空軍大臣もいた。

彼らは平時暇なのでここで教員としても働くことになったのだ。


「まさか大臣の次に教員になるとは思ってもいませんでしたよ。ハッハッハ!」


 ルーデル空軍大臣は笑っていった。

その3人以外の先生も俺の方にやってきて話しかけてきた。

まずは『参謀科』教員として召喚されたハインツ=グデーリアン上級大将だ。


「私もまさか教員になるとは思っていなかったですよ。ですが選ばれたからには全力を尽くしましょう」


 グデーリアン上級大将は俺と握手を交わす。

次は『実用工学科』教員となったトマスだ。

彼は自身の仕事をする傍らこちらでも教えることになった。


 トマスとも握手を交わし、次の教員がやってくる。

次は『政治科』の教員となったヴィリアム=チャーチル卿だ。

彼は葉巻を口に加えたまま言う。


「私はイギリス流の3枚舌外交を教えれば良いのですかな?」


「やめてくれ。普通の政治で頼む」


「ハハッ、分かっていますよ」


 そう言ってチャーチル卿は葉巻の煙を吐き出す。

次は『宗教科』の教員となったエリーだ。

宗教科の先生だけ延々に誰になるのか最後まで決まっていなかったが、結局最近やってきたエリーが全部面倒をみてくれることになった。


 次にやってくるのは魔法科の教員となったメリルだ、

本来彼女は王都学園で教えているのだが、何故かうちに来てくれることになった。

魔法科の先生だけは現地の先生を雇わないと教えれる人材がいなく、ためしにメリルに聞いたところ彼女が快くOKを出してくれ、王都学園をやめてこちらで働くことになった。


「さぁ、せっかく全員が集まっているんです。記念に写真でも取りましょう」


「そうだな。皆集まってくれー」


 俺は全員に呼びかけ、校舎に続く道の右側に生えている大きな木の下に集まった。

俺が中心で左側一列目に『陸軍科』『海軍科』教員のロンメル大将、ハルゼー大将が、第二列には『空軍科』『参謀科』のルーデル大将、グデーリアン上級大将が並び、右側第一列には『実用工学科』『政治科』の

トマス中佐(実は彼は中佐なのです)とウィンストン・チャーチルが、第二列には『宗教科』『魔法科』のエルシェリア=テオドールとメリルが並んだ。


「では撮りますよー。あ、エルシェリアさん、もっと寄ってー。グデーリアン上級大将、顔が固いです、もっと笑ってくださーい」


「うるさーい! これでも笑っているつもりだっ!」


 グデーリアンの一言に皆がドッと笑う。

彼は恥ずかしそうに後頭部を掻いた。

カメラを構えているロバートは、ファインダーを覗いたまま左手を上げる。


「では撮りますよー! はい、チーズ!」


 パシャッ


 冬の空に乾いたシャッター音がなる。

写真に映る人は俺含めて皆笑っていた。

ここにイレーネ帝国初の大学が設立された。





 俺は写真撮影の後、海軍科教員となったハルゼー大将とともに海軍科専用の港へと歩いていた。

そこには海軍科が遠洋航海をするための練習艦が停泊している。

俺たちはその艦の視察を行いに行ったのだ。


「これが練習艦か……改めて考えると随分と豪華な艦だな」


「まぁそうですね。なんてったって戦艦に重巡洋艦ですからね」


 湾内に停泊しているのはかつての戦艦ビスマルクと重巡プリンツ・オイゲンであった。

これらの艦は見た目こそ変わっていないものの内部は訓練用に改造され、講義室などを増設していた。

それによって機関の一部が変更されたため出力が若干落ちている。


「遠洋航海をしようと思うと小型艦ではいかんせん……これぐらいでいいでしょう」


 ハルゼー大将は停泊しているビスマルクを見て言う。

戦うべくして生まれた彼らは今度、多くの人を育てることになるのであった。


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