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第177話 ドラゴンを駆逐せよ

 俺は天山の後部座席に乗り込み、大空を飛行している。

下を見て見ると、停泊している艦船たちが目に入った。

その上を通過し、天山は横を飛ぶ烈風と東海とともに試験空域に入る。


「司令、今から兵装の投下試験を行いますが、兵装の選択と投下は司令にやってもらわなければなりません。よろしくお願いしますね」


「あぁ、分かった。で、何をすればいいのかな?」


「まずは司令の右側にいくつかスイッチがあるのが見えますか? そのうちの赤色の物をオンにしてください」


 右側にある赤いスイッチ……

あ、あった、これか。

俺はパイロットに言われた通りに見つけた赤いスイッチを入れると、目の前のHUDに輝点が写った。


「それは東海とデータリンクを行うためのスイッチです。そして今HUD上に”Enemy”と書かれた輝点があるのが分かりますか?」


「あぁ、分かるぞ」


 HUD上には赤い輝点でEnemyと記されていた。

パイロットはその輝点を選択しろと言ったので、俺は言われた通りにそれを選択した。

すると今度は兵装の選択画面に切り替わる。


「これからは雷撃を行います。司令は画面下にある兵装選択ボタンのうち5番と7番を選択してください」


「おう、選択したぞ。しっかり画面にもMk.48 Torpedoと表示されている」


「これで兵装の選択は完了です。では一気に高度を落としますよ」


 そう言ってパイロットは機体の高度を急激に下げる。

機体が再び水平飛行に戻った時にはもはや海面に手が届きそうな低さまで下りてきていた。

雷撃とはこういうことなのか……なんとも恐ろしい飛行だな。


「では投下しますよ。そのまま股の間にある操縦桿のレバーを引いてください」


「ちょ、ちょっとまて。前方に敵艦はいない今雷撃をしたところで意味はないぞ」


「大丈夫ですよ、さっき東海のデータをもとに標的をロックしたでしょう? この魚雷は潜水艦魚雷を改造した誘導魚雷ですので、この状態で投下しても問題なく敵に向かって進んでいってくれますので大丈夫ですよ」


 ふーん、ちゃんと理由があったんだな。

俺はレバーを引き、魚雷を投下した。

投下した天山は上昇し、ある程度の高度まで戻ってきた。

すると突然無線が入る。


「うん……うん……えっ、本当か!?」


「どうしたんですか司令?」


 無線を来た俺の声を聞いて、パイロットが尋ねてくる。

俺は彼に無線の内容を伝えた。

すると彼も俺と同じく声を上げて驚く。


「ええっ、ヴェルデンブラントの山中でドラゴンの大量発生が確認されて救援要請がでているですって!?」


「あぁ、どうやら軍事転用しようとされていた個体が戦争の終結によって放置、一箇所に集められていたドラゴンたちが子どもを作って今年の春に孵化、成長した今脱走を始めたということらしい」


「まずいじゃないですか、確かドラゴンって前に我が島に飛来したこともありましたよね」


 確かゼーブリックの翼竜部隊に紛れてやってきたことがあったはずだ。

他の翼竜たちは空対空ミサイルで次々と撃墜される中、ドラゴンだけがあまり堕ちなかった思い出がある。

だから俺の中でのドラゴンのイメージは『デカい・堅い・強い』だ。


「取り敢えず基地に帰るぞ」


「わかりました。急いで帰投します」


 天山たちは機首をイレーネ島へと戻し、急ぎ帰投した。





「では、現在の状況を説明します」


 王都中心街にある空軍省。

俺はその建物に付随している作戦室で、空軍大臣のハンス大臣から説明を受けようとしていた。

モニターに地図が映し出され、彼は説明を始める。


「現在、脱走を初めたドラゴンたちは森を出て東に直進しています」


「なるほど、それでどれぐらいの数なんだ?」


「ざっと見積もって脱走したのが40騎、それに森に住んでいた野生のドラゴンも呼応して一緒に行動しているため合計で60騎ほどであると考えられております」


 60騎、あのドラゴンが60騎か……

今回は場所が場所なのでこの前みたいにパトリオットで撃墜することはできない。

となると航空機だけで対処しないといけないな。


「先ほどヴェルデンブラント王国とハイリッヒ聖王国より救援要請を受けました。すぐに出撃しないと甚大な被害が出るでしょう」


「まて、ヴェルデンブラントは分かるがなぜハイリッヒ聖王国?」


「ドラゴンの進路予想上に存在するからです。ハイリッヒ聖王国は都市国家、バチカンのようなものですので自力でドラゴンを追い払うすべを持っていません」


 ハイリッヒ聖王国はイズン教の総本山だ、毎年多くの巡礼者がその国を訪れる。

そしてイズンを崇めている聖王国を、俺が見殺しにするわけにもいかない。

よし、すぐに出撃と行こうか。


「全航空隊に出撃準備を整えさせろ、すぐにドラゴン討伐を行うぞ!」


「司令、そのことなのですが……」


「ん、なにか問題でも?」


「いえ、問題ではないのですが、現状ドラゴンに最も効果があると考えられるのは烈風と天山のみが装備できる試製460mm対空噴進弾です。よって烈風と天山の積極投入を推奨しますが……」


 烈風と天山か……

まさかこんなにも早く必要なときがやってくるとはな。

それに試製460mm対空噴進弾、元といえば大和の新型対空砲弾として作っていたものを噴進弾に転用したのだが、これも結構役立ちそうだな。


「分かった。では烈風と天山に出撃命令を……と言っても今何機ほどあるんだ?」


「今はイレーネ本島に烈風、天山がそれぞれ10機ずつ、ブルネイ泊地の工廠で生産し終えているのがそれぞれ5機ずつ、計30機ですね」


「30機か……少し心もとないから烈風天山以外にも本当からF-15C、F-16Cも出撃させよう」


「わかりました、ではすぐに通達いたします」


 こうしてイレーネ島の基地からは次々と航空機が発進していくのであった。





 アルマーニ海、空母信濃飛行甲板。

イレーネ本島から飛来した烈風と天山が順次着艦していた。

着艦し終えた機体は翼を畳み、一旦格納庫へと降ろされる。


 俺も飛来した天山のうち1機の後部座席に乗り、信濃へと移動した。

天山に付けられたフックがアレスティング・ワイヤーをつかみ、機体は停止する。


「司令、ようこそいらっしゃいました」


「急な出撃ですまないね。噴進弾のストックが本島への輸送用に信濃に載せられていたから急遽着艦することになってしまった」


「全然問題ありませんよ。それにあの大型の新鋭機、この信濃の巨大さを活かせて艦も喜んでいますよ」


 俺は甲板上の作業員と談笑する。

しばらく話していると、エレベーターから噴進弾を装備した烈風が上がってきた。

機体は後方に移動させられ、移動させられている間に次の機体が上がってくる。


「さて、新鋭機の実力、拝見させてもらおうか」


 俺は最後にあがってきた天山の後部座席に座る。

そして各機は順番に空へと舞い上がった。


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