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第166話 怪虫退治

 空母ニミッツ、サイドエレベーター。

エレベーターに乗せられて2機のF/A18E.Fスーパーホーネットが飛行甲板上に運び込まれる。

E型の方はGBU-32.1000ポンド爆弾が8発搭載され、F型の方にはレーザー照準器と、自衛のためのAMRAAM,サイドワインダーが搭載されてある。


 先程まで酒を飲んでいたが、非常時に備えて酒を飲んでいないパイロットが飛行することとなる。

スーパーホーネットは所定のカタパルトに配置され、射出を待っている。

ジェット・ブラスト・ディフレクターが上がり、スーパーホーネットはエンジンに点火した。


 ゴォォォォォォ……!!


 エンジン音が夜の海に響き渡る。

先程まで花火を打ち上げていたドワイト・D・アイゼンハワーでは撤収作業が終えられており、向こうもまたスーパーホーネットを射出する準備が整っていた。

甲板作業員は手を振り、膝を甲板につけて先を指差す。


 それと同時に蒸気カタパルトが作動し、1機目のスーパーホーネットが射出された。

間髪入れずに次は2機目のスーパーホーネットが射出される。

ドワイト・D・アイゼンハワーのものと合わせて4機のスーパーホーネットが発艦していった。


「へー、イレーネ帝国の翼竜は夜間でも発進できるんですね。まぁあれが翼竜なのかどうかは怪しいですけれど」


「まぁ鋼鉄の竜だとでも思っておけばいいさ。それと、今の物言いから察するに、翼竜は夜間戦闘ができないのかい?」


「うーん、できないことはないのですれどあまりにも危ないし、戦闘ができるほどの余裕はないから基本夜間運用は行われないですね」


 まぁ騎手がナイトビジョンをつけているわけでもないし、真っ暗闇の中を飛ぶというのも危ないからな。

もしもなにかに当たりでもしたら大変だ。

昔の戦闘機も夜戦はできなかったし、技術の発展した現代機だからこそできる芸当だな。


「まぁ大丈夫だ、そのキングワームとやらの退治は任せておけ」


「はい、助かります……」


 そしてアウグストスたちは王城へとオスプレイで送り届けられるのであった。





 約1時間後……

発艦したスーパーホーネットと、偵察のために発艦したE2-Cホークアイはキングワームがいると思われる山の付近を飛行していた。

そんな彼らの目に、一部が削れた山が目に入ってきた。


「何だ、山が崩れているぞ。そんなにデカい”Monster”なのか?」


「何だか興奮してきたな兄弟、ビールを飲めなかった憂さ晴らしと行こうか!」


『ガルーダ隊、目標を発見しました。全機攻撃準備を』


「「了解!」」


 ニミッツ所属『ガルーダ』隊のスーパーホーネット2機に加え、ドワイト・D・アイゼンハワー所属の『スコーピオン』隊の2機はホークアイの指示通りの位置へと移動する。

すると彼らの眼下には丘ひとつ分はあろうかと思われる大きなワームがあった。


「うげっ、気持ち悪っ!」


「そんな事言うなよ兄弟、そんなゴ●ラと戦うわけじゃあるまいし」


『なんだ、怯えているのかいガルーダ隊の皆さん?』


 スコーピオン隊からガルーダ隊へおちょくる無線が入る。


「何だってぇ! お前らこそ逃げるなよ!」


『逃げませんよ。ほら、これでどうです?』


 スコーピオン隊所属のF/A18Fはチャフをばら撒く。

チャフは照明弾のごとく夜の闇を照らし、キングワームの姿が浮かび上がる。

その姿を見た彼らはただ一言――


「なぁ、あれってさ……」


『あぁ、キングワームというよりかはどちらはと言うと』


「『センチピードオオムカデだな』」


 そんなオオムカデことキングワームは多くの足を動かしながら地面を這いずり回る。

その体は鈍く金属色に輝き、どんな攻撃も弾かんという雰囲気を持っていた。

そんなキングワームにガルーダ、スコーピオン両隊のパイロットは興奮する。


「では早速……」


『怪獣退治と行こうか』


 まずはガルーダ隊のF/A18Fがレーザーをキングワームの真ん中あたりの装甲部に照射する。

そこをめがけて僚機のF/A18Eは1発のGBU-32を投下した。

誘導されるGBU-32は寸分の狂いもなく狙った先に着弾する。


 ドォォォォン!!


 GBU-32は命中とともに大爆発を引き起こす。

だが装甲に傷はつけたが、破壊にまでは至らなかった。

キングワームは多少暴れるが、針路は変更せずそのまま進んでいく。


「Shit! なんでこんなに硬いんだよ!」


「普通に投下するだけではダメということか……」


 大してダメージを出せない事にガルーダ隊は少し苛立っていた。

その様子を見たスコーピオン隊は別の攻撃方法を模索する。

そしてE型に乗っているパイロットはあることを思いついた。


『そうだ、なぁガルーダ隊よ、あのデカい虫の弱点は何だ?』


「さぁ?」


『釣れないな、ああいう虫の弱点は装甲と装甲の間、体節部だと相場が決まっているんだよ』


「だがそこに爆弾を入れるのは難しいんじゃないか?」


『何を言っている、あいつは体もデカいが同時に体節の隙間もデカいんだ』


 そう言われてガルーダ隊は下のキングワームを見る。

確かにうねうねと動く体には、大きく隙間の空いた体節部が存在した。

そしてそこからは装甲に守られていない身が露出している。


「……やってみるか兄弟?」


「あぁ! それしか手はないだろう」


 ガルーダ隊のF/A18Fは体節をめがけてレーザーを照射する。

レーザーの照射を確認したF/A18Eはそこにめがけて再びGBU-32を投下する。

投下されたGBU-32は見事体節に命中し、体の一部を損壊させた。


 ギェェェェ!!


 キングワームはその痛みに思わず体を上に持ち上げる。

上半身だけ立ち上がったキングワームはその高さが100Mほどあった。

攻撃の成功を見届けたスコーピオン隊も同じように攻撃を行っていく。





 ガルーダ、スコーピオン両隊が懸架してきたGBU-32をすべて投下し終えた頃、キングワームはその体をぐだっと地面に横たわらせていた。

様々な体節に命中させられたため、一部はちぎれかけていた。

ガルーダ、スコーピオン両隊は作戦の成功を確信した。


「よし、目標の沈黙を確認。これより帰投する」


 ニミッツとドワイト・D・アイゼンハワーに連絡を入れた両隊は、母艦へと帰投の針路を取った。

だがE-2Cホークアイだけは現場の監視のためにその場に留まることになった。

ガルーダ、スコーピオン両隊の帰還していく姿を眺めながらホークアイの乗員は雑談をする。


「いやー、案外なんとかなるもんなんだね」


「本当だよ。爆弾が効果なかった時はどうしようかと思ったが、体節という弱点を見つけたらあっという間だったな」


 キングワームの上空を旋回する機内でそんな会話が繰り広げられる。

もう先程までの緊張感はなくなっていた。

だが機長だけはまだまだ警戒を続けていた。


「機長、そんなに警戒しなくてもいいんじゃないですか」


 乗員の1人が尋ねる。

だが機長はこう答えた。


「いや、あいつがムカデならばもっとしぶとくても良いはずなんだがな……」


 機長はそう呟いた。

そのとき、機内でモニターを監視していた乗組員が悲鳴を上げる。

何だと思って他の乗員がモニターを見ると、そこにはありえないものが映っていた。


「キングワーム……活動を再開しています……」


「ほらいわんこっちゃない! 援軍を呼ぶぞ!」


 機長はニミッツに援軍の要請をさせようとする。

そして艦と通信をしようとしたときのことだった。

レーダー画面に輝点がどんどんと現れる。


「ちょ、ちょっと待ってください! 後方より接近してくる機影あり! その数59!」


「59だと!? そんな機数どこから来たんだ! というかそれはスーパーホーネットなのか?」


 機内は未知の機影に騒然となる。

レーダー状には、近づいてくる点がちょっとずつ中心へと近づいてきていた。





 E2-Cから20kmほど南の空域。

先ほど離脱したはずのF/A18Fが2機、なぜかキングワームのいた場所へと戻ってきていた。

ガルーダ隊所属のF/A18Fのパイロットがスコーピオン隊のパイロットに愚痴を言う。


「なぁ、なんでコイツラのエスコートをせにゃならんのだ? おっそいしよ」


『仕方がないだろう? 夜間装備がないんだから』


 彼らは後方を飛んでいる機影を見る。

そこにいたのは――


「旗艦大和へ打電、『ワレ、トウガイクウイキヘノユウドウヲスズメバチヨリウク』」


 大鳳所属、海軍第六〇一航空隊。

艦上攻撃機の流星30機、艦上戦闘機の零戦六二型24機、艦上偵察機彩雲が3機、編隊を組んで飛行していた。

流星たちは800kg爆弾を抱き、零戦六二型は500kg爆弾を抱き、それぞれキングワームへと接近しつつあった。


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