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第150話 合同会議前夜

 様々な議論を行った俺は、ゼーブリック王国をいったん離れイレーネ帝国本島に帰還した。

というのも、大陸間国家合同会議の日付が迫ってきているからである。

想定よりもゼーブリック王国に長居してしまったな……


 俺を載せたワスプはイレーネ泊地に帰還し、停泊する。

俺は一緒に積んできた770にイズンとともに乗り込み宮殿を目指す。

宮殿前の階段で俺は車を止め、階段を上がって宮殿へと戻った。


「「「「おかえりなさいませご主人様」」」」


 俺が宮殿内に入った瞬間、大きな声でお迎えをされた。

そういえば大量にメイドを雇ったな、忙しくてすっかり忘れていたよ。

俺は彼女らの間を抜け、一番先頭に立っていたオリビアに話しかける。


「やぁオリビア、新人メイドたちの調子はどうだい?」


「はい、皆さん熱心に働いてくれますし、この宮殿の作りにも慣れたようなので会議当日もばっちりです」


 それは良かった。

ふとオリビアの服装を見て見ると、この前までの物とは違うことに気が付いた。

新しいメイド服は工廠員がウキウキで作ったのか若干フリフリが多いような気もするが、長袖に長いスカートとクラッシカルなメイド服のパターンを踏襲している。


「ふふ、気づいてしまいましたか? このメイド服はイレーネ宮殿のメイドの正装としてシュペーさんにお願いしてデザインしてもらったのを工廠に皆さんに作ってもらったんです。なかなか良いでしょう?」


「あぁ、なかなか良いデザインだと思うぞ。よく似合っている」


「お褒め頂き光栄です。ところで私たちが袖につけているこれに気が付きましたか?」


 袖になにかついているか? と思い俺はオリビアのメイド服の袖を見る。

そこにはアメリカの下士官が用いるような模様の金色の袖章が付されていた。

他の人のものを見ると全員同じく袖につけているが、オリビア以外皆銀色で、さらに模様も異なる。


「これはメイド内での役割を示すための袖章です。人数が多いため人を10人ごとに区切って1チームとしており、自分がどの組に所属しているのか、自分がその中でどのような立場なのかを見分けることができます。因みに私はメイド長ですので特別に金色の袖章となっています」


 メイドも兵士と同じく階級制にするのかと俺は驚いた。

だがたしかにこうしたほうが効率は良くなるかもしれないな。

それに乗じてちゃっかりメイド長の座を手に入れるとは、やりおる。


「イレーナさんの分の着替えも用意しております。良ければこちらに着替えてください」


 そういってオリビアはイズンに着替えを渡す。

彼女はそれを抱えて更衣室へと歩いていった。

さて、メイド服のお披露目もいいが、今は来る合同会議のための準備をしないとな。


「オリビア、何か会議についての情報は飛んできていないですか?」


「ありますよ。今朝早くに飛んできた情報ですが、どうやら会議への参加者を乗せた船がフォアフェルシュタットを出港、こちらは明日に到着するとのことです」


 明日に到着する、か。

思ったよりもすぐに始まるな。

時間は別にいいが、場所の設営は完了しているのだろうか?


「了解。会場の準備はもうできているかい?」


「えぇ、こちらをご覧ください」


 そういってオリビアは俺を何処かへと連れて行った。

俺は暫く歩き、角を右に曲がる。

するとそこにはか紙で囲まれた豪華絢爛柄な部屋にテーブルや椅子が置かれていた。


「この空間は『鏡の間』です。もとはヴェルサイユ宮殿なあるもので、それをオマージュしたのがこれです」


 俺はこの中で会議をしている姿を思い浮かべる。

ヴェルサイユ宮殿の、鏡の間で会議をするのはまるでヴェルサイユ条約締結のために集まった国ぐにの会議を彷彿とさせる。

これで場所も問題がないことを確認した、後は本番は彼らを迎えに行かないとな。


「御主人様」


「どうしたオリビア?」


「ルクスタント王国からの船便ですが、いつものイレーネ湾ではなく新しく下の方に設置された民間港に到着するようになっています。そこからは同地まで伸びている鉄道に乗って戻ってきてください」


 いや、なかなかハードなことを要求してくるな。

俺はまだ一度も島内を走っている鉄道に乗ったことはない。

そんな初めてな俺なのに他国の施設の人と一緒に乗れなど鬼畜だろう。


「仕方がないな……分かった、初めてだが何とかやり遂げてみせよう。因みにオリビアはついてきてくれないのか?」


「私ですか? 私が一緒に行ってしまうと話し合いのじゃまになってしまうのではないでしょうか」


「全然そんなことないよ。頼りになるからそばにいてくれたほうが嬉しいな」


「御主人様……!! わかりました、私もお供いたします!」


 よし、これで1人での接待は回避したぞ。

なんだかんだで有能なオリビアがいれば間違いない。

俺はそう確信した。


「では明日の早朝に起こさせて頂き、その後すぐにそちらの港へと移動しましょうか。移動に関しては御主人様がいつも使われているおすぷれい? を使って向こうまで飛んでいけばいいと思います」


「それじゃあオスプレイで行き来すればよくないか? わざわざ電車を使わなくても」


「電車を使ったほうが景色が綺麗ですし、それに走っている間に少しずつ話ができて緊張もほぐれるでしょう。ある程度仲良くなれば会話もしやすいはずですよ」


 確かにそれはそうだな、間違いない。

ならば電車に載っての移動というのは案外悪くないのかもしれない。

俺もなんだか今から電車の車窓から見える景色を見るのが楽しみになってきたな。


「じゃあ今日は明日に備えてもうねることにするよ、お休み」


「はい、おやすみなさい。いい夢を」


 ――翌日

 ぐっすり寝ていた俺はオリビアに叩き起こされ、着替えなどを済ませた。

そしてそのまま玄関前に着たオスプレイに乗り込み、港を目指す。

朝日が会議の開始を伝えるかのように水平線から登ってきた。


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