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第134話 古の栄光

 軍務卿につれられ、俺は今度は軍事コーナーへとつれられた。

先々代の国王は頑張ったのだろうな、その戸棚にはびっしりと本が置かれ、さらに軍事の中でも細かくジャンル分けがされていた。

その本達を見ていると、軍務卿が話しかけてくる。


「この本の殆どはミトフェ―ラ魔王国に存在する遺跡で発見されたものです。向こうの遺跡はこちらとは違って特異な平たい構造を取っていて、その中で様々なものが見つかっています」


「その様々なものとは?」


「ほとんどがよく分からない遺物ですが、中には本の中の挿絵と一致するものが見つかり、『これは兵器だ!』となったものはありますが結局は扱い方が分からずじまいになっていると聞きますね」


 古代の兵器が発見されていた……

ということは秘密裏にミトフェーラが古代の技術を持っているかもしれないな。

そうなるとさらに警戒をしないといけないかもしれないな。


 そう思いながら俺は一冊の本を棚から取り出した。

表紙には『World Ship Chronology』、訳すと『世界艦船年表』と書かれている。

だがあまりにも分厚いので片手で開きながら読むことは出来なかった。


 そこで俺は軍務卿に椅子に座って机に本を置いて読むよう提案されたのでそうしてみることにした。

俺はおいてある椅子に腰掛け、本を机の上において広げる。

やはりこれも上質な紙で、そして丁寧な印刷であった。


「どれどれ目次は……お、やはりあるな。えぇと、どんな内容が……」


 目次を見ていると、中に『Battleship』と書かれている項目があった。

気になった俺はそのページを開けてみる。

すると開いた瞬間俺を驚かせる写真と文字が目に飛び込んできた。


「モ、モンタナ級戦艦……だと、存在しない設計図上の戦艦がなぜ」


 そこに書かれていたのは地球では計画されたものの建造されなかったアメリカの幻の戦艦、モンタナ。

写真も載っており、さらに進水時の写真もあった。

ページをペラペラと捲ってみると、他の戦艦の写真も出てきた。


「なぜだ、なぜ古代にこんなものが……」


 俺は衝撃の事実に思わず倒れそうになった。

そしてページを捲るごとに艦艇が続々とでてきて驚くが、あることに気がついた。

それは空母が載っていないことである。


「空母は載っていない……ということは古代に地球のような大艦巨砲主義の時代があったということか」


 ……と思っていたときが俺にもあった。

よくよく説明文をみてみるとそこには恐ろしいことが書かれている。

それはこの船の武装がただの砲に見えて実はレーザー兵器だということだ。


「ええと、砲内で魔力を圧縮し、それを砲身内で螺旋状に回転させ打ち出す……うーん、何を言っているのかさっぱりわからん!」


 突然のオーバーテクノロジーに困惑し、俺は本を閉じた。

皮だけ古そうに見えて中身がSF並みのびっくりメカだとはなぁ……

少し考えることをやめた俺は席から立ち上がり、次の本を探しに行く。


「どれどれ……おや、1つだけ他とは異なる本がおいてあるな」


 俺がその本を見つけたのは生物のコーナーだった。

その本は本と言って良いのか怪しく、ただただ紙を束ねただけのものであった。

取り出してみると表紙にトップシークレットと書かれてある。


 気になった俺はその本を持って席に戻った。

表紙には『人工生命体の研究とその応用』と英語で書かれている。

どんな内容なのかと思い俺はページをめくった。


「どれどれ、機械工学と生命科学を融合させて人工で生命体を作る……マジかこいつら」


 本には現代の地球でもなし得ないような事が書かれてあった。

そしてよくわからないまま俺はページめくっていく。

するとひときわ俺の目を引くページが目に入った。


「これは設計図……? これではまるで生命というよりかは理科の実験室においてある人体模型ではないか」


 俺は載っていた巨大な人口生命体の挿絵を見て驚いた。

巨大な人口生命体は筋肉がむき出し、そこに皮や髪の毛などは一切存在しない。

だが顔だけが仮面のようなもので覆い隠されており、その下を見ることは出来ない。


 そんな挿絵の下の隅っこの方に文字が書かれていた。

書かれているのは『God's Receptor』、直訳すると神の受容体、だ。

最初は意味がわからなかったが、その先の文章を読むと意味がわかるようになった。


「なになに……神の魂を迎え入れる魂の器であり、神が降臨、復活する際に必要となる体である。神からのお告げによって設計が始まったが、大陸間戦争の激化に伴い兵器として利用しようとされ、神の魂を迎える前に人工知能を無理やり搭載されたが実験は失敗、器は停止した、か……」


 正直に言ってさっぱり意味がわからない。

だがこの文章から察するにこの紙とはロキのことで、しかも昔にもロキは肉体を復活させようとしていたらしい。

一体この文明がいつものかわからないが、昔からロキは復活しようとしていたのか。


 この文章に書かれていることはツッコミどころ満載で気になるが、この中でさらに気になる単語がある。

それは大陸間戦争という単語だ。

この星で昔に戦争があったのだろうか、それともただの御伽草子であろうか。


 いや、御伽草子という線は薄いだろうな。

どう考えても写真や設計図がしっかり作られすぎている。

ではこれはいったいどこで作られたのだろうか……


 だがそれらに関する記述は一切なかった。

そこで俺は大陸間戦争という言葉に注目する。

過去にあったかもしれないその戦争、その真相を確かめたくなった。


「軍務卿、大陸間戦争に関する資料はあるか?」


「大陸間戦争、ですか? それは聖書に出てくる滅亡戦争の名前ですが……参考に聖書を持ってきましょうか?」


「あぁ、よろしく頼む」


 分かりましたと言って軍務卿は文書庫を出ていく。

その間俺は本をさらに読み進めていく。

すると先程まで見つけられなかった製造者の名前らしきものを発見した。


『United Empire technology department』


 連合帝国技術局、この組織は一体……


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