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第125話 栄光ある帝国海軍戦艦部隊

 新兵器の視察を終えた俺は、鎮守府本庁舎の執務室で書類に目を通していた。

内容は鹵獲艦の譲渡に関する報告書だ。

搭載されている艤装を外して譲渡するか否かを判断する。


「えーっと……水力ポンプは搭載しっぱなしで、魔探も搭載して……えぇい、全部つけっぱなしでいい!」


 特に機密にするべき艤装もないので、オリジナルのままで譲渡することにした。

艤装の品目に全てチェックを入れ、その上から国章が掘られた判子を押す。

そしてその書類を手に持って椅子から立ち上がり、コート掛けに立てかけていた帽子を頭に被った。


 コンコン、ガチャ


「御主人様、紅茶を――おや、お出かけですか?」


 オリビアがお盆に紅茶を載せてやってくる。

俺は少し行儀悪いが立ったままその紅茶をもらい、一気に飲み干す。

淹れたてだったので舌を火傷したかも……


「すまないね、わざわざ淹れてもらったのに。ちょうどオリビアに話があってね。この書類通りの内容をルクスタント王国側に通告して欲しいんだ」


「これをですか? 分かりました。至急ルクスタント王国に伝達いたします」


 オリビアは俺から書類を受け取ると、早足に部屋を去っていった。

そして俺は彼女の後ろ姿を見ながら思った。

まだメイド服を着ているのか、また今度なにかいい感じの服を見繕ってやらないとな、と。


 そんなことを思いつつも俺は部屋を出て港へと向かう。

陽光を浴びてキラキラと輝く水面の上に帝国海軍の艦船がずらりと並んでいる。

いつ見ても美しい景色だ。


 ……だが観艦式を挙行するうえでこのままの部隊では少し物足りない気がする。

空母も駆逐艦もいるのに何が物足りないのかって?

答えはズバリ戦艦だ。


 今のイレーネ帝国海軍には6隻の戦艦が所属している。

大和、比叡、アイオワ、ニュージャージー、ミズーリ、ウィスコンシンだ。

だがなにかが足りない、それはやはり帝国海軍の残り10隻の戦艦ではないであろうか。


 海軍好きならば一度は夢見たことのある帝国海軍の戦艦12隻の揃い踏み、これをどうしても実現したい。

俺のスキルを持ってすれば夢見ていたことも実現可能だ。

だが戦艦を召喚したところでその先何に使うんだって? 勿論それも考えてある。


 先の戦争、その中でも海戦をする上で1つ気付いたことがある。

それは旧式艦艇と現代艦艇の射程差だ。

現代艦挺は対艦ミサイルで長大な射程を持っているのに対し、旧型艦挺は射程が長くても精々40km程しかない。


 もしもミサイルを打つのであれば戦艦はただの置物と化すし、逆に戦艦の射程に入ると現代艦艇は装甲が薄すぎるしその射程を活かすことが出来ない。

これは異なる時代の艦艇を同時に運用するうえで最大の障害となるであろう。


 一瞬大和たちをアイオワたちのようにミサイルが打てるように改修することも考えたが、その見た目が大きく変わることが嫌だったのでその計画は立ち消えになっている。

それならばと、俺は思い切って旧式艦艇と新型艦艇で艦隊を分けることにした。

つまり、旧式艦艇のみで構成された艦隊と新型艦艇で構成された部隊の2部隊を運用するということだ。


 これならば新型艦隊が遠距離からミサイルで援護し、その間に旧式艦隊が突入、砲弾や魚雷を浴びせるという戦法を取ることができる。

我ながらなかなか良い考えなのではないだろうか。

まぁつまり戦艦たちの就職先はあるよっていうことだ。


「……というわけで、スキル【統帥】発動、帝国海軍の戦艦たちを召喚!」


 スキルを発動すると、目の前の水面に一気に10隻の戦艦が現れた。

金剛型に扶桑型、伊勢型に長門型に大和型もいる。

一気に召喚しすぎたため海面が上昇し、俺の立っている桟橋まで海水があがってきた。


「あぁ、なんて素晴らしい光景なのだ。これほどの戦艦を拝むことができるとは」


 俺は戦艦たちの堂々とした出で立ちに感嘆した。

それら戦艦のパゴダマストが、自身が海の王者であると誇示している。

その後戦艦たちはタグボートにより移動され、イレーネ湾の中心辺りに投錨、停泊した。


 だが艦隊は戦艦だけでは成り立たないのでその他艦種の艦艇も召喚、編入する。

具体的には重巡級から高雄型の4隻と利根型の2隻、軽巡級から阿賀野型の4隻に球磨型の3,4番艦の北上、大井、駆逐艦から秋月型の12隻と夕雲型の19隻、戦艦も合わせると合計53隻の新規召喚となった。


 だがいざ召喚してみて思ったのだが、これだけの隻数がいると泊地が艦艇でパンパンになっている。

このままでは泊地への出入りもままならない。

というわけで旧式艦隊は北方のZ泊地へと回航、同地に展開してもらおうか。


 ならばついでに鹵獲艦たちの回航のために乗組員の収容を同時に行おうか。

彼らはいまZ泊地にいるので迎えに行かねばならない。

輸送用のワスプも一緒につれて行くことにし、艦隊各艦には出港の準備をするよう言った。


 30分ほどたつと艦隊は全艦出港の準備が整い、泊地の湾開口部近くに停泊していた戦艦武蔵から順に単縦陣を敷いて出港する。

永遠と続く軍艦の隊列は見るものすべてを驚かせるであろう。

ちなみに俺は単縦陣の中心付近に位置する大和に座乗している。


 ある程度進んだ艦隊は針路を来たにとり、そして陣形を特に意味はないが輪形陣へと変化させる。

大和、武蔵を中心にぐるりと輪形陣を組んだまま艦隊はZ泊地を目指す。

俺は大和の防空指揮所から周囲を眺めた。


「見渡す限り軍艦軍艦……ここは楽園か!?」


 俺は目をキラキラしながら艦隊を眺める。

そしてZ泊地に到着するまで俺はずっと艦隊を眺めるのであった。


 Z泊地につくと俺は真っ先に乗組員たちがいる宿舎へと向かい、彼らを迎えにいく。

彼らは再度船に乗れると聞くと狂喜し、ありがとうありがとうと俺に口々にお礼を言ってきた。

そんな彼らをワスプに収容した俺は旧式艦隊をZ泊地に残してイレーネ島へと帰還した。


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