目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第124話 ヒュージ・ボム

 戦後処理もある程度終わった段階で、俺はイレーネ島へと帰還した。

座乗艦の大和がイレーネ軍港の桟橋へと接舷し、ラッタルが降ろされる。

俺はそのラッタルを降り、イレーネ島の土を踏んだ。


 ここからそのまま鎮守府庁舎へと移動、そのまま休憩といきたいところだがまだやるべきことがある。

それは新たに建造されていた新型巡洋艦の視察、及びその他新兵器の視察だ。

俺はもう見えているが、第1ドック付近の船着き場へと移動する。


 この新型艦は、第一号輸送艦に搭載された魔石式蒸気タービンを改良した新型のものを6基搭載し、2軸のスクリューで稼働する。

全長170M、全幅15M、満載排水量は8200tにも達する巡洋艦だ。


 武装はこれまた第一号輸送艦に試験搭載されていた20.3cm砲のデータを下に作られた砲で、口径が20.3cmから15.2cmへと変更されている。

これを連装で前部後部合わせて3基搭載している。

この時点でわかるかもしれないが、ベースとなっている艦は阿賀野型だ。


 俺は船着き場に到着すると、あらかじめ用意されていたラッタルを使い艦へと乗り込む。

俺はそこでこの船の設計主任から色々と説明を受けた。

海上公試も既に終え、成績はとても良好とのことだ。


 そのせいもあってか、奥のドックでは追加の2、3番艦の建造が行われている。

別に作る分には構わないが、あまり活躍場所がない気がするがな……

まぁそれは完成した時にまた考えよう。


 俺は新型巡洋艦を降り、この艦の名前を決めることにした。

どうせならばかっこいい名前を考えないとな。

俺は暫くの間悩んだ。


「……よし、決めたぞ。この艦の名前は『伊吹』だ」


 俺はこの艦に伊吹の名を与えた。

名前を与えられたことにより、これで正式に帝国海軍へと編入される。

また新たに帝国海軍の所属艦艇が増えた。


「司令、新型艦には満足していただけましたかな?」


 造船所の奥からひょこひょことトマスがやってくる。

俺は彼に大変満足していると伝えた。

それを聞いたトマスは嬉しそうに笑う。


「そうですかそうですか。ではこちらに来てください、きっと司令を満足させることができると思いますよ」


 トマスは俺の手を引いて工廠へとはいっていく。

俺も引っ張られたままの体勢で工廠内へと引きずり込まれた。

中に入って前を見ると、見たこともないほどの新型兵器がずらりと並んでいた。


「どうですか、すごいでしょう!」


「う、うん……これは……すごいね」


 俺はその量に圧倒されて言葉がうまく出なかった。

とりあえず一番近くにあった火砲へと俺は近寄る。

見ただけでも口径が30cmはありそうなゲテモノだ。


「それは試作した榴弾砲ですね。威力は申し分ないのですがいかんせん動かしにくくて……。今はこの島の沿岸要塞にでも設置しようかと考えています」


「沿岸要塞か、そういえば工事はどんな感じだ?」


「沿岸要塞の建設は既に完了、列車砲などの要塞砲の設置も完了しています。基本的にシュペー殿の設計した都市計画に伴う建物は殆どが建設終了、後は宮殿の装飾が少し残っているだけだと聞いています」


 俺が戦地に言っている間にかなりの作業が進んでいたんだな。

だが過重労働になっているといつも思うのだがな。

適宜休憩は取ってほしいものだ。


 俺はゲテモノ迫撃砲を後にし、次々と兵器を見物していく。

そのたびにトマスは熱心に俺に説明をしてくれた。

そんな中俺はあるものを見つける。


「これは……爆弾、だな?」


 ひときわ目を引く大きな爆弾。

その大きさ形は、教科書に乗っていた原子爆弾とそっくりであった。

まさか核兵器も作り上げてしまったというのか?


「えぇ、見た通りそれは爆弾です。ですが司令の思っているようなものではないと思いますよ? これは核兵器ではなく魔石を利用した爆弾です。どうやら魔石は未加工の状態で衝突させると爆発的なエネルギーを放出するようでしてね、ですので未加工の魔石をこうやって……」


 トマスは両手でグーを作りそれぞれをぶつける。

理解した、この中に入っている魔石同士が反応することによって爆発が起こるのだな。

威力は一体どれぐらいなのだろうか。


「威力ですか? 実際に実験したわけではないのであくまで推測値ですが、これに搭載されている最大サイズの魔石2コで出力がTNT換算で33メガトン、広島型原爆のおよそ1000倍の威力であると見積もられています」


「ひ、広島型原爆の1000倍……ひゃー……」


 この兵器は一刻も早く解体するべきだろう。

こんな危なっかしいものを保管する意味もないし、使用する必要もない。

一体なんてものを作ってくれたんだ。


「こんな危ないものはさっさと解体してくれ。もしもなにかの間違いで爆発でもしたら大変なことだ」


「えー、せめて実験に使って処分じゃだめですか?」


 トマスがかわいそうな動物のような目で訴えかけてくる。

その顔に俺はうっときた。

せっかく作ったんだ、これを破壊するのもいやか……


「駄目だ、がせっかく作ってくれたんだから爆弾の解体して保管することは認めよう」


「やったぁ! ありがとうございます! では分解して保管しておきますね」


 俺もなんだかんだ言って甘いな。

トマスは早速何人か工廠から人手を呼んできて、工廠の天井に取り付けられているウィンチで爆弾を釣り上げて移送する。

解体できるだけの広さのある場所に爆弾を置いた後、彼は爆弾をバラし始めた。


「見て下さい司令、これが芯となる魔石ですよ」


 トマスは爆弾を開けて中の未加工の魔石を取り出す。

それをそっと地面に置き、彼はその魔石を眺める。

そして彼はふと思ったのか俺にこういった。


「そう言えば司令、最近この島で湧く魔物の数がかなり減ってきているように思われます。今はある程度在庫がありますが魔石にエネルギー供給を依存する以上なにか対策を考えないといけないかもしれないです」


 あれほど居た魔物の湧きが少なくなっているだと……?

トマスの言う通り魔石にエネルギーを依存するのであれば、魔石不足は致命的な問題になりかねない。

なにか対策を考えないと、と思うのであった。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?