地下室にこもって議論をすること約4時間。
既に時間は1時をまわっていた。
そんな遅い時間まで議論をしていたわけだが、なんとが結論が出ていた。
「では、フォアフェルシュタットへの少数による強襲上陸、その後その部隊を北上させてゼーブリックの領土内に侵入させて基地の強奪させるということでいいですね?」
エルヴィン大将の言葉に全員が頷く。
全員が持てるだけの知恵を振り絞って出した結論だ。
そんな知恵を振り絞り議論して出した結論はこのとおりだ。
◯フォアフェルシュタットに軍を強襲上陸させ、橋頭堡を確保する。
◯その部隊はそのまま北上、ゼーブリック泊地を目指す。
◯海軍は陸上の部隊を援護するために北上、ゼーブリックは口に洋上から攻撃をかける。
◯敵艦隊は艦載している翼竜を壊滅させてから降伏を促して鹵獲、応じなければヘリを用いて強襲し、強引に指揮下に入れる。
というものであった。
なんだか最後の作戦は893みたいなやり方だが気にしてはいけない。
そして、それに並行してもう1つの作戦が行われることになった。
その新しい作戦、それは敵の首都を空襲するというものである。
だが空襲とは言っても別に爆弾をばらまいて火の海にするとかそういうわけではない。
爆弾の代わりにばらまくのは降伏を促すビラだ。
現在深夜だが敵地にばらまくためのビラの制作を命令し、工廠の作業員に大急ぎで作ってもらっている。
この作戦では、敵国の国民んに動揺を走らせて王国に混乱を招くのが目的だ。
そしてあわよくば内部分裂してくれたら……と思っている。
そんなことを決めて会議は終了した。
全員疲れているのか大きなあくびをする。
眠りたい気持ちをもう少しだけ抑えて俺は長官室に戻り、先に寝ていたオリビアと同じベットに入って眠りについた。
◇
ウォォーォォン……
翌朝、まだ太陽がようやく登り始めた頃。
俺は島中に響く大きな空襲警報の音で目を覚ました。
眠い目をこすりすぐに飛び起きて部屋を出ようとしたが、まだオリビアが寝っぱなしだったので背中に担いで地下の作戦室へと降りた。
「なんだ、何があったんだ!」
俺は既に部屋にいた3人の大将に聞く。
そのとき背中のオリビアはまだ寝っぱなしだったので椅子に座らせて部屋の隅っこにおいておいた。
俺が机に向かうと、ハンス空軍大将は地図上の駒を動かして言った。
「本日明朝、本島のレーダーサイトが多数の機影を補足、北部に展開していた敵部隊の来襲と判断して空襲警報を発令しました」
なるほど、このタイミングで動いてきたか。
いつかは動いてくるとは思っていたが、まさかこんな朝早くに来るとはな。
こちらも早く迎撃を行う準備をせねば。
「敵機は合計で何機ほどだ?」
「はい、およそ400機ほどであると見積もられております」
400機か、前に補足したときと比べてかなり多いな。
これは搭載されている全ての機が出撃してきているのかもしれないな。
はたして全機を捌き切ることは出来るのだろうか。
「で、要撃の戦闘機はもう発進するよう連絡はしたのか?」
「はい。ですが空襲に伴い、同時にB−52HやKC−135などの大型機も空中退避のために離陸しようとしており、滑走路はは混乱を起こしているようです」
しまった、ここでツケが回ってきたか。
もともと空軍飛行場は爆撃機などの大型の機体を運用するために建設されており、本来は戦闘機用の基地を新造しなければならなかった。
だが別にいいかと後回しにしていたのがここで問題になるとはな……
「そして要撃に参加する機体はF−15C16機、F−16C16機、空対空ミサイルを積んだF−15E15機、そしてサイドワインダーを積んだなけなしのA−10C10機と何とかパイロットが起きていたF/A18E3機、合計60機です」
ハンス空軍大臣は要撃に参加する部隊を読み上げる。
迎撃機は合計で60機、向こうの6分の1以下の戦力か。
だがその参加機体一覧にウィリアム海軍大臣がツッコむ。
「ちょっと待て、なぜ海軍機が3機しか上がっておらんのだ! もっといるだろう」
ウィリアム海軍大臣はそう文句をいう。
だがハンス空軍大臣はその言葉にこう返した。
「海軍の方々はほとんどの人がぐっすりと寝ていらっしゃるようで、離陸しようにも機体を操縦するパイロットがいないのでどうにもなっていないようですよ。その点空軍はこういう自体に備えて24時間いつでも迎撃を行えるように待機しておりますので速やかに迎撃機を上げられたんですがね」
ウィリアムは今度からこういうことに備えて全員起こしておこうと思うのであった。
◇
要撃に上がった戦闘機たちは接敵するために編隊を組んで飛行していた。
各機レーダーに目標を捉えており、後はミサイルの射程にはいるのを待つだけであった。
そして飛行すること10分、ついにAMRAAMの射程に敵編隊が収まった。
『よし、AMRAAM全弾発射!』
AMRAAMを搭載している機体は一気にミサイルを放った。
そして放ち終えた機体たちはさらに距離をつめ、今度はサイドワインダーの射程まで接近しようとする。
そうしているうちに最初に放ったAMRAAMは順次着弾し、300機ほどが一気に落ちた。
距離18km、目標との距離を大幅に縮めた要撃機の編隊は今度はサイドワインダーを放つ。
そしてサイドワインダーを放ち終えた編隊は一気に高空へと上昇した。
サイドワインダーも着弾し、あたかも全機撃墜できたかのように思われた。
『おい、まだ落ちきっていない機体があるぞ!』
戦闘機の機内のHUDには、敵を表す輝点が10こ浮かんでいた。
その輝点の正体を探るべくパイロットたちは敵機を探し始める。
だが捜索はそう難しくはなく、すぐに該当の機体を見つける事ができた。
『何だあれは、あれは翼竜ではないぞ!』
『こんな化け物がいたのか!』
彼らの視界に入ってきたのはドラゴンであった。
だが彼らはミサイルを撃ち切っており、これ以上攻撃することは不可能であった。
彼らは敵を目前にして、渋々基地への帰還を選択する。
『おい、まて!』
機内に急にそんな声が響いた。
外を見てみると、1機のA−10Cが降下してゆくのが見えた。
A−10Cのパイロットは機首をドラゴンに向け、機関砲の発射レバーを弾く。
ブゥゥゥゥン……
30mm機関砲弾が容赦なく敵に降り注ぐ。
敵のドラゴンの鱗を貫通し、ドラゴンを蜂の巣にして撃墜した。
そして何とか1機を撃墜できたが、まだ9機は健在であった。
単独行動をしたA−10Cも戻ってきて本島に連絡を入れた。
『敵機10機がそちらに接近している。注意されたし』
それだけを告げて編隊は基地に帰還する針路をとった。
そのころ、イレーネ島海岸。
そこでは侵入しようとする敵機を迎撃する用のパトリオットが既に準備されていた。
レーダー車も敵影を捉えており、あとは発射の指示を待つだけであった。
そんな彼らのもとに攻撃を求める無線が届く。
「よし、仕事が入ったぞ! さっさと働こう!」
1人がそう言うと、作業員たちは一気に盛り上がった。
パトリオットはミサイルの入ったボックスをせり上げる。
そして狙いをつけ、全車に発射命令を出した。
「よし、パトリオット全弾発射!」
ランチャーから放たれ、空にパトリオットが煙を引いて飛んでいく。
そして10匹のドラゴンに正確無比と命中していく。
ドラゴンたちも流石にパトリオットの直撃には耐えきれず、全機が海の藻屑と消えた。
『助かったよ、ありがとう』
『なに、困ったときはお互い様さ』
こうして敵の部隊は全滅、要撃に上がった機体は空軍基地へと戻っていき、避難していた大型機も基地に続々と戻っていくのであった。