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第69話 創造神の降臨

 昨日はひと悶着あったが、翌日の夕方前には王都の門に到着していた。

俺の乗った馬車が門をくぐると、大勢の国民が沿道から手を振って迎え入れてくれた。

俺は手を振り返しながら王城へと向かっていく。


 そのまま王城に向かうのかと思ったが、馬車は途中で右に曲がる。

何処に行くのかと思っていたがやがて馬車は停車し、馬車の扉が開けられた。

俺が馬車から降りると、目の前には大きな屋敷があった。


「到着しましたルフレイ様。本日はここでお休みになられて下さい。明日再びお迎えにあがります」


「わぁ、大きなお屋敷ですね」


 俺の後に降りてきたオリビアが屋敷を見て歓声を上げる。

だがたしかに立派な屋敷だが、まったく人が使った気配がない。

何ならきれいすぎるのだ。


「なぁミルコ、この屋敷は誰が使っていたんだい?」


 俺がそう言うと、ミルコは笑っていった。


「その屋敷は新築ですよ。女王陛下がルフレイ様への贈り物だと言って建築を命じていました」


 まじか、この屋敷が俺のために用意されたものだったとは。

俺への贈り物だとミルコは言っていたが、俺は今ブローチしか持っておらずこの屋敷のお返しとしてあげるものは何も持っていない。

またなにか考えないとな。


 ミルコたちは馬車を伴って戻っていった。

俺とオリビア、近衛部隊はとりあえず中に入ってみることにした。

門を押し開け、屋敷の整えられた庭へと入っていく。


 俺が庭を眺めていると、屋敷の玄関がスッと開いた。

俺がそちらを見ると、メイド服の人間が立っているのが見える。


「フランじゃない。久しぶりね」


「そっちこそ。どう、あっちでは上手くやれている?」


 オリビアが扉の横に立っているメイドに話しかけた。

俺たちは彼女の方へと歩いていき、開けられた扉をくぐる。

中にもずらりとメイドが並んでおり、オリビアは一人ひとりと話し始めた。


 その雰囲気を悪くしないように俺はそそくさとその場を離れ、自分の部屋を探すべく歩き始める。

オリビアがフランと呼んでいたメイドが俺に気づいて部屋へと案内してくれた。

俺は案内された部屋のドアを開けて入った。


「あー、馬車にずっと乗っているのも疲れるな」


 俺は部屋に着くなりベットへと飛び込んだ。

気持ち良すぎてそのまま寝てしまいそうだな。

そんな俺にフランが話しかけてくる。


「本日はごゆっくりお過ごしくださいませ、ご主人様」


 彼女はそういった後一礼し、部屋から出ていこうとした。

だが部屋から出ようとした時に扉を開けようとするのを止めてこういった。


「あ、そうそう。オリビアちゃんは結構不器用なところがあるのでちゃんと気づいてあげてくださいね」


 フランはそう言うとそのまま部屋から出ていった。

一体彼女は何を言っているのであろうか。

そしてフランが出ていくのと同時にオリビアが返ってくる。


「……まぁ良いか」


 オリビアは何が良いのか分からず首を傾げていたが、俺は何も言わなかった。

そしてそのままベッドに潜り込み、深い眠りへと落ちた。





 翌朝、俺はオリビアに体を揺らされて起こされた。

そのまま俺は昨日来ていた軍服を脱ぎ、新しいものを召喚して着る。

着替えが終わると俺はそのままご飯を食べに食堂に向かう。


 食堂には既に朝ご飯が並べられていた。

だが今日は戴冠式に伴うパーティーがあるので量は少なめだ。

それらを食べ終わった俺は、一旦自分の部屋に戻った。


 自分の部屋に戻ってきた俺は、荷物の中から必要なものを取り出す。

その必要な物はグレースにあげるプレゼントだ。

箱を取り出した俺はなくさないようにオリビアに預けた。


 因みにオリビアは屋敷に用意されていたきれいな青いドレスを着ている。

彼女のクール(?)な印象とマッチしていて彼女の美しさを際立たせている。


 よし、準備もできたことだし早速王城に向かうか。

俺はオリビアを連れて屋敷の外に出た。


 屋敷の外には昨日から一晩中ずっと監視をしてくれていた近衛兵がいた。

彼らも合流し、迎えの馬車のもとへと向かう。


 門の外には既に馬車が待ち構えており、俺とグレースは昨日と同じく馬車に乗り込んだ。

馬車は俺たちを王城に送迎すべく進み始める。





 馬車は華麗に飾られた表通りを進んでいく。

通りに面した民家や商店には国旗が掲げられ、お祝いムードになっている。

馬車はその道を通って王城の正門前に到着した。


 俺とオリビアは馬車を降り、その周りを近衛部隊が取り囲む。

隊長のロバートは用意されていた国旗を取り出して抱え、隊列の先頭を進んでいく。

隊列はそのまま王城へと入場した。


「イレーネ帝国皇帝陛下、ルフレイ様到着!」


 隊列が門を通り過ぎようとすると、門のそばに立っていた門番がラッパを吹いて俺たちを出迎える。

城内には既に多くの参列客が集まっていた。


 俺はそのまままっすぐに再建された主殿へと入っていく。

会場内には多くの椅子と兵士が並んでおり、俺は兵士の1人に案内されて並べられて椅子の最前列へと案内された。

近衛兵たちは後ろに並んで式を見守るようだ。


 その後続々と参列客が会場内に入ってき、それぞれに用意された席に座っていく。

全員が入場を終え、後は主役が登場するのを待つのみだ。


 そして俺は座りながら1つの事に気がついた。

それは俺の座っている席が最も上の席であるということだ。

この状況では俺が参列者の中で1番みたいになってしまうが良いのだろうか。


 そんなことを思いつつ、俺は式の開始を待った。

数分後、会場内にラッパの音が響き渡る。

主役の入場の合図だ。


 会場内後方の扉が開き、純白の長いドレスを着たグレースが入ってくる。

その長いドレスの裾を持ち上げるメイドを伴いながら、彼女は会場の真ん中に立った。


 その後、後ろから白い長い服に白い帽子を被った老人が入ってくる。

前に王都内の教会でみた司教に似た服装であった。

その後ろに王冠を持ったシスターと思われる人間が続いているため、彼がグレースに戴冠するのだろう。


 彼は舞台を進み、グレースの前に立つ。

グレースは片膝を折ってしゃがみ、手を胸の前で交差させる。

そして僧侶姿の老人は冠を手に取り、グレースの頭の上に掲げる。


「神に代わり、教皇ヨーゼフ13世がグレース=デ=ルクスタントをルクスタント王国の新女王として、ここに戴冠する」


 教皇はグレースの頭の上に王冠を載せた。

そしてグレースは立ち上がり、周囲に手を振る。

俺たちは盛大な拍手を送った。


 式は次の段階に移った。

次はピアノの伴奏に合わせた神への讃歌の斉唱だ。

だが俺はよく知らないので適当に口パクで誤魔化しておこう。


 式場にいる全員による讃歌の斉唱が始まった。

だが聞いているうちに歌詞が繰り返しになっていることに気づいたため、歌えるところは歌っていこう。

……よし、ここからは覚えたぞ。


「神よ我が前に姿を表し給え〜 我に祝福を与えん〜」


 俺が歌い始めた瞬間、会場内が強烈な明かりに包まれる。

歌は中断し、俺はあまりの眩しさに目を覆った。


 俺が目を覆っている間に、周りから布の擦れる音が響く。

俺が目を開けると、会場内の参列者と教皇はみな地面に這いつくばっていた。

彼らの這いつくばる先にいたのは……


「ルフレイ、呼んだ?」


 そこにいたのは、十二の翼を持ったイズンであった。

……なんでここにいるの?


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