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第66話 敵状偵察、『K作戦』

 俺は陸軍基地から再び空軍基地へと戻ってきていた。

すでにRQ−4が飛び立ってから2時間が経っており、もうゼーブリック王国上空にたどり着いているはずだ。

俺はRQ−4の制御室のドアを開ける。


「どう? 何か成果はあった?」


「あ、司令。これはなかなかの大戦果ですよ。この写真を見て下さい」


 俺はRQ−4のオペレーターから複数の写真を見せられた。

写真はどうやら港を映しているようだ。

港の上には多くの艦艇が映っているのが確認できる。


 だがよく見てみると、変な点があることに気がついた。

奥に立っている民家と思われる建物と比べて明らかに船が大きすぎるのだ。

これでは全長が150〜200Mほどあるのではないだろうか。


 それに船の艦尾にも注目すべき点がある。

明らかに艦尾が特異な形状をしているのが見て取れる。

伊勢型戦艦が航空戦艦に改造された際の後部に設置された飛行甲板のようだ。


「これはまさか……翼竜を運用できるとでもいうのか?」


「はい。その可能性が高いかと。次にこの写真をご覧下さい」


 追加で見せられた写真を俺は覗き込む。

それは造船ようの船台のようなもので、艦艇が1隻建造されているのが見えた。

一体何隻の軍艦を一気に建造できるのであろうか。


「最後にこの写真です」


 最後に示されたのは、艦隊を組んで出港していく軍艦の写真であった。

先程の翼竜搭載と思われる艦に加えて通常の形状の艦も含まれている。

画像で確認できる限りその数は約60隻、大艦隊だ。


「成程ね、より調査が必要そうだ」


「えぇ、既にRQ−4は首都に向けて飛行しております」


 確かに首都の偵察も行うべきであろうが、俺は出港していった大艦隊のほうが気になる。

追加で偵察機を飛ばして監視することにしよう。


 派遣するのはRQ−4が1機に加えてE−3も1機だ。

流れとしてはE−3がその搭載するレーダーで敵艦を補足、RQ−4がそれを激写するという流れだ。


 俺はRQ−4のオペレーターに準備するよう言い、E−3のもとへと向かう。

確か今E−3は整備中ではなかったはずだ。

俺は格納庫へと走り、整備員に出撃の準備をするよう命令する。


 俺はE−3の搭乗員を集め、訓示を行った。


「これから君たちには敵艦隊の捜索を行ってもらう。これは重要な偵察任務だ。心してかかるように」


「「「「はっ!」」」」


 E−3はその搭載するレーダーの制御のため大所帯だ。

総勢21名の搭乗員がE−3へと乗り込んでいった。


 やがて2機はタキシングを始め、離陸の準備を終えた。

管制塔からの指示がおり、2機は順番に加速、離陸していった。

敵状偵察、『K作戦』の開始だ。





 『どうだ? レーダーに反応はあるか?』


 空を飛ぶE−3内に無線が飛ぶ。

洋上を飛行するE−3はすでに偵察を開始していた。


『あぁ、バッチシだ。しっかりと大艦隊を補足したよ』


 E−3は遠く離れた場所から目標を的確に補足していた。

レーダー上には無数の輝点が写っている。


『よし、データを基地に転送、グローバルホークを写真撮影に向かわせてくれ』


 E−3は得たデータを基地へと転送する。

このデータを下にRQ−4は偵察に向かうのだ。

転送してからしばらくすると、RQ−4は加速、目標へと向かっていった。


『さてと、無事に任務は達成だな』


 機内には目標を発見したことにより、少し楽観的な空気が広がっていた。

だが対空レーダーの計器を眺めていたレーダー員が突如大声を上げた。


『おい! 目標から飛行物体が離陸したようだぞ。これが翼竜かもしれん』


 機内は一気に緊張した空気に変わった。

それぞれの乗組員が自身の計器をじっと見つめる。

その間にもどんどん輝点の数は増えていき、最終的には200個にまで膨れ上がった。


 その頃基地内では――


「どう? 目標を発見できた?」


 俺はRQ−4のオペレーターに話しかける。

彼は画面を見たまま俺の問いに答えた。


「はい。E−3が搭載するレーダーで目標を捕捉、すでにRQ−4は写真撮影のために目標へ向かっています」


 仕事が早いな。

そう俺が思っていると、急にオペレーターが慌ただしく無線を取った。


『はい、はい……え!? それは本当か!?……はい、はい、分かった』


 彼はインカムを落とすと、俺の方を向いていった。


「司令、どうやらE−3のレーダーが飛行物体を捕らえたようです。船から発艦したと思われ、総勢200機はいるとのこと」


 そうか、やはりあの船は航空母艦であったか。

これが分かっただけでも大きな成果というものだ。

後はRQ−4の写真を待とう。


 数十分後、RQ−4は艦隊上空に到達した。

撮影した写真を拡大、確認してみる。


 写真には飛行甲板と思われる部分に多くの翼竜が駐機している様子が確認された。

戦闘機ではないとはいえ航空戦力を搭載しているというのはとてつもなく強力だ。


 フォアフェルシュタットに停泊している艦船の中にそのような翼竜を搭載できる艦は存在していなかった。

もしもルクスタント王国とゼーブリック王国が戦争となれば、間違いなくゼーブリック王国が制海権を掌握することになるであろう。


 まぁ戦争が起こるかどうかはわからないが、万が一のことも考えておけるようになることは良いことだ。

さらに偵察、情報収集が必要だな。


「司令、首都周辺の写真も届いております」


 首都へと偵察に行っていたRQ−4からも画像が送られてきた。

俺はその写真に目をやる。


「これはこれで……中々立派な飛行場だな」


 写真に写っていたのは大きな飛行場。

翼竜が映り込んでいることからおそらく翼竜用のものなのであろう。

ルクスタント王国にも飛行場があるとは聞いたが、これほど大きくはないであろう。


「ルクスタント王国の装備がえらく貧弱だったからすべての国家がそうなのかと思っていたが、実際にはそうではないのかもしれないな」


 それにまだこれは一カ国だけだ。

他にもヴェルテンブラント第二王国や、その他未知の国家の軍事力は未だに謎だ。

より偵察を強化していかないとな。


「よし、もう十分目標は達成した。RQ−4とE−3に帰投命令を出そうか」


 俺は偵察に行っていた機体に帰投を命じた。

こうして偵察作戦は新たな脅威の発見に寄与したのであった。


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