目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第56話 眠ってない夜は知らない

 新たな固有スキルの入手を発見した後。

俺は自身の【鑑定】を【ダンジョンマスター・不落宮】に使用してみた。

その結果が以下の通りである。


◯対象「ダンジョンマスター・不落宮」 鑑定結果

 ダンジョン『不落宮』の全権限を行使できる能力。

 ダンジョン内にモンスターを召喚して、ダンジョンを防衛することが主目的。

 『王都6号居住棟・警備者』からの派生。


 えらいこっちゃあ。

え?俺ここのダンジョンのボスになっちゃったの?

それは色々とマズい気が……

あと王都6号居住棟とはこのダンジョンの昔の名前だろうか。


「おーい! 沢山お宝採ってきたからいくつかやるよ!」


 ちょうどお宝漁りからマックスたちが帰ってきた。

取り敢えず彼らに相談することにしようか。

時と場合によっては限られた人以外への情報の秘匿が必要かもしれないな。


「みんなちょうど良いところに帰ってきた。1つ話したいことがあるんだが良いか?」

「あぁ勿論だ。なんでも聞いてやるよ」


 俺が真剣に話し始めると、マックスたちも真剣に聞き始める。

俺は彼らにことに詳細を語った。


「みんな見ていたと思うが、俺は戦いの後に謎の光の玉を取り込んだと思う。あれの正体がおそらく判明した。あれはあの機械の固有スキルだ」


 俺がそう言うと、彼らは驚いたのか言葉を発さなくなった。

俺が彼らの目の前で手を振ると意識は回復した。

俺は再び話を続ける。


「そのスキルが問題で、俺はどうやらこのダンジョンの全権限を行使する能力を得たようだ。魔物を湧かすも湧かなくするも俺次第だ」


 俺がそう言うと『竜討つ剣』の全員が驚きと不思議に満ち溢れた。

ダンジョンの権限を得ることができるとは誰も思わないだろう。


「それは本気で言っているのか? まぁ本当だろうが……それは秘匿したほうが良いかもな。少し時間をくれ」


 マックスは少しメンバーたちと話し始める。

やがて結論が出たのか、彼は俺に結果を話し始めた。


「ひとまずは情報は秘匿したほうが良いだろう。そのことを聞くと冒険者に混乱を招きかねない。そのうえでダンジョン内は今までの状態に保ってほしい。ギルド長に判断を仰ぐ必要があるが、今のところはそれで行こう」


 わかった、と俺は頷く。

俺たちはお互いに情報を秘匿することに合意した。


「さぁ、取り敢えず帰ろうじゃないか。飯と酒が俺たちを待ってるぜ!」


 よし、帰ろう!

マックスたちは持ってきたお宝をエレベーターの前に運び込む。

ゲオルグは俺がロボットの残骸を運ぶのを手伝ってくれた。


 あ、1つ忘れていた。

俺はカウンターの上に置きっぱなしだったヘカートⅡを抱えて持ってくる。

床においていた三八も回収し、俺はエレベーター前に戻る。


「よし、エレベーターに乗り込もう。マックスたちも荷物を全部突っ込んでくれ」


 俺たちは荷物を全てエレベーターの中に突っ込んだ。

重量オーバーになるかとも思ったが、エレベーターが無駄に広いこともあって全て問題なく入った。

100階のボタンを押して、エレベーターは上昇していく。


 ダンジョンの最下層から脱出し、俺たちは最初の階層に戻ってきた。

だが今俺たちが持っている物を他の冒険者に見られると面倒だとマックスが言った。

だから知名度のある彼とゲオルグが先導して厄介払いをし、残りのメンバーで荷物を運ぶことにした。


 彼らのお陰で荷物を運ぶ道中には誰にも会わず、無事に外にたどり着いた。

外はすでに日が落ちかけており、かなり暗くなってきている。

外には行きに乗ってきた馬車が停まっていたが、どう考えてもこの荷物を全て載せることは到底不可能だと判断した。

ここはひと肌脱いで、俺が運搬用のトラックを出そう。


 スキルを使って俺は軍用トラックを召喚した。

2tも積載量があるので、全てを積んでも余裕だ。

それを見たマックスたちは本日何度目かわからない驚きを見せながらも、もはや何も言うこと無く荷物を積み出した。


「じゃあ俺は先にギルドに戻っておくよ」


 俺はトラックの助手席に乗り込み、窓から顔を出して言う。

マックスたちは馬車に乗ってゆっくりと帰るらしい。


「俺たちのは全部査定にかけておいておくれよ〜」


 彼らの声を聞きながら俺は運転手に合図を出し、トラックは動き出した。





 1時間程トラックを走らせ、王都に俺は戻ってきていた。

王都の門をくぐり、トラックは一直線にギルドへと向かう。

もう真夜中なので誰もいないかと思ったが、以外にもまだギルドの建物だけ明かりがついていた。


 ギルドの前にトラックを停めてもらい、俺は助手席から降りる。

そのままギルドの扉を開けると、中でそわそわしているドレス姿の人を見つけた。

あのドレスはまさか……


「ルフレイ、こんな時間まで何をしていたのよ! 帰ってこないから迎えに来たらまだ帰ってきていないって心配したんだからね!」


 そこで待っていた人はグレースだった。

彼女は俺を見つけるなり駆け寄ってくる。

俺は心配しながらも少し怒っている彼女に事情を説明した。


「すまない。最下層を攻略していたらこんな時間になってしまった」


「最下層ですって!? なんでそんな危ないところまで行くのよ!」


 グレースは俺の制服の襟を掴んでぐわんぐわんと強く揺らす。

というかなんかこの会話夜遅くまで帰ってこなかった夫を詰める妻みたいな構図だな。

まぁ結婚したことがないからあっているかどうかは知らんけれど。


 1階での騒ぎを聞きつけたのか、ギルド長が2階から降りてきた。

彼も俺を見るなり駆け寄ってきた。


「無事だったか! 本当に良かった……『竜討つ剣』のメンバーは?」


「ご迷惑をおかけしました。俺は先にお宝を輸送するために帰ってきており、彼らは今頃野宿でもしていると思いますよ」


 俺はそう言ってギルド長にお宝を見せるべくトラックへと案内する。

ギルドの建物の外に止めてあるトラックの扉を開け、俺は彼に中に入ることを促した。

彼は中に入ると、積んであるお宝の多さに目を奪われていた。


「なんだこれは! こんな量の宝を俺は見たことがない。早速査定しようか」


 そういうと彼は建物の中に戻る。

そして数人の職員を連れてくると、トラックに積み込まれているお宝を続々とギルド内に運び込んだ。

だが彼らはロボットの残骸も持っていこうとしていたので、俺はあわてて止めた。


「すまないがそれは持って行かないでもらおう。俺の所で独自に分析したいからな」


 だが俺がそう言っても彼らは怪訝な顔をして持っていこうとした。

もしも中身が弄られたりしたら再現が不可能になる可能性もあるのでやめて欲しい。

すると、グレースがトラック内に乗り込んできた。


「彼の言う事を聞きなさい。彼はこの国の女王である私の友人であるとともに彼自身も帝国の皇帝なのだから」


 彼女の言葉を聞くと、職員はあわてて残骸を動かすのをやめた。

少し言い方はあれな気もするが、残骸が弄られないなら良いだろう。

彼らは残りの全てのお宝を建物内に運び込んだ。


「とりあえずこれらは全て査定にかけておくよ。でだ、最深部で何があったのかを聞かせてくれ」


 俺はギルド長に呼び出される。

グレースもついてくると言うので、3人でギルド長室で話し合う事になった。

まだまだ夜は長そうだ。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?