「ッガガ……ピー、This……first……ピーガガッ」
エレベーターのスピーカーから放送のようなものが流れる。
だがノイズが混入しすぎて何と言っているのかは聞き取れなかった。
だがエレベーターはかなり下ったので、そろそろ1階ではないだろうか。
エレベーターの降下が止まり、ドアが開く。
ドアの外には先ほどまでと大きく違う、ロビーのような広間が広がっていた。
そしてもう1つ違うのは、先程よりも損傷が激しい点だ。
「ひっ、何なんだここは」
ついてきたヤコブがその不気味な光景を見て悲鳴を上げる。
その気持ちはわかる、俺も叫びたい。
だがそれよりも俺は好奇心の方が勝っていた。
「よし、いくぞ」
俺が一歩を踏み出だそうとした時だった。
広間の柱の陰から何かがスッと姿を見せる。
それは金属でできたロボットのようなものであった。
” Hello, sir. What can I help you?”
(こんにちわ。なにかお手伝いできることはありませんか?)
突然ロボットが流暢な英語で話しかけてきた。
この建物と合わせてこの世界に存在するはずのないものが連続で出てきて困惑する。
だがこのロボットにはまだ敵意は見られない。
それにまずは聞いてみるとしよう。
" Hello. Tell me about this facility "
(こんにちわ。この建物について教えてください)
" OfCourse. This facility was made for people to live in. The facility consists of 100 floors, each with its own rooms."
(勿論です。この建物は人々が住むための建物として建てられました。この建物は100階建てで、それぞれに人々が住むための部屋があります)
英語を勉強しておいて良かった。
やはりここは人々が住むための施設であったか。
では住んでいた人々はどこに行ったのであろう。
" Where have all the people who live here gone?"
(住んでいた人たちは何処に行ったのですか?)
"Most of the residents left and I don't know what happened after that for them."
(ほとんどの住人はでていきました。そしてその後彼らがどうなったのかは知りません)
こんな建物に今も住み続ける変人は居ないわな。
劣化具合から考えてもはるか昔に放棄されたものだろう。
だがなぜこんな地中に建物を造ったのかは謎だ。
あとはこのロボットの役割が知りたいかな。
" What is your mission?"
(あなたの任務はなんですか?)
俺がそう言うと、ロボットは黙る。
だがすぐに顔はないのに笑ったような雰囲気を出し、それは言った。
" My mission is to kill people who break into this building like you."
(私の任務はこの建物に侵入してきたものを殺すことです……あなたのようなね)
そう言うと、ロボットは腕から剣のようなものを取り出す。
俺たちを殺す気だ。
俺も銃を構えるが、これは本格的にマズイかもしれないな。
既に退路は絶たれている。
ロボットは腕を振り上げ、こちらに向かって突進してきた。
俺は防御魔法を展開し、攻撃を防ぐ。
ロボットは一歩後ろに下がり、再度突進を試みてくる。
二撃目の突進も防ぎ、俺はちらっと後ろの方を見る。
ヤコブが気を失っていて、他のメンバーはそれを介抱しようと少し遠くに連れて行っているのが見えた。
少しは戦いに参加してくれたら良いのに。
ダァァン!
俺は防御魔法越しにロボットに向けて銃弾を放つ。
俺の張った防御魔法を突き破りながら、銃弾はロボットに正確に命中した。
だがそれを覆う金属板に銃弾は跳ね返されてしまった。
「畜生! まさが銃弾が効かないとは」
ロボットは何事もなかったようにさらに突進してきた。
俺はあわてて防御魔法を張り直し、何とか攻撃を防ぐ。
その後、ロボットは急に向きを変えてマックスの方に突進し始めた。
「危ない! 避けろ!」
俺の声を聞いて、マックス達は間一髪のところで攻撃を避けた。
マックスとゲオルグは背中に抱えていた剣を抜き戦闘態勢に入る。
そうだ、彼らが時間を稼いでくれるなら、あの攻撃でロボットを撃破できるかもしれない。
「おいマックス、聞こえるか! 少し時間を稼いでくれ、その間に俺がなんとかする!」
「言われなくてもやってやらあ! Sランクは伊達じゃねぇぜ!」
マックスはロボットの剣を受け止めながら笑って答える。
彼はかなりのマッチョだ。ロボットとも力では互角に渡り合えるだろう。
ゲオルグは残りの2人を援護してくれている。
俺はその間にロビーにまわった。
ロビーのカウンターの裏についた俺は新たな銃を召喚する。
召喚したのはPGMヘカートⅡ、対物ライフルだ。
バイポットをカウンターの上に置き、肩当てを肩に当てる。
今回は近距離なのでスコープは使用しない。
俺はしっかりと狙いをロボットに定める。
「マックス! 離れろ!」
俺が叫ぶと、マックスは素早く身を引く。
ロボットがちょうどこちらを向いた。
「今だ!」と思い、俺は引き金を引いた。
銃弾は一直線に飛び、ロボットの心臓部を貫通した。
薬莢の落ちろ音と共に、ロボットは地面に崩れ落ちる。
その後、ロボットはピクリとも動かなくなった。
これではたして倒せたのであろうか。
俺は確認のためにロボットに近づくと、意味の分からない言葉を再生していた。
"ジジッ……ed transferring……to manage……facility…… Progress 60……80……complete"
ロボットの頭から光の玉のようなものが現れ、俺の頭に入り込んでいく。
玉を放出したロボットは、ついに沈黙した。
命は助かったようだ。
「ヒャッハー! 流石だぜルフレイ! 文句なしのSランク、いやSSランクだな!」
「お前どんな武器を使ったんだ! 俺もあんな武器が欲しいよ」
マックスとゲオルグが満面の笑みで駆け寄ってきた。
マックスは俺の頭をわしゃわしゃとなでてくれ、俺は少し恥ずかしかった。
残りの2人も無事なようで、何とかなってよかったな。
……さて、このロボットをどうしようか。
ここに放置しておくのもあれだし、何よりも中身を分析させて再現、つまりリバースエンジニアリングしたいと思う。
ということはこの残骸が今回の戦利品で決定だな。
「マックス、他の皆んな、今こんな話をするのもあれだが、俺は今回の戦利品としてこのロボットの残骸を持って帰りたいと思うが他に欲しい人はいる?」
マックスたちはお互いの顔を見つめ合う。
そして全員でこっちを向いて笑っていった。
「こんな物が欲しいのか。別にいいよ、好きに持っていきな」
「俺たちはその代わりにこの階層に存在するお宝をいくつか頂戴することにするよ」
「よし! いっぱい漁るぞぉ!」
彼らはお宝を目指して走り出していった。
俺は手に入れたロボットの残骸に大きな期待を抱く。
これから技術のノウハウを取得して、今後国内で開発するものに役立たせてもらおう。
そういえばロボットから何か光の玉が出て俺に吸収されたな。
あれはなにか意味があったのであろうか。
取り敢えず俺は自分のステータスを確認してみた。
最初は特に変わりがないので気のせいかと思って、そのまま下へと目を移す。
そこで俺はとんでもないものを見つけてしまった。
◯固有スキル
【統帥】
【世界地図】
【言語理解】
【鑑定】
【ダンジョンマスター・不落宮】 New!
一体何何だこれは……
俺は新しく増えた固有スキルをじっと見つめる。