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第52話 休暇は光のごとく過ぎ去る

 3週間後、登校日の2日前。

俺は完成した陸軍基地の視察に来ていた。

これの完成によりついに陸海空の軍事拠点が揃ったことになる。


 残るは陸軍部隊の召喚である。

前に召喚した歩兵5000名とともに今回召喚する部隊が、この国の主力となる。

広大な敷地を利用して戦車に自走砲、装甲車など多種多様な兵器を展開する予定だ。

まずは手始めに装甲車を召喚しよう。


「スキル【統帥】発動、M1120ストライカー装甲車を召喚!」


 召喚するのはストライカー装甲車。

いわゆるストライカーシリーズの装甲車である。

今回召喚したのは兵員輸送を考えて400両だ。


 6割程は主武装にブローニングM2を積んだタイプであるが、残りの半分は迫撃砲搭載型のストライカーMC、残りのもう半分は大型砲塔を搭載したストライカーMGSである。

これだけでは全員の搭乗は不可能なので、さらに輸送車を増やす。


 次に召喚したのはM2ブラッドレー歩兵戦闘車だ。

7名の歩兵が搭乗可能な歩兵戦闘車を200両配備する。

先程のストライカーと合わせて機械化歩兵旅団を構成する。

次に召喚するのは陸上戦力の花形、戦車だ。


「スキル【統帥】発動、M1A2エイブラムスを召喚!」


 今回俺はエイブラムスを選択した。

レオパルトやチャレンジャー、10式などの選択肢も存在したが、今回は無難にエイブラムスで行く。

今回召喚するのは50両だけだが、十分戦力になるだろう。


 大口径砲シリーズで、今度は榴弾砲を召喚する。

榴弾砲には自走できるものと出来ないものが存在するが、今回は展開能力も考慮して自走する方を選択する。

俺はMPを消費し、M109自走榴弾砲を召喚した。

召喚数は戦車と同じく50門、戦場をかける歩兵の心強い味方になってくれるはずだ。


 最後に召喚するのはMIM−104パトリオットだ。

これは長射程の地対空ミサイルで、建設途中のレーダーサイトと連携して島の防空に大いに役に立ってくれるだろう。

これで陸上戦力は揃った。思えば最初は50人の歩兵から始まった軍も大きくなったな。


 さて、明後日から学園生活が再開するから今日の夜には出港しよう。

ちなみに今比叡は完成してあるドックに入渠している。

船底の付着物を剥がすのと、現代的な通信機の増設のためだ。


 そこで今回はワスプで登校する。

フォアフェルシュタットから王都間の移動を搭載されているオスプレイにて行い、移動時間を短くさせるのが目的だ。

護衛にはタイコンデロガ級とアーレイ・バーク級がついてくる。

俺は陸軍基地を離れ、鎮守府へと戻った。





 予定通りにイレーネ湾を出港したワスプは、フォアフェルシュタットに到着していた。

俺はオスプレイに乗り込み、機体は既に王都へと向かっている。

オスプレイには固定翼モードがあるので、ヘリとは思えない速度で飛行していた。


 しばらくしていると、王都が見えてくる。

中心にそびえる王城は再建が進んでいて、既に塔の形ができつつあった。

その上を旋回し、オスプレイは高度を下げる。


 固定翼モードからヘリモードに切り替え、王城の裏庭へと着陸する。

プロペラに当たらないように頭を下げながら機内から出て、俺が退避したのを確認してからオスプレイは飛び立った。

俺は飛び去る機体を見送り、西の殿に移動する。


「ルフレイ様! 帰ってこられるなら一言おっしゃって下さい。びっくりして心臓が止まるかと思いましたぞ」


 声のした方を振り向くと、軍務卿が急いで走ってくるのが見えた。

現代人からしたらなんてこと無い音だが、プロペラの独特な音は初めて聞く人には衝撃だろう。

軍務卿には悪いことをしたな。


「ゴメンゴメン。次からは気をつけるよ」


「あなた様はいつも奇想天外な乗り物に乗られておりますね。私としても興味深いので良いのですが……」


 軍務卿の顔から突然血の気が引く。

俺の後ろを見ているが、何かいるのだろうか。

恐る恐る後ろを向くと、ニッコニコのグレースが立っていた。

だが目が笑っていなくて怖い……


「おかえりなさいルフレイ。何だか随分と久しぶりな気がするわね。まぁそこの軍務卿とは会っていたようだけれど、なんで私とは私とは……」


 グレースが壊れてしまった。

というか軍務卿の言っていた様子が変とはこのことか。

これじゃあ完全にメンヘラじゃあないか。

え? 俺のせいじゃないよね。


「まぁいいわ。今日は2人でゆっくり話しましょう」


「アッハイ」





 結局昨日は3時間ほど話していると、グレースの様子はもとに戻ってきた。

もはやメンヘラの影はなく、他愛もない話をいつもの調子で楽しく話し、そして解放された。

それにしてもどうしてこうなってしまったのだろうか。

うーん、謎である。


 そんな事はさておき、今日は学園生活後期の開始日だ。

俺は1ヶ月ぶりに制服に袖を通し、食事を済ませて登校のため馬車に乗る。


 そういえば俺専属メイドのオリビアにあったのだが、彼女は何だか嬉しそうだったな。

なにかいいことでもあったのだろうか。

訳のわからないことをたまにする鉄仮面の彼女が微笑んでいる姿を見るのは初めてだった。


 そんなことを思っていると、学園に到着する。

もう何度も見て慣れてしまった立派な校門をくぐり、校内に入っていく。

教室に入ると、いつもの席へと歩いていった。


 1時間目の鐘がなり、メリルが入ってきた。

だが彼女はいつも持っている授業道具は持っておらず、代わりに紙の束を持っていた。

まさか……この世界にも『夏休みの感想』とかいう世界一どうでもいい宿題があるのだろうか。

ちなみに俺は作文が大嫌いだ。


「皆さん、良い夏休みを過ごせましたか? 夏休みが終わると3年生も半分が経過したことになります。3年生の後期には皆さん待望の『アレ』がありますね?」


 メリルの言葉に教室が湧く。

だが俺には『アレ』が何なのか見当がつかなかった。

なにか大きな行事でもあるのかな?


「3年間の集大成とも言える魔物狩り大会がありますね。今日の1時間目はその説明とチーム決めをしてもらいます」


 そう言うとメリルは持っていたプリントを配り始める。

そのプリントに書かれたいた内容はこうだ。



 ――魔物狩り大会 概要――

・魔物の湧く山に2泊3日泊まり、魔物を狩ってもらいます。

・チームは各5人です。剣術、魔法問いません。

・魔物を狩るごとに点数が加算され、最終的に点数の一番多いチームが優勝です。

※山の中に入るには冒険者カードが必要です。何ランクでも構いませんので冒険者ギルドでカードを発行してきて下さい。


 魔物をひたすら狩りまくるのか。

これは島で鍛えてきた銃の腕前が役に立つな。

だがその前に俺は冒険者カードを持っていないので作成しに行かないといけないな。


「では各自チームを組んで下さい」


 メリルがそう言うとともに、生徒たちが一斉に人を求めて動き出す。

取り敢えずグレースとは組むとして、後はエーリヒかな。

だがそれ以外のメンバーは誰一人として思いつかなかった。


 俺とグレース、そしてエーリヒの3人で固まって他の人を探す。

だが皆んな遠慮してか誰も入ってはくれなかった。

よくよく考えたら女王に皇帝、魔王の弟がいるチームに入りたいとは思わないか。


「あの、僕たちもメンバーに入れてくれませんか?」


 声をした方を見ると、前に準決勝で戦った2人組がいた。

この2人はかなりの実力者なので頼もしいな。

こうして無事にメンバーが決まったのであった。


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