目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第43話 学園内対抗戦・決勝

「おい、あの防御魔法の突破する方法がないぞ」


 学園内対抗戦の予戦が終わった後の夜、王都内のロイドの住む屋敷の一室で話し合いが行われていた。

彼らはAチームのルフレイ達の戦い方を見て焦っていた。

彼らはあの防御魔法を破る手段は持っておらず、このままでは勝利は不可能な状態だった。


「なぁ、俺に1つ良い案があるのだが……」


 マクシミリアンが何か案を思いついたようだ。

その案をロイドにコソコソと話すと、ロイドも理解したようだ。

彼らはニヤニヤしながら雑談を始める。

マクシミリアンはいったい何を思いついたのだろうか。





 準決勝が終わり、いよいよ決勝戦が始まる。


「さぁ、お待ちかねの決勝戦が始まるぞ! この戦いにて学園最強が決まる! 勝つのははたしてグレース=ルフレイペアか!? マクシミリアン=ロイドペアか!? さぁさぁ刮目せよ、これこそが学園内対抗戦だぁ!」


 会場内は対抗戦中最大の歓声に包まれる。

その歓声に包まれながら、俺たちは会場中心へと足を進める。

マクシミリアンたちも同時に歩んでき、俺たちはにらみ合うことになった。


「あなた方も負けずに決勝へとのぼってきたのですね。このステージに至るまでに負けてしまうのではないかと思っていましたが、流石にそんなことはなかったようですね」


 マクシミリアンが俺たちに話しかける。

その言い方に俺は少しイラっと来たが、平静を保って話を聞く。


「私たちと交わした約束……覚えていますね? 我々に負けたときは覚悟していてくださいね」


 ロイドがニヤニヤとしながら言う。

彼らはグレースの方を舐めるような目で見つめ、グレースは少し体を震わせる。

そんなグレースの様子を見、俺は彼らを睨みつける。


「おー怖い怖い。そんなに彼女をとられるのが嫌なら我々に勝ってみなさい。まぁそんなことは出来っこないと思いますがね」

「「ワッハッハッハ!!」」


 そんな状況の中、試合の開始を告げる鐘が鳴る。

準決勝の時と違って攻撃は全く飛んでこず、普通に全周防御が完成した。

グレースから魔法が発射され、彼らはひたすら防御魔法で防ぎながら避けているだけだ。


 このままでは簡単に勝利できてしまうのではなかろうか。

そう思っていると、マクシミリアンが急にグレースの方へと近づいていく。

攻撃を仕掛けようとしたが、防御魔法に阻まれ攻撃は通らない。


 そのままグレースが攻撃しようとし、俺がシャッターを開けようとした瞬間だった。


「これでもくらえ!」


 マクシミリアンの手から何かが投げられる。

俺はそれに気づいて即座にシャッターを閉めようとしたが、その時には遅かった。

彼の投げたものはシャッターの閉まった防御魔法の中に入る。


 その後、グレースの防御内で大爆発が起こった。

俺はこのように爆発を起こすものを知っている。

あれは未加工の魔石だ。それが投げ入れられた衝撃で爆発したのだろう。


 俺は慌ててグレースの元へと走っていく。

彼女の制服はボロボロになり、彼女自身もかなりのけがを負っている。

俺は防御魔法を解いて、彼女を抱えた。


「おいグレース、大丈夫か!?」


 グレースはゆっくりと俺の方を見て言う。


「ごめんねルフレイ、私はこれ以上戦えそうにないわ。私のことは放っておいて頑張って頂戴」


 ここで俺が負けるわけにはいかない。

俺は彼女を優しく床に寝かせ、マクシミリアンたちの方を向く。


「ははは、相方を失った気分はどうだい? お前ひとりでは2人の俺たちに勝つことは出来ないさ」

「お前もすぐに倒してやるよ」


 そういい、マクシミリアンは剣を振り掲げ、ロイドは杖を俺に向けて俺に一気に襲い掛かってきた。

とりあえず防御魔法を展開し、2人の攻撃を防ぐ。

俺はまずは遠距離攻撃をしてくるロイドの方を攻撃することにした。


 防御魔法を今度も槍状にしてロイドに襲い掛かる。

そんなことは想定済みだといわんばかりに彼は魔法を繰り出す。

それを俺が防御魔法で止めると、今度は後ろから攻撃が浴びせられる。


 急いで防御魔法を展開し、マクシミリアンの剣を防ぐ。

今度は後ろからロイドの魔法が飛んでき、俺はそれに対処する。


 それを俺は延々と繰り返していたが、急にロイドからの魔法攻撃が止まった。

魔力が切れたのだろうか、とにかく今がチャンスだ。

俺はマクシミリアンを全力で攻撃する。


 剣でマクシミリアンは俺の槍をかわしながら粘っていたが、ついには彼の右肩に槍が刺さった。


「グハッ!!」


 彼は持っていた剣を地面に落とす。

そして彼は気を失ったのか、地面に倒れ伏した。

もう戦闘を継続することは出来ないだろう。俺は残るロイドを攻撃するべく探す。


 そしてロイドを見つけたわけだが、信じられない光景が目に入る。

彼はグレースを抱え、今に口づけをしようとしていた。

俺は彼を止めるべく叫ぶ。


「おい! 何をしようとしているのだ! お前は仮にも一国の王子だろう、そんなことをしたらどうなるかわかっているのか!」


 俺が叫ぶと、ロイドはゆっくりとこっちを向いて答える。


「お前らに勝つことが出来なかったら俺は彼女を手に入れることは出来ない。そうなるならば今彼女を俺のものにするのだ!」


 どうやら彼は気でもくるっているらしい。

グレースはまだ自力で逃げることができない。

俺が向こうにたどり着くまでにロイドが彼女を襲うであろう。

彼女が穢されることは絶対にあってはならない。


「仕方がない、三八式歩兵銃を召喚!」


 俺は歩兵銃を召喚し、彼に向けて構える。

当たらなくてもいい、ロイドを驚かせて少しでも行動を止めることができれば。

そう思い俺は銃の引き金を引く。


 ダァァァン!


 会場の中に銃声が響き渡る。

銃から放たれた銃弾は偶然にもロイドの腹部に命中した。

彼は腹部を抑え込み、その場に倒れた。


 そのまま俺はグレースの元に駆けつける。

彼女はかなり恐れていたが、俺の顔を見ると少しは安心したようだ。

俺は彼女を安心させんと語り掛ける。


「大丈夫か? さぞ恐ろしかっただろう。だがもう大丈夫だからな」


 俺が語り掛けると、グレースは涙を流しながら答える。


「あぁルフレイ、私何をされるのか分からなくてとても怖かったわ。でもあなたの顔を見て少し安心したわ。でもどうかもっと私を慰めるためにお姫様抱っこをしてくれない?」


 彼女は涙を流しつつも少し顔を赤らめて言う。

お姫様抱っこは少し恥ずかしいが、それで彼女が安心するなら仕方がない。

俺は彼女をお姫様抱っこして立ち上がる。

すると場内からは黄色い声が発せられた。


「おぉ! 下劣な行為を働こうとしたものを強力な攻撃で下し、今勝者が決まりました! 我々の女王を守った勇者に惜しみなき拍手を!!」


 ナレーションとともに、会場が割れんばかりの大きな拍手に包まれる。

そしてそのまま拍手は数分間途切れることなく続いた。

グレースの嬉しそうにしており、俺は優勝を実感した。


「ではこれより表彰に移ります」


 ナレーションの声に場内が静かになる。

そして場内に入ってきたのは、前に一度話した学園長のイルゼとメリルであった。

表彰式なのでグレースを下ろそうとすると彼女は俺の首にしがみついて離れない。

そんな俺たちの様子を見ながらイルゼは「そのままで大丈夫よ」と笑いながら言った。


「第38回学園内対抗戦優勝、グレース=ルフレイペア。あなたたちは今大会においてよく健闘し、優秀な成績を収めたことをここに賞します。学園長イルゼ=シュミット」


 そうして彼女は俺たち2人に賞状を手渡す。

だが俺は持つことができないので、後で渡すといってイルゼが回収してくれた。

そして横に控えていたメリルが俺たち2人の首にメダルをかける。


 再び会場内が大きな拍手に包まれる。

その中には「女王万歳!」「ルフレイ万歳!」「うらやましいぞコノヤロー!」のような声も混ざっていた。

だがその中、数人ががこんな声をあげる。


「ルフレイ司令官万歳!」

「ルフレイ皇帝陛下万歳!」


 俺のことを皇帝だと知っているのはごく少数だ。

だから誰かと思うと忘れていたが観客席に座っている比叡乗組員たちであった。

その声を聴いて観客席の全員がざわつき始める。


「さぁ、今大会の英雄であるルフレイがまさかの皇帝であることが発覚するというイレギュラーがありましたが、これにて学園対抗戦を終了いたします。来年にもこうご期待!」


 こうして対抗戦は終了した。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?