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第42話 学園内対抗戦・準決勝

 学園内対抗戦2日目。

今日は準決勝と決勝戦が同時に行われる。

俺たちは昨日と同じく会場入りしたのだが、1つ昨日とは違う点が生じていた。

観客席を見ると、そこにはたくさんの水兵服を着た比叡の乗組員がいた。

どうしてこうなったのか、それは対抗戦開始の前夜までさかのぼる。





――対抗戦前夜、王城内食堂にて――


「そういえばお母様は観戦にくるの?」


 グレースが食事中にマリーに問いかける。

観戦、というのは明日に控えた対抗戦のことだろう。

生徒の保護者達も参加できるようになっているのだな。


「えぇ、私もカールと一緒に観戦に行こうかと思っているわ」


 グレースが女王になってから、段々とカールが家族と接触する機会が増えているようだ。

グレースやマリーも、会えていなかった寂しさへの反動かかなりカールに甘くしすぎている気もするが、カールはうれしそうなので特に指摘することはなかった。


 そういえば櫂野大佐は観戦に来るだろうか。

一緒に話を聞きながら話を聞いていた彼に俺は来るかどうか聞いてみる。


「そうですね、観戦しに行ってもよろしのでしたらぜひ行ってみたいとは思います。それにもしよろしいのでしたら、比叡の乗組員たちにも見せてやりたいと思うのですが」


 それは名案だなと思った。

比叡はずっとフォアフェルシュタットに停泊し続けており、偶には乗組員の休養も外に出たいだろう。

対抗戦をその場にできればよいな。

俺はその案に賛成し、櫂野大佐は乗組員を迎えにフォアフェルシュタットに出向いた。





 その結果が今の光景である。

100人近い水兵が参加しており、席でワイワイ話し合っている。

彼らは楽しそうなので何よりだ。

その他にも多くの生徒、その保護者が会場に集まっており、会場は昨日よりも活気に満ち溢れていた。


「さぁ昨日に続いて盛り上がっていきましょう! 学園内対抗戦、2日目の開幕だぁ!」


 ナレーションの声に会場が盛り上がる。

今日は昨日よりもすごい熱気だ。

そんな熱気の中、準決勝と決勝が行われる。


「本日は準決勝と決勝が同時に行われます! はたして今年の学園最強の座はどのペアが勝ち取るのか!? 決して見逃すなぁー!」


 準決勝は1戦目Aチーム予選突破ペア対Bチーム予選突破ペア、2戦目はCチーム予選突破ペア対Dチーム予選突破ペアで行われる。

その準化粧の勝者同士が決勝にて戦うトーナメント制だ。


 マクシミリアン=ロイドペアと戦うには準決勝に必ず勝利しなければいけない。

この準決勝も絶対に負けられない戦いだ。


 準決勝の相手のBチームは宰相の孫のマティアスと、もう1人のSクラスの生徒。

その生徒と話したことはないが、ここまで上がってきているということは相当優秀なのだろう。

準決勝の出場者の紹介が行われる。


「まずはAチーム突破者の紹介だぁー! まずは誰もが知っている我が王国の女王、グレース=デ=ルクスタントぉー! 彼女から放たれる正確無比な魔法に対抗することは出来るのか?」


 グレースの紹介に、もう一度歓声が上がる。

続いては俺が紹介される。


「彼女の相方となったのはルフレイ=フォン=チェスター! 最近編入されてきた謎多き生徒で、編入試験では全教科満点を取ったといううわさも!? 彼の張る防御魔法を破ることは出来るのかー!?」


 俺の紹介にはあまり歓声は起きなかった。

比叡の乗組員たちが拍手してくれているのだけが救いだな。


「続いてはBチームを制したペアの紹介だぁ! 宰相の孫と軍務卿の孫という異色の組み合わせ、マティアス=ライヒハルトとヴェルナー=コンラートのペアだー! その連携力は今出場者の中でも随一! 彼らの攻撃がグレース=ルフレイペアへと降り注ぐー!」


 まさかマティアスの相方が軍務卿の孫だったとは。

それぞれの紹介が終わり、俺たちはお互い向き合う。

そして、試合の開始を告げる鐘がなった。


 俺がすぐに防御魔法を張ろうとすると、彼らからいきなり俺たちに2発の魔法が放たれた。

あまりの速さに防御魔法の全周展開は間に合わず、俺は急いで自分とグレースの前に多層の防御魔法を展開する。

そうして奇襲攻撃を防いだ俺は、全周防御を完成させた。


「あーあ、奇襲は失敗したか。仕方がない、作戦2に移行するよ」

「おう、しっかり合わせろよ」


 2人はすぐに体制を整え、俺たちに再び攻撃をしようするとする。

だが俺たちも黙っているわけがなく、グレースはファイアーボールを連射する。

そのまま当たると思ったファイアーボールだったが、すんでのところで彼らの防御魔法に阻まれる。

その後も何発も発射するが、すべて防がれてしまった。


「ふふ、どんな攻撃も防いでしまえばいいんだよ」

「よし、俺たちも攻撃に移るよ、ウィンドスラッシュ!」


 そういうと、彼らは俺に向かって魔法を放ってきた。

俺の防御魔法の前にはどんな攻撃も通じないが、それでも彼らはずっと撃ち続ける。


 だが、不可思議なことが1つあった。

それは攻撃を仕掛けてくるグレースではなく何もしない俺ばかりを狙って攻撃をしてくることだ。

グレースの魔法はすべて防がれ、埒が明かない状況になってきた。


「うーん、どうも埒が明かないなぁ。俺が攻撃に参加できればどうにかなるのだがなぁ」


 だが俺が攻撃に参加しようとなるとグレースの攻撃が難しくなる。

グレースも頑張って攻撃をしてくれているが、すべて防がれている状況だ。

そう思っていると、グレースが攻撃の手を止め、俺に話しかける。


「仕方がないわ。私のことはいいから、防御魔法を解除して2人での攻撃に移りましょう」


「分かった。俺はマティアスの方を攻撃するから、グレースはヴェルナーを攻撃してくれ」


 そういって、俺は全周防御を解除する。

その様子を見たマティアスたちは行動パターンを変え、俺たちそれぞれに攻撃を仕掛けてくる。

俺は向かってきたマティアスに対抗するため、防御魔法を槍状に変化させ、そのままマティアスへと突撃していく。


 彼は突撃してきた俺を迎え撃つために防御魔法を展開。

だがその防御魔法を槍は突破し、そのままマティアスに命中する。

そのまま彼は倒れこみ、俺の勝利となった。


 マティアスを倒した後、俺はグレースたちの方を向く。

彼女らは激しく戦っているが、お互いの防御魔法に阻まれ攻撃がうまく通っていないようだ。

俺は手に持っていた槍をヴェルナーに向けて投げつけた。


 槍の接近に気づいたヴェルナーは防御魔法を展開するが、槍は防御魔法を貫通してヴェルナーに突き刺さる。

そのまま彼は倒れ伏し、俺たちの勝利となった。


「グレース=ルフレイペア、マティアス=ヴェルナーペアを下し勝利! まことに白熱した戦いでした!」


 俺たちは準決勝を制し、決勝への切符を手に入れた。

これでマクシミリアン=ロイドペアに勝利するための最低条件は整った。


 その後、第2試合ではマクシミリアン=ロイドペアが勝利した。

これにより、決勝の相手が確定する。

ここで負けてくれれば不戦勝となったが、どうやらそうはいかないようだ。

必ず優勝してやるぞ!


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