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第37話 新たなスキル

 今日もいつも通りオリビアに起こされて1日が始まる。

オリビアに起こされた後、いつもとは違い俺は制服ではなく軍服を身につける。

今日は教会に行って俺の汎用スキルを確認しに行くからだ。


 食堂に行くと、鶏肉がゴロゴロ入ったクリームシチューが運ばれてきた。

これは昨日のコカトリス肉であろうか。

早速食べて味を確認しよう。


 肉とともにクリームシチューを口に入れた途端、口の中に言葉に表せない旨味が広がる。

コカトリス肉から余るほどあふれる旨味が口の中を侵食する。

どうして今まで食べようとせず燃やしてきたのかが謎なぐらいだ。


「まぁ、こんな美味しい鳥の肉は食べたことがないわ。これは何の肉かしら?」


 良かった。グレースの口にもあったようだ。

よほど美味しかったのか、給仕のメイドに何の食材なのかを聞いている。

だが城の人間には1人も何の肉かは伝えていないので分かるはずがない。


「ええと、ルフレイ様が持ち込まれたものなので私にはちょっと分かりかねます。ですが料理長が見たことがないぐらいに上質な肉だと言っていました」


 給仕の人間が答えられないとなると、当然質問は俺に回ってくる。

グレースは俺になにの肉かと聞いてきたので、俺は正直に答える。

コカトリスの肉だなんて聞いたらどう思うのだろうか……

「なんてものを食べさせたのよ!」って怒られるかなぁ。


「それは島によく湧くコカトリスの肉だよ。口にあったなら良かったけれど」


「コカトリス、コカトリスねぇ。それは文献にしか乗っていない幻の魔物だけれど、まぁそう呼んでいるだけよね。どちらにせよ美味しかったわ。ありがとうね」


 コカトリスは実在する魔物だがまぁ良いや。

【鑑定】で見たから間違いはないはずだ。

こちらの大陸には生息していないだけであろう。

そうこうしているうちに、皿の上のクリームシチューは空になっていた。


 さて、朝ご飯も食べ終わったことだし、そろそろ教会に向かおう。

俺は一体どんな汎用スキルをもらうことが出来るのだろうか。

グレースも支度が終わり、俺達は馬車に乗り込んだ。





 馬車に揺られながら教会に向かう最中、俺は城下町の光景に釘付けになっていた。

こっちに来る馬車の中では眠っていてよく見ておらず、また王城から学園までの道のりもあまりこういう生活感のある場所ではなかった。

まるで絵本の中から飛び出してきたような町並みがそこにはあった。


 しばらく町並みに見とれていると、急に開けた広場に出た。

馬車が止まったので、どうやら教会についたようだ。

馬車から降りると、まさに大聖堂と言える建物が視界に入ってくる。

俺はその神聖さに圧倒された。


「どうよ。これがルクスタント王国の誇るヘリゲンホーフ大聖堂よ。ささ、早速中に入りましょう」


 もう少し外装を楽しみたかったが、後でまた見るとしよう。

俺はグレースに連れられて中に入る。

内部も外装と同じく豪華絢爛な作りで、またもや目を奪われた。


 列柱廊を突き進むと、大きなステンドグラスの付いた祭壇が見えてきた。

その下には、島で見たイズンの像を始め、様々な像が安置されている。

俺達が祭壇に近づくと、何処からともなく法衣に身を包んだおじいさんがやってきた。


「おや、グレース王女様、いまは女王陛下にございますか。おひさしぶりにございます。本日は礼拝に来られたのでしょうか」


「いえ司教様、今日はこちらの人の博愛の儀を行いに来たのです」


 博愛の儀、それが汎用スキルを習得するために必要な儀式か。

俺も司教さんに挨拶をしておこうか。


「初めまして司教様。私はルフレイ=フォン=チェスターと申します。以後よろしくお願いいたします」


「こちらこそよろしくお願いいたします。その年で博愛の儀を行うのは稀ですが、その祈りはきっと天上の神様に届くでしょう。ささ、こちらに座って祈りの姿勢を取って下さい。儀式が完了すれば頭の中に使えるようになったスキルの名前が浮かぶはずです」


 言われた通り、俺は祭壇の前にひざまずいて祈りの姿勢を取る。

祭壇のほうをちらっと見ると、イズンの像と目があった気がした。

俺は気にせずにゆっくり目を閉じる。

すると突如視界が虹色の光に包まれた。





 目を開けると、そこは前に来た神界であった。

俺の前にはあのときと同じくイズンが立っている。

俺が死んだということは無さそうだが、どうして今ここにいるのだろうか。


「ひさしぶりねルフレイ。あっちの世界では上手くやれているようじゃない」


 イズンは前と同じく俺に優しく語りかけてくる。


「お久しぶりです。今日は博愛の儀とやらを受けに来たはずですが、どうして俺は今ここにいるのでしょうか?」


「それは私が呼んだからに決まっているじゃない。あなた、固有スキルを3つも持っているのにそのうえでさらに汎用スキルもほしいというわけ? それは少しばかり欲張りじゃないかしら」


 え、汎用スキルはもらえないの?

せっかく魔力回路を形成したんだから何かは欲しかったな。

でも固有スキルを3つ持っている身で贅沢は言えないか。


「でも、そんなに欲しいなら1つだけならあげてもいいわよ。でも何をあげるかは秘密。元の世界に戻ってから確認しなさい」


 イズンの手から金色の光が溢れ、その光が俺の方にふわふわと漂ってくる。

やがてその光は俺に触れ、そして体内に取り込まれた。

これが俺がもらった汎用スキルか。何がもらえたのか楽しみだな。


「そういえばあなた、一国の主になったのね。私から餞別として国旗と国章を授けましょう」


 彼女は手の中で何かを作り出す。

作り終わった彼女のその手の中には1つの旗と紙があった。


「これが国旗よ。頑張って考えたんだからちゃんと使いなさいよ。で、こっちは国章ね。2つとも私を意味する羽の紋章を入れておいたわ」


 俺はイズンからそれらを受け取り、眺める。

かつて俺にわけのわからない名前を与えようとしていた彼女は何処に行ったのだろうか。

なんとも見事なデザインの旗がそこにはあった。

だが国旗のデザインは何処かで見たことがあるような……まぁいっか。


「じゃあそろそろ帰りなさい。あ、そうそう。あっちでは1時間ほど立っているから注意ね」


 俺の視界が真っ白になっていき、俺の意識は現実世界に引き戻された。





 目を開けると、祭壇が目に入ってくる。

どうやら上手く戻ってこれたようだな。俺は周りを確かめる。

1時間も立っていると言っていたからグレース達は何処かに行っているかもな。

……と思っていたが、予想外にも彼女は俺の後ろにまだいた。


「良かった、ようやく目を覚ましたのね。あなた1時間も祈り続けていたのよ」


「それもそうですが、やはりあの光は何だったのでしょうか。ルフレイさんが祈り始めると同時に女神像から虹色の光が放たれ、場が浄化されたようでした」


 そんな事があったのか。

確かに神界まで意識を飛ばされていたのだからそれぐらいのことが起こっていてもおかしくはないか。

それよりももらえたであろう汎用スキルが気になる。

早速確認してみるとしよう。


「ステータス、オープン!」


 ○基本情報 

 ・名前:ルフレイ=フォン=チェスター [神名]

 ・年齢:15歳

 ・性別:男


 ○基本ステータス

 ・MP:770892/∞

 ・装備:SSR 異世界の軍帽

     SSR 異世界の軍服[上]

     SSR 異世界の軍服[下]

     SSR 異世界の肌着

     SSR 異世界のパンツ

     SSR 異世界の靴下

     SSR 異世界の軍靴

     SSR 異世界の短剣


 ○固有スキル 

 ・UR 【統帥】

 ・SSR【世界地図】

 ・SSR【言語適応】

 ・SSR【鑑定】


 ○汎用スキル

 ・防御魔法


 ○称号

 ・【転生者】

 ・【女神イズンの使徒】

 ・【異世界司令官】

 ・【大元帥】

 ・【イレーネ帝国皇帝】


 おぉ、汎用スキルに防御魔法が追加されている。

攻撃スキルではないが防御ができるようになるのも強いな。

スキルを1個でもくれたことをイズンに感謝だ。


「どうやらルフレイは防御魔法を授かったようね。他の情報はほとんど確認できないけれど、とにかくこれで博愛の儀は終了よ」


 儀式を無事終了した俺達は、司教さんに挨拶をした後、王城へ帰るべく馬車に乗った。


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