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第33話 魔道具って面白い

 魔力回路の形成が必要という重要なことを知って、1時間目の授業は終了した。

休み時間になると、俺の周りに続々と人が集まってくる。

集まった面々は俺に質問を投げかけ始める。

全員が俺に一斉に話しかけてきたため、なんと言っているのかはあまり分からなかった。

俺が対応に困っていると、グレースが助け舟を出してくれた。


「こら。そんなに一斉に話しかけられてもルフレイが捌ききれず困るでしょう。質問があるなら1人づつ順番に並びなさい」


 グレースの一言に彼らは黙る。

そしてきっちりと俺の前に列を作り、順番に質問をしていくことになった。

何だかファンイベみたいだが仕方がないだろう。


 その後、チャイムが鳴るまで俺はずっと質問を返し続けた。

ほとんどはどうやって満点を取ったかという内容の質問であったが、中にはグレースとどこまで進んだのかと聞いてくるやつも居た。

呆れながらも何も無いと答えると、少しうれしそうな顔で帰っていく。


 そうして休み時間が終わり、授業に入った。

この後は授業と休憩が数回続き、気づけば昼ご飯の時間になっていた。

俺とグレースは一緒に食堂に行こうとしたが、思わぬ邪魔が入る。


「グレース女王様。本日も変わらずお美しいようで」

「この後我々と一緒にお昼ご飯でもいかがで?」


 突如現れた2人の美青年。

制服は改造されているのか、肩に金色のよく見るフサフサが付いている。

俺のことは眼中にないようにグレースに話しかける。

だがグレースもグレースで、興味は無さそうに返す。


「御機嫌よう。今日はルフレイと一緒に食べるので遠慮しておくわ」


 そう言い残し、スタスタと去っていく。

俺はよく分からず動けないでいたが、すぐにグレースの跡を追いかけた。

はたしてあの2人を放っておいて良いのだろうか。


「あの2人、いっつもあんな感じに絡んでくるのよ。今回はそんなに面倒ではなかったけれど、ひどい時には求婚なんてしてくるからね。他国の王子か知らないけれど、いちいち絡んでこないでほしいわ」


 求婚、それはたしかに面倒そうだな。

俺はそんなことを一度も受けたことがないのでわからないがな。

しつこい男は嫌われる。それはどの世界でも共通なのだろう。


 食堂は昨日と同じく列ができていた。

本日のおすすめメニューはママトのパスタか。

昨日は味が良く分からなかったが、今日のメニューはなかなか美味しそうだな。

どんな味なのか楽しみだ。


 一方で、グレースは少しむずかしい顔をしていた。


「あちゃー。今日はママトのパスタかぁ。私ママト嫌いなのよねぇー」


 おそらくママトは地球で言うトマトだろう。

俺はピザやパスタと言ったトマトが使われた料理が好きだったので問題ないと思うが、トマトが嫌いな人も勿論存在するものな。

結局グレースはオークカレーにするらしい。


 ママトは、予想通りトマトであった。

この世界のパスタも地球と同じぐらい美味しく大満足だ。

グレースはオークカレーをぺろっと完食していた。

口元にルーが付きっぱなしだったので取ってあげると、少し顔を赤らめる。

流石にこれはまずかったかな?


 腹も満たし、満足して外を2人でぶらぶら歩いていると少し気になることを思い出した。

先程の2人の青年のことだ。

グレースの言うことを聞く限り彼らは王子らしいが、王国史では王国の歴史しか勉強せず、ルクスタント王国以外の国のことはよく知らなかったので少し知っておきたいと思っていたのだ。


「なぁグレース、さっきの王子?の2人って一体誰なの?」


「あぁ、あの2人ね。1人がマクシミリアン=ヴェルテンブラント。ヴェルテンブラント第二王国、いわゆる第二王国の第四王子よ。もう1人がロイド=ゼーブリック、ゼーブリック王国の第三王子ね」


 ヴェルテンブラントにゼーブリック、中々に覚えにくい名前だ。

他国の王子ということは、俺と同じように留学しているのだな。

それに王子という立場上、他国の女王に求婚を行うのもあながち変な行動ではないのかもしれないな。

でも相手が嫌がっているのならやめたほうが良いと思うが。


「あんな男たちのことは気にしなくてもいいの。ほら、教室に戻るわよ」


 俺はグレースの後に続いて教室に戻る。





 5、6時間目の授業は魔法科と剣術科に分かれて授業を行う。

だいたいクラスの半分ほどが剣術科に、残りの半分が魔法科を選択している。

俺は魔法科選択なので、今からの授業は実践魔法だ。

魔法理論は両科とも習うが、魔法科だけの授業は更に細かいところまでやるらしいので楽しみだ。


 授業開始の鐘がなり、メリルが教壇に立つ。

彼女が魔法系の科目は一括して授業を行うようだ。

授業が始まると、生徒たちの前に不思議な機械が置かれる。

ボタンが付いた黒い箱のようで、上部には穴が空いている。


「皆さん一度は絶対に見たことがあると思いますが、これは魔石を用いたバーナー、いわゆる魔道具です。ボタンを押すと炎が吹き出すのでやめてくださいね。今日は皆さんにこれを分解、再組み立てしてもらいます」


 机の上にこの機械と一緒に工具が置かれていたのはそのためか。

それにこの機械は魔道具というのだな。魔石を用いると言っていたが、島で魔物の死体を燃やしたときに見つかった魔石をエネルギー源としているのだな。

そうだとしたら石油なんかを掘って燃やさないでも、簡単にエネルギーが回収できるな。


 とりあえず、置いてあったドライバーのようなもので側面のネジを外す。

案外簡単にネジは外れ、内部の構造があらわになる。

内部構造とはいってもボタンから線が伸びて真ん中に配置されている魔石につながっているだけであり、大して複雑というわけではなかった。


 俺はピンセットを使ってボタンと魔石の間にある線、教科書によると銀が魔力を通しやすいらしいのでおそらく銀線を丁寧に外していく。

魔道具の分解はすぐに終わった。


 これからは再組み立てだが、先程の分解の過程を逆の手順で進んでいくだけなので楽勝だ。

魔石とボタンの間を銀線で繋ぎ、魔石を中央にセットする。

側面をネジで締めるとあっという間に組み立て完了だ。


 試しにボタンを押してみるが、反応はなかった。

まだ魔力回路が形成されていないせいであろうか。

とりあえず隣で悪戦苦闘しているグレースにボタンを押してもらうと、ちゃんと炎が上がった。

組み立ても成功したようだ。


 今回の授業で、俺は2つのことを学んだ。

1つ目は魔道具の可能性。

現代技術と魔石の技術を合わせた新魔道具を作り上げることが出来るかもしれないこと。

2つ目は魔力回路の重要性

これが形成されていないとまともに魔法が使えないから不便だ。

魔力回路は早急に形成できるよう努力しよう。


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