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page.143

詩織が僕を、柔らかな微笑みで手招きして呼んだ。



『ねぇねぇ金魚ぉ、ここに座って♪』



そして、自分の座るソファーの左隣をぽんぽんと叩く。

なんか…詩織が僕を手招きして呼ぶなんて珍しい。いつもなら黙々と、自分一人でじっと観てるのに。春華さんじゃあるまいし…。



『…んで?今日は何観てるの?詩織…あの…何これ…?』


『うん。《パレット》観てるの。金魚の動画upされてるよ…ほら』



意識してさけて避けてたのに…遂に、詩織の誘いによって観せられてしまった…。




【…やべぇw本物の金魚が尾ひれを左右に揺らしながら泳いでるみたいに…この池川嬢金魚のちょこちょこフリフリお尻…これマジやべーw可愛ぇぇww】




『…。』



うーわー…観ててげっそり…本気で引いた…。

金魚と詩織の歩く後ろ姿…そこから、僕のお尻に集中し、クローズアップする動画…超キモっ!!



『この動画upしたの…どんな中高生男子なのか、大学生なのかは知らないんだけどぉ…ほんっと、お年頃の男子ってエッチで嫌だよ…ねー♪金魚♪きゃはははは』


『………。』



…男が女装した男のお尻を見ながら萌えてるとか…めっちゃくちゃキモ過ぎる…。

てゆうか、頭おかしいだろ。この動画up主…。

本当に男って生き物は…なんで、こんなに恥ずかしいぐらい馬鹿なんだろう…あぁ。


突然、美容院の玄関扉が勢いよく開いた。



『おぉ、まだ居た。間に合ったぜ…』


『あー!秋良くん、おはよー』



詩織と秋良さんが軽く挨拶を交わす。



『秋良さん、今日はどうしたんですか?』



秋良さんは、大小2つの白い紙製の箱を両腕で抱えていた。



『事務所の倉庫整理をしてたら、こんなのが出てきたからさ…』



詩織がノートパソコンを閉じて、ソファーの空いてるとこ…自分の右隣…に置いた。

ノートパソコンと代わって秋良さんがテーブルに、持ってきた2つの箱を置く。



『秋良くん…何これ?』


『俺がまだ衣装デザイナーの駆け出しだった頃にな、啓介と作った《白鳥の羽毛のシルクハット》なんだけど』



…白鳥の羽毛のシルクハット?



『ねぇ!開けてみていい!?』



詩織が瞳をキラキラさせながら、秋良さんにそう訊いた。



『あぁ。見てみろよ』



詩織が、まず大きな箱の蓋を取った。そして両手を差し込んで…優しく丁寧に箱から取り出す。



『わぁ…何これ!凄ーい!』



本当だ…凄い!



出てきたシルクハット…紳士帽の全体が、白くて柔らかくて小さな羽毛に包まれている。



『それはな…俺と啓介が、初めて取引先の衣装メーカーに持ち込んだ商品サンプルの、第1号のなかの一つなんだ』










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