僕らは瀬ヶ池の店舗を廻り、『なんかお洒落なチョコないかなー?』なんて探したけど…適当な好みのチョコは見つからなかった。
『なんか良さそうなチョコ、見付からなかったね。どうしよう…金魚』
『…そういえば今週って…たしか、アンプリエでバレンタインチョコのスペシャルプライスセール、やってたんじゃなかった?』
『えっ?そうなの!?知らなかった…じゃ行こう!』
…前にもこんな感じで、瀬ヶ池からアンプリエまで歩いたことあったっけ。
徒歩でだいたい30分くらい。歩くのが大好きな詩織と僕は、これぐらいの距離だったら、なんの苦にも思わない。
『ねぇ!あれ…金魚ちゃんと詩織ちゃんじゃない!?』
『本当だぁ!…えっ、見てあれ!なにあの羽根いっぱいの帽子…それもペアルック!?凄い!可愛いー!!…』
僕はそれに気付いて、ニコリと笑って彼女たちに手を振ってあげた。きゃーっと大はしゃぎで、手を振りかえしてくれた女の子たち。
『あらぁ…?金魚もやれるようになったじゃない。きゃははは♪』
『…あ、あはは…』
詩織はいつでも、歩くことと人に見られることが、本当に楽しそう。
僕らのことを知ってて、すれ違いざまに僕らを振り返る女の子たちは、いつも結構見るけど…後を追ってまで付いてくるような子は今まで…いや、これからも多分いない。
今からバレンタインのチョコを買いに向かうのは【
僕らは嘉久見大通りの、あのもの凄く長い長い横断歩道の見えるところまで来た。
『あっ、急がなきゃ!走って!金魚!!』
そして詩織と僕は、歩行者用信号の青シグナルが点滅し、カウントダウンが10秒を切ったのを見て、慌てて駆け出した……!!
『はぁはぁ。あー…んもぅ。間に合わなかったぁ…』
息を切らせながら、そう小声で言う詩織。
ここの横断歩道の信号機は、一旦変わると見た目と同じく《待たせられ時間》もまた長い。
『はぁ…でも…《私のスマホで良ければ来週、鈴ちゃんと直接お話できるかもしれないわよ》って、岡ちゃん言ってたよね!』
『うん』
『来週かぁ…凄く楽しみ♪…はぁ。なんか、テンション上がっちゃうね!…はぁ…はぁ』
息を切らしながらも…詩織は凄くご機嫌そう。
『あ、そうそう。私からの信吾へのチョコ、好きなの選んでいいからね』
『ほんと!?あ…ありがとう』
詩織は本当に機嫌良さそうに、そう言ってくれた。
「…うん。だよねー…」
「はぁ?真依、あんたマジで何人の男の子と同時進行…ってゆうか付き合ってんのよ!?…みたいな。ねー」
「うんうん」
…信号待ちをする僕らのすぐ後ろに、ペアらしき女の子2人が来て立ったのを、僕はふと感じた。
詩織だって、それが気になった様子。
「ねぇ泉美、見てこの帽子!超可愛くない!?」
「あー可愛い。白い羽根でいっぱい覆われてるシルクハット?凄ーい。私初めて見たー」
「しかもお揃いだよ!隣の子と」
「あー。ほんとだね。お洒落だね」
……ん?
今、僕の帽子をツンツンと指で…触られた!?
僕は振り返っ…の前に、僕の真後ろの女の子を、じっと睨み付けるように見てる、詩織の顔が目に止まった。
えぇと…改めて僕は振り返る。
『あなた…今この子の帽子を触っ…』
『あっ!…あの…ごめんなさ……えっ!?』
僕より少し背の高いその女の子は、詩織に指摘され謝ろうとして、僕の顔を見るなり…目を円くして固まった。
『ちょ…泉美!ヤバいよ!この子、最近話題の金魚って子だよ!』
『あ…ああぁ…』