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page.151

扉が開くと中は真っ暗…なんとも言えない、いい甘い香りがふわっと漂った。これ…何の香り…?



『えぇと…玄関のスイッチは…と』



ぱっと玄関が明るくなる。下駄箱の上には、クレーンゲームの景品の縫いぐるみがいっぱい。

あー。あの《ウマを美少女にしたゲームのあれ》だ。

それらがご主人さまを待ってたかのように、綺麗に並べられている。



『あ、悪いんだけど玄関の扉、閉めてくれる?』


『あ…はい。うわわわ!』



軽く閉めたつもりだったのに、鉄の玄関扉は勢いよく《バタンッ!!》と、もの凄い音を立てて閉まった。


靴を脱ぎ、廊下の電気は点けず、忠彦くんはどんどんと奥へと進む。

ドアの開けっ放しだった奥の部屋…ガチガチッと音がして、暗い部屋が明るくなった。



『信吾くん、こっちに来てよ』


『あ、うん』



…久しぶりにドキドキしながら、僕もおくへと進む…。彼は本当に何者なんだろう。忠彦くんは『俺ん家に来たら一目で全てが理解できるよ』って言ってたけど…。


ゆっくりトントンと、つま先歩きでテンポ良く、周りを気にしながら廊下を進む…あの明るい部屋に入ったら…鬼が出るか蛇が出るか…。





『…えぇぇっ!?…なにこの部屋!?』



僕はその部屋の入り口のところまで来て…一目見て何もかもが理解できた…どころか、余計にどういうことなのか解らなくなった…。


12畳だろう広さの部屋…目の前の奥の壁には手作りらしき三面鏡が置いてあり、それの左右の鏡の縁には、お手製で照明が取り付けられている。


部屋に入って後ろを振り向くと…そこにはテーブルがひとつ。国内海外問わず、様々なメーカーの香水のガラス小瓶がびっしりと、無造作に置かれている。

まだ香水液が残っている小瓶もあれば、もう空になっている小瓶もある。


さっき漂ってた甘い香り…たぶん、これだったんだろう。


テーブルの横には本棚。たくさんのコスメ情報誌や化粧テクニックの解説書などが、きちんと整頓されて並んでいる。



『…凄い』


『三面鏡の左横に置いてある洋服小タンスの中…見てみる?』


『えっ?…うん』



引き出し3段の小タンス。ゆっくりと…まずは一番上の引き出しを引っ張り開けて、中を覗いてみる…。次にその下…最後に一番下…。


どの引き出しにも、入ってたのは洋服じゃない。全てが揃った、たくさんの化粧道具だ。



『…この部屋は…?』


『そうだよ。俺の手作りのメイクルーム』


『…手作りのメイクルーム!?』



忠彦くんは、自信と自慢気に満ちた表情で頷いた。



『あっちにも小さな和室があるんだけど、あっちは洋服クローゼット兼ベッドルームとして使ってる』



『忠彦くんも…女装するの?』


『女装とだけは…絶対言われたくない…!』


『!!?』



彼ははっきりと、即答して返した。












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