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page.152

僕はもう我慢できなくなって、遂に正直に訊いてしまった。



『僕…色々見たけど、ほんと何も解らないんだ…ごめん。説明してくれないかな…』



忠彦くんは笑って頷いた。



『俺は、女装家じゃなくて…本物の女性になりたいって、本気で思ってる男の一人なんだ…』


『…えっ!?』



彼は三面鏡の前の小さな椅子に座った。



『…つい去年まで、都内の《男の娘》のお店でバイトしてた。今は…こっちに引っ越してきて、本物の女の子たちに混ざって週に3日、夜働いてる』



《夜の接客業》以外にもお昼は普通に男性として週に2日、ここから少し離れた街にあるコンビニで、お昼にバイトしてるんだとか。


夜のほうのお店では…忠彦くんは《18歳以上です》と、年齢を誤魔化して働いてるという。



『…けど、お店に側も本当は18歳未満だって、感づいてるだろうと思うんだ…』


『…。』



彼は本物の男だけど、普通に女の子の姿となって働いてる。

僕だって女装はしてるけど…彼とは目的も、たぶんきっかけも…何もかも全てが違う…。



『俺には夢があるんだ。お金をいっぱい貯めて、タイで本物の、綺麗な女の子になりたい…!』


『!!』



僕は忠彦くんが、僕より歳下だとは信じられなくなってきた…。

だってさ、もう働いてるし…普通 《女性に性転換したい》なんてことをさぁ、17歳の男子がだよ?さらりと言っ…こんなもんなの?近頃の17歳って…?



『もしかして忠彦くん…あの《男子として生まれてきたけど、実は男子が好き》とかって言…』


『はぁ?何言ってんの?信吾くん。全然違うよ』



えっ?違う?って…じゃあどういうこと!?…また即答で返ってきたけど…。



『俺は…《俺の女の顔》…緋子が大好きなんだ』


『んー……ん?』



僕のはっきりしない反応に、少しがっかり顔を見せる忠彦くん。



『じゃあ…分かった。俺の女顔見せるよ。そのほうが話が早いから』


『で…できるの!?忠彦くん…メイク!?』



忠彦くんは僕を見た…更に冷めた目で…。

手作り三面鏡…メイク解説書…たくさんの化粧道具…これだけ揃ってんのに、忠彦くんがメイクできないわけ…なのに、僕ときたら…。



『信吾くんだって女装してんのに…まさかね…自分ではメイクできないとか…言わないよねぇ…?』



『ぇ…えぇぇ…!』



ガーン。







…彼は三面鏡の台の上に必要な化粧品道具を並べ、丁寧に丁寧にメイクをしながら、僕に語り掛けてきた。



『俺が…《緋子》が好きだと目覚めたのは小6の夏。11歳歳上の従姉弟の姉ちゃんと、家ん中で走り回って、ふざけて追いかけっこしてて…油断した俺が捕まって…姉ちゃんが罰ゲームだよって、俺に女のメイクしてきたのがきっかけで…』



…そうなんだ。



『…初めて鏡で自分の女顔を見たとき…俺は全身が震えたよ。スゲー綺麗ぇ!!…って』



…んー…んん?

ちょっ、今の話…僕が初めてアンナさんにメイクして貰って、僕がその女装メイクした顔を見た、あのときのエピソードに似てない…?








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