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page.159

アンナさんに『ショートカットは駄目よ』と言われた詩織。



『まぁ…仕方ないよ。だって詩織はヘアスタイルの専属モデルなんだから…』



詩織は僕のなぐさめの言葉に笑顔で応えてはくれたんだけど…ちょっと表情が悲し気。



『あ…そうそう。金魚…初詣のときの中学生の子たち、覚えてる?』



詩織が明るく気分を取り直して、改めて僕に訊いてきた。



『うん。もちろん覚えてるけど…なに?』


『ちょっと。なに?って…あの約束のこと覚えてないの?』


『約束?…あっ!写真のこと!?』


『そう!ようやく約束どおり《カラフル》に載せてくれたの!見て!』



詩織は急いでノートパソコンに映っているサイト《カラフル》のページ…《◆瀬ヶ池の金魚◆の情報書き込みトピっくー!》をダブルクリックして見せてくれた。




【《私は栗山町に住む中学3年生です。この写真は1月1日に、緑川市の岸鉾神社というところで、一緒に撮らせてもらった写真です…》】




そう。僕らと中学生らは、みんなで撮ったあの写真を、LINE交換とかして画像添付という形で写真を貰うんじゃなくて、《カラフル》に投稿する形で僕らに頂戴って約束してたんだ。




【《…本物の金魚ちゃんは、ネットで言われてるように、ほんとに芸能人かアイドルみたいに可愛くて、凄く優しかったです…》】




『…で、写真保存した?』


『うん。したよ。勿論ね』




【《…私は本当に金魚ちゃんが大好きになりました。詩織さんのことも。あと、高校受験のせいで投稿が遅れました。金魚ちゃん、詩織さん。ごめんなさい》】




…ううん。ごめんなさいなんて…投稿が遅れたことなんか全然気にしてないから。写真ありがとう。高校入試、無事に合格してるといいね。


えぇと…あっ!えっ!?どどど、どうしよう…。

あの女の子の名前…なんだったかなぁ…。僕…覚えてない!!忘れてしまった…あぁ。


…僕のほうが…ごめんなさい…。




《コンコンコン♪》



『…おはようございます。おばタクでございます』



あ、岡ちゃんが来た。詩織はノートパソコンを急いでシャットダウンさせて…。



『じゃあ、アンナさん行ってきまーす』


『詩織、金魚。気を付けていってらっしゃいね』


『はーぁい』







《おばタク》の車内…岡本ちゃんも金魚の髪が短くなったことに、すぐに気付いてくれた。



『凄く可愛くてお似合いよ。金魚ちゃん』


『ありがとう。岡ちゃん』


『その耳飾りもね』



…金魚のピアスなんだけど…。









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