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僕を…というか金魚を、どうして《普通の女の子っぽくない》と感じたのか、その根拠を…。


そして《G.F.アワード》の、実の妹である丹波彩乃を見たときの、あの複雑な表情…。


いろんなことを訊きたかったけど、そんな時間はあまり無かった様子。



「鈴ちゃん、そろそろ撮影が始ま…」


「あ、はい。今大事なお友達との電話中なの。終わったらすぐ行きます」



聞こえてきたおばさん声…あ、失礼。あのマネージャーさんの声?



「できるだけ早く来てね。スタッフの皆さん《鈴ちゃん待ち》なんだから」


「はーい」



そして鈴ちゃんの会話は、また僕のほうに戻った。



「ごめんね。金魚ちゃん」


『いえ…こちらこそお忙しいなか、電話をお願いして、ごめんなさい…』


「ううん」



僕は間を置かず、すぐに他愛もないことを訊いてみた。



『あの…今はどこに居るんですか?』


「今日はね、大分県の湯布院ってところよ」



ゆふいん?…あー。なんか聞いたことある!…けど、よくは知らない…ゆふいん。

確か大分県って、別府っていう有名な温泉観光地もあったはず…違うかも。



「私…この旅番組の担当をね、来月の次のロケを最後に降板するの」


『えぇっ!…なんで!?』


「…でね、4月の放送分からは、私の事務所の後輩の《木橋みかな》ちゃんが務めるの」



担当番組の降板が決まっているのに、落ち込んでる様子はあまり感じられない鈴ちゃん。


後を継ぐのが事務所の後輩だからだろうか…。



「…それとね、私は4月から毎週土曜日の、朝9時から11時までなんだけどね、ラジオの藤浦FMの、生放送番組の担当が決まったから…」



藤浦FMって言ったら、最近テレビ局と合併したことでも話題になったし、アンプリエのある藤浦市桜野区…嘉久見大通り沿いに大きな《藤浦FM放送ビル》を構えるラジオ局だ。



『じゃあ、4月からは毎週…?』


「うん。番組終了後に金魚ちゃんと詩織ちゃんと私とで、一緒にランチとかできるかもしれないよね」



ぇ……えぇぇーっ!?


こんなリアルに天使みたいで、超有名な鈴ちゃんと…直接会ってランチなんてできるの!?


えー…ドキドキ。



「…もちろん、マネージャーの山本さんが許してくれたら、なんだけど…」


「鈴ちゃーん!」


「あ、ごめんなさい!」



また、あのマネージャーさんの声だ。



「じゃあ…撮影行ってくるから」


『はい。撮影頑張っ…あ!最後に岡ちゃんに代わります』



そして、岡ちゃんにスマホを返した。








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