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page.165

ナオさんの化粧品店の店内は黒い大理石風を基調に…白い天井は高くて、中央には豪華でお高そうなシャンデリアが吊り下げられている。

壁面も床と似た黒色で、正面奥は天井いっぱいまで壁棚になっていて、棚にはびっしりと化粧品が並べられ、キラキラとライトアップされている。


それに対して店内の配置棚は胸ほどの高さでく、他のお客さまの顔がはっきりと確認できる。


全体的には…外部からの日差しは抑えられていて、逆に店舗内の設計の上で、キラキラと眩しい大型シャンデリアや関節間接照明で、店内のムードアップやお洒落感を図っている…って感じ。


そういえば、店内を見渡すと…結構お客さん居るなぁ。



『ごめんね。お待たせ』



紅茶を銀のトレイに乗せ、運んで戻ってきたナオさん。そしてやっと席に落ち着く。



『ねぇ、詩織ちゃんはケーキ、どれ食べる?金魚ちゃんはどれが好き?』







…そしてケーキを3人で頂きながら、ナオさんが本題を話しはじめた…。



『それで、お2人さん…今月の第1土曜日に私のした話、覚えてる?』



もちろん。絶対に忘れられない話だったから、よく覚えてる…。







以下は第1週土曜日の、あの日の回想の話…。


詩織と僕が瀬ヶ池から《おばタク》に送られ、アンナさんの美容院に帰ってきてから約10分後…えっ!?

さっきまで化粧品店ブロッサムにいたナオさんが、まさか…あとから僕らを追い掛けてきたかのように、勢いよく美容院クローシュ・ドレに入ってきた。



『ねぇ!今 《G.F.》冊子編集関係者のあいだで話題になっている、丹波彩乃ちゃんの話、アンナも聞いた?』



えっ?…丹波彩乃!?

僕と詩織とアンナさん…3人はその名前を聞いて、びっくりし過ぎてそれぞれの顔を見合った。


その詳細を訊くと…今、丹波彩乃への《専属モデル獲得希望店》の数が37店…もの凄い数になっているらしい。


専属モデル獲得には《藤浦市商業開発広告製作委員会》の《G.F.冊子制作編集部》への届出と、彩乃と編集部局員と獲得希望店舗オーナーとの三者面談を行うことが原則となってる…らしい。


そもそも三者面談云々よりも前に『私はそういうモデルはイヤ』って、彩乃が編集部局員に即刻お断りの申込みをすると、その場で「ではお断りしておきます」…ってなるんらしいんだけど。



『…でね、私も彩乃ちゃんのモデル獲得希望の届出、出してみたんだ』


『えっ…なんで?だって、ナオんとこには《加賀雅美ちゃん》って専属モデルがいるじゃない…?』



そのアンナさんの問いかけに、少し困った顔を見せたナオさんは…。



『雅美ちゃんさぁ、今付き合ってる遠距離の彼に《そろそろ結婚しよう》ってプロポーズされたんだって。だから彼のお嫁さんになって、彼のすぐ傍にいてもう落ち着きたい…って考えてるって…』



…たがら《専属モデルの交代、新しい専属モデル探しの時期》らしい…。



『だけどナオ、彩乃ちゃんの獲得希望オーナーさんが37人もいるんでしょ?獲得は難しいんじゃない…?』



なんとか彩乃の獲得を諦めさせようと、遠回しの言葉でナオさんを揺さぶろうとしているアンナさん。


いくら親友のアンナさんでも『金魚のライバルとなるだろう丹波彩乃のモデル獲得なんて、私は反対よ!』…と、ハッキリと単刀直入には、さすがに言いにくいんだろう…とアンナさんの本意を察して思う。






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