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page.167

ナオさんは両手を腰に当て、細めた疑いの目で、アンナさんを見た。



『ねぇ…何かおかしくない?私と丹波彩乃ちゃんが繋がることで、何かアンナたちに不都合なことでもあるの?…それで、それは私には正直に言えないことなの…?』



アンナさんはふふっと笑った。



『そうね…ナオの言うとおり、それは私たちに不都合なのかもね』



…とは言ったけど、アンナさんはその詳細を語ることはなかった。



『んま、いいわ。別に言いたくないなら。私は今はもう、彩乃ちゃんよりも金魚ちゃんのほうに期待してるから』



ナオさんはそのあと…『ひゃあ!もうこんな時間!?…お得意様んとこに急がなきゃ!!』って…。


…慌てて帰って行かれました…。







『じゃあ…あの日の話の続きをするわね』



詩織も僕も、じっとナオさんに見入った。



『…まず、これは基本的なことだけど《G.F.》デビューを果たすためには《鵜鷹目》って称され呼ばれているスカウト視察特別スタッフに、誘われなきゃダメ…ってのは、もう解ってるわよね』



僕も詩織も、うんうんと頷く。



そういえば…誰かから聞いたんだったかなぁ…視察特別スタッフ《鵜鷹目》に遭遇するには、相当な《運》が必要だとか。


だけど、いかにも《取材スタッフ》らしく、こう…男性が一眼レフのカメラを手に持ってて、怪しいぐらいにキョロキョロしてて、女の子に声を掛けては名刺を差出してる…。


そんな《鵜鷹目》の想像イメージ。

だから実は一目で判る…というか、探し易いのかも?なんて思う…。



『ちなみにね…《鵜鷹目》ってのは、お洒落な女の子2人組だから』



…そんなのに《運》なんてさ、言うほど必要ないん…えっ?お…女の子2人組!?



『しかも毎週毎週、担当するスタッフは違うから。そこが難しいところなのよね

…』



いやいやいやいやいや…。

やっぱり《運》はめちゃくちゃ必要だ!!

だって瀬ヶ池は、右を向いても左を向いても、どっちを向いても女の子だらけだ!その中の誰が《鵜鷹目》なのか…とか、うん!探しにくい!!



『ナオさん、それで《鵜鷹目》って、結局はどういう子たちなの?』



率直な詩織の質問に、ナオさんは静かに頷いて応えた。



『《鵜鷹目》はね、街のどこかで《鵜鷹目》にスカウトされて、《G.F.》デビューして…専属モデルを務めて…専属モデルを卒業した女の子たちの《最後のお務め》なの』



…なるほど。そういうことなんだ…。



『…詩織ちゃんも金魚ちゃんも、アンナが私に「金魚を《G.F.》デビューさせてくれたら、専属モデル獲得を許してあげる」って言ったの、覚えてる?』



…うん。もちろん。

そして、それが一番知りたかったこと。



『だけど誤解しないでね。なにも私が《G.F.》デビューの女の子の、採用決定権を持ってる…なんてわけないから』



…じゃあ《デビューさせてくれたら》の意味の真実は…?



『モデル撮影のスタッフのなかに1人、若い女性がいたのは覚えてる?』


『あー。叶美さんですか?』


『うん、そう。松島叶美』



僕も女性カメラマンがいたのは見て覚えてたけど、名前まで言えるとか…さすが詩織。



『彼女ね…私より2こ歳下の、私の実妹なの』



……妹さん?








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