目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第12話 マケンナの感謝祭 

 翌朝、王都近郊の収穫祭会場は、色とりどりの旗と香ばしい匂いであふれていた。

  その中心で人々を迎えていたのは、異国出身の女性マケンナだった。

  彼女は感謝の気持ちを表すのが得意で、しかも強い自制心を持つ人物だと聞いていた。

  「ようこそ、遠征隊の皆さん」

  マケンナは深々と頭を下げ、笑顔を浮かべた。「今日はあなた方に感謝を伝えるため、特別な宴を用意しました」

  宙は戸惑いながらも、その丁寧さに圧倒された。「俺たち、まだ何もしてないのに……」

  美里が笑った。「マケンナはね、感謝の言葉を先に伝えるの」

  祭りはやがて盛り上がり、歌や踊りが会場を満たした。

  しかし、マケンナは浮かれすぎることなく、常に全体を見回していた。

  「怪我人はいませんか? 食事は足りていますか?」

  その気配りに、宙は思わず感心した。



 宙はマケンナの隣に立ち、周囲の笑顔を眺めながら言った。「みんな、本当に楽しそうだな」

  マケンナは小さくうなずき、「喜びを分かち合うことが、旅の士気を高めるんです」と穏やかに答えた。

  やがて宴の締めくくりとして、マケンナは壇上に立ち、両手を胸に当てて語りかけた。

  「この旅に参加してくださった皆さまに、心から感謝を伝えます。私たちは必ずこの国を守り、未来を切り開いていきましょう」

  その言葉に観客は大きな拍手を送り、場の空気は一体感に包まれた。

  美里がそっと宙にささやいた。「ね、彼女の感謝の力ってすごいでしょ?」

  宙は素直にうなずいた。「ああ……なんだか、俺もやれる気がしてきたよ」

  宴のあと、マケンナは自制を忘れず片付けまで率先して手伝っていた。

  その姿を見た宙は、心の中で小さく誓った。

  ――この仲間たちとなら、どんな困難でも乗り越えられる。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?