翌朝、王都近郊の収穫祭会場は、色とりどりの旗と香ばしい匂いであふれていた。
その中心で人々を迎えていたのは、異国出身の女性マケンナだった。
彼女は感謝の気持ちを表すのが得意で、しかも強い自制心を持つ人物だと聞いていた。
「ようこそ、遠征隊の皆さん」
マケンナは深々と頭を下げ、笑顔を浮かべた。「今日はあなた方に感謝を伝えるため、特別な宴を用意しました」
宙は戸惑いながらも、その丁寧さに圧倒された。「俺たち、まだ何もしてないのに……」
美里が笑った。「マケンナはね、感謝の言葉を先に伝えるの」
祭りはやがて盛り上がり、歌や踊りが会場を満たした。
しかし、マケンナは浮かれすぎることなく、常に全体を見回していた。
「怪我人はいませんか? 食事は足りていますか?」
その気配りに、宙は思わず感心した。
宙はマケンナの隣に立ち、周囲の笑顔を眺めながら言った。「みんな、本当に楽しそうだな」
マケンナは小さくうなずき、「喜びを分かち合うことが、旅の士気を高めるんです」と穏やかに答えた。
やがて宴の締めくくりとして、マケンナは壇上に立ち、両手を胸に当てて語りかけた。
「この旅に参加してくださった皆さまに、心から感謝を伝えます。私たちは必ずこの国を守り、未来を切り開いていきましょう」
その言葉に観客は大きな拍手を送り、場の空気は一体感に包まれた。
美里がそっと宙にささやいた。「ね、彼女の感謝の力ってすごいでしょ?」
宙は素直にうなずいた。「ああ……なんだか、俺もやれる気がしてきたよ」
宴のあと、マケンナは自制を忘れず片付けまで率先して手伝っていた。
その姿を見た宙は、心の中で小さく誓った。
――この仲間たちとなら、どんな困難でも乗り越えられる。