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第6話_静寂の共振

 翌日、調査隊は再び地下遺跡に向かった。

  第一層の奥で記録を取り終えた後、さらに深部への通路を開く作業を進めていた。

  真聖は照明具を腰にかけ、慎重に壁の紋章をなぞる。

  「昨日と同じ鼓動がする。だが今日は……少し強い」

  つむぎは剣を抜き、後方警戒に立つ。

  「何か来そう?」

  「分からない。けど、この鼓動は生き物みたいだ」

  その時、背後で金属音が響いた。

  振り返ると、小型の魔物――甲羅を持つ四足獣が現れた。

  つむぎは即座に踏み込み、鋭い回し蹴りを繰り出した。

  「っらぁ!」

  魔物は壁に叩きつけられ、動きを止める。

  俊介が苦笑した。「相変わらず派手だな」

  侑希が駆け寄り、負傷がないか確認する。「……平気?」

  「もちろん」つむぎは息を整え、礼を尽くした動作で剣を納めた。

  壁画には昨日と同じ環状構造が描かれているが、今日は微弱な光が走っていた。

  「共鳴してる……?」

  真聖がつぶやく。頭の奥に再び声なき鼓動が響いた。

  冷静さを失いかけるが、侑希がそっと声をかける。

  「無理しないで。ここはあなた一人で抱え込む場所じゃない」

  その言葉に真聖は小さく笑みを返した。

  調査は無事終了し、記録を持ち帰ることとなった。

  今日一日で、彼らの心には確かな連帯感が芽生え始めていた。



 王宮へ戻った調査隊は、採取した資料と映像記録をフェリドに提出した。

  老人は目を細め、壁画の写しを見つめる。

  「やはり……この二重輪は、時空を繋ぐものに違いない。だが制御核が不安定だ」

  フェリドは巻物に記録を追加しながら、真聖に視線を向けた。

  「お主、壁に触れた時に何を感じた?」

  真聖は少し躊躇し、やがて口を開く。

  「脳内に鼓動のような音が響いた。……それと、崩壊の光景が一瞬だけ見えた」

  室内の空気が凍りつく。

  侑希が眉を寄せる。「それって……危険じゃない?」

  「たぶんね。でも、恐怖は不思議と薄かった」

  真聖は冷静に答えた。

  リアスは黙考し、やがて立ち上がった。

  「帰還の道を探るためには、輪を安定させるしかない。汝らの協力は今後ますます重要になる」

  その言葉に、全員が静かに頷いた。

  夜、宿舎に戻ったつむぎは窓辺に立っていた。

  「……戦う相手が魔物じゃなくて、装置の暴走なんてね」

  真聖は隣に立ち、淡々と答える。

  「でも俺たちは、もうこの世界の一部になりつつある」

  つむぎは微笑し、軽く肩を叩いた。「じゃあ、明日も全力でいくわよ」

  その夜、仲間たちは疲れを癒やしつつも、不思議な共鳴感を胸に眠りについた。

  ――異世界での絆は、着実に強まり始めていた。



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